ボケているのではない。つっこんでいるんだ。 傾:タイガー道場


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1: 藤村流継承者 (2004/03/17 16:57:16)




 ボケているのではない。つっこんでいるんだ。



(笑点のテーマにのせて)

 ちゃんちゃかちゃかちゃか すっちゃんちゃん ぱふ。

 ちゃーちゃーちゃ ちゃーちゃちゃちゃちゃちゃー

 ちゃちゃちゃちゃちゃーちゃーちゃー……


『今日の前座は飛び入り参加のメイドさん、セラさんとリーズリットさ

んがお送りします』


 わあぁぁぁ……どっ(わりとうけてる)


『さて、ここで真打ち登場! 黄色い着物を身にまとい、右に左に茶化

されて、しまいにゃ客にも負かされる、我らが藤村……!?』

タイガ「……誰が喜○蔵だ!?」

イリヤ「いや誰もそんなこと言ってないし」

タイガ「ラーメンまずいって言うなよう……」

イリヤ「だからね? ……ちなみに美味しいんだよ? みんなウケ狙っ

    てるから冗談めかして言ってるだけだし」

タイガ「ぬぅぅぅ……。本編で藤村流奥義を連発しすぎちゃったんで、

    どうも脳みそのピントが合ってないみたい。喜久○師匠の電波

    をキャッチするなんて、わたしもまだまだかなあ」

イリヤ「師しょーの師しょー? それってアンリマユくらい凄い?」

タイガ「うん。すごい。わたしの普段着も師匠の着物をモチーフにして

    るんだもん」

イリヤ「へー。まあ別にどうでもいいんだけど。

    ところでタイガ。本編ってゆーか道場の運営に関してもの申し

    たいコトが何個かあるの」

タイガ「なーにイリヤちゃん?」

イリヤ「あのね。タイガは自分で禁止しといて、なんでわたしのことを

    弟子一号じゃなくてイリヤちゃんって呼んだりするの?」

タイガ「…………藤村流暫定奥義『ザ・企画倒れ』っ!!」

 ぼぅむ。

イリヤ「っっっ……!! また爆発オチなのー!?」


 ぱちぱちぱち……(まばらな拍手)


『えー、ただいま藤村大河とイリヤスフィール・フォン・アインツベル

ンの両名は、その魂がヴルハラ山岳地帯に飛んでおります。現在ポケベ

ルで連絡を取っておりますので、今しばらくお待ちください』


『それでは、両名が帰還するわずかの間ではありますが、こんなことも

あろうかとスタッフがそこらへんを鬱々と歩いていた女子高生、間桐桜

さんに初漫談をするよう破格のギャラでお願いしていましたので、その

初々しさも噛み締めながらお聞きください……』


 ぱちぱちぱち……うわぁっ(客席の一角から妙な歓声)


桜「……あの、えーと……。コアラは日本語で熊猫だと聞くとみんなえー

  可愛いのにーって言うが、本物のコアラのガン飛ばしは木更津のなん

  ちゃってリーゼントより遥かに凶悪なんだっ! 間違いないっ!」

『ぱくりかよ、と客席からつっこまれてます。まんま喜○蔵師匠です』

桜「……う、それじゃあ、セイバーの髪の毛ーが一房だけはみ出てるー

  のはなんでだろ――」

タイガ「だから誰が楽○郎だっ!?」


『すぽーん、と綺麗に吹き飛ばされる女子高生の間桐桜さん! それでも

バブル時代をほうふつとさせるセクシー姿のムラサキっぽい人が、壁に叩

きつけられる寸前でがっちり受け止めたから大丈夫です。

 まあ、そうでなくてもナニカ黒っぽい影の中にずぶずぶ沈んでいきまし

たから、たぶん問題はなかったかと……』


『……(見なかったことにした)さて、予定より一時間ほど早く着いてし

まいましたが、幕間の少女は都合よく退場しましたので何の支障もござい

ません!

 それと「オイオイあの女子高生に一時間も寒いネタで繋がせるつもりだ

ったのかよ誰だ責任者」っていう苦情お問い合わせは、子供お悩み電話相

談室(フリーダイヤル)で随時受け付けておりますのでそちらでどうぞ!』


 ぱちぱちぱち……(もはや何の拍手だかわからん)


タイガ「……えーと。なんか真打ちのわたしたちより他のコトで盛り上が

    ってるような」

イリヤ「それより今日の司会進行って誰なの? やけにテンション高くな

    い?」

タイガ「まあそんなこと気にしても仕方ないわよ入谷ちゃん」

入谷 「うんまあそうだけどさ……。あのねタイガ?」

タイガ「だから言いたいことがあるなら好きなだけ言い放っていいのよ

    入谷ちゃん?」

入谷 「……(漢字で変換するんじゃないわよ。どっかのマラソン選手

    みたいじゃないの)」

タイガ「どしたの? やっぱり入矢ちゃんじゃなくて弟子一号の方がいい?

    わたしとしては、そっちのテンションの方がなしくずしに上手く

    進行できそうな気がするんだけど」

入矢 「……(こっちでもないっ! 気付けばか虎っっっ!)」

タイガ「うむ! 沈黙は肯定と受け取って、なんぞや質問はないのかな

    記念すべき弟子一号!」

イリヤ「……(ほっ)。そうね、だったらひとついいかしら師しょー」

タイガ「構わぬ。この身はただそれだけに特化した思考回路。如何なる疑

    問をも解決してあげませう」

イリヤ「あのね。わりと致命的なんだけど、師しょーって最初の間はタイ

    ガー道場の師範だったのに、なんでいつの間にか師範代に落ちて

    たの? 少なくともタイガー道場34あたりではもう師範代に落

    とされてたみたいだけど」

タイガ「…………藤村流即席奥義

   『細かいこと気にしてんじゃねーよ、夏』っ!!」

 ぐちゃぼりばり(ナニかしらの咀嚼音)

イリヤ「いやー! 黒っぽい影だけはやめてーげこっ!?」

タイガ「ははははー! 大人にはいろいろあるんだよう確定申告とかー

    げこここっ!?」

 ぐちゃぼりばり……(地面に溶ける影。スタンドマイクも飲み込みます)


『……えー、そこ吐かないように。大丈夫です、見えてません。別に赤い

血とか流血とかAB型とか美味しそうねとか関係ありませんから。私たち

は何も見なかった。それでいいですね?』


『それでは気を取り直しまして、こんなこともあろうかとスタッフがそこ

らへんを練り歩いていた女子高生、氷室金(かね↑)さんに……

 え? 発音が違う? それじゃあ無類のごうつくばりか100歳を過ぎ

て有名になった人たちみたいだって? わかりましたあ……えーと、

か↑、ね↓、ですか。なるほどなるほど。でもそっちの方がお婆さんみた

いですよね、ってなんで蹴るんですか! 痛い痛いいたいですってば!』


 ぱちぱちぱち……(観客も自分がなんで拍手してるのかわかってない)


氷室「みなさんこんにちは。本名で氷室鍾です。鍾は難しい方の字であっ

   て、決して現ナマの方ではありません。どうか誤解のなきよう。


    それではお話をひとつ。これは、私がとある地下帝国で臨時メイ

   ドとして勤務していた頃の話なのですが……」



 純白の吸血鬼は微笑む。

 ――わたしを殺した責任、取ってもらうからね。

 あの有名同人ゲームを開発したTYPE−M○○Nが、満を持してお送

りするヴィジュアルサウンドノベル、待望の第二段!

 月姫2/The dark sex

 ……ああ! 一文字違うだけでなんかどえらいことに!



氷室「……がんばってほしいものですね」


(ぺこり。一礼して舞台袖に降りる。袖からは「めんどくせーなー」など

という不届きな声が聞こえたりもする)


『……えーと、これまたコメントのしづらい話を……。いいんでしょうか

こういう使い方は。 ……え? 「誰に向かって話してるんだ」って、

そんなこと私に聞かれても困りますから子供お悩み電話相談室(アナログ)

にお問い合わせしてくださいと言ったはずでしょう。私の口から言いにく

いことを言わせるとはいいご身分ですね?』


「ああああああああああああ…………」


(ぼとり。舞台の天井から、ふたつの人影が計ったように落下してくる)

タイガ「うう……。くさかったよう怖かったよう息苦しかったよう……」

イリヤ「……(サクラぜってーぶっちぎる)」


『と、都合よく真打ちも未消化のまま返還されましたので、引き続き舞

台をお楽しみください』


 ぱちぱちぱち……(ちょっと同情してきた)


タイガ「……イリヤちゃん? わたしたち、なんか応援されてるみたい

    だからもうちょっとがんばろーか?」

イリヤ「そ、そうね……。わたしはシロウを捕まえてえろえろになるた

    めにやって来たんだから、アンリマユに呑まれてぐろっきぃに

    なんかなってられないっての」

タイガ「だよねー。いいよねえろえろ。いや別にわたしがえろえろ好き

    なワケじゃなくて、おねーちゃんとして士郎にいろいろ指導し

    たいことがあるってもんじゃない? その点わたしは教師なん

    だから、それを利用して放課後の課外授業とかでR指定のバト

    ル・ロ○イヤルみたいなことをさー」

イリヤ「……それ、教職者として言うようなことじゃないと思うけど」

タイガ「イリヤちゃん、なに言ってるの? 職権は乱用するために、機

    密は漏洩するためにこそあるのよ?」

イリヤ「違うと思うけど……。まあどちらにしろ、同意の上ならそーいう

    行為に至っても異論を差し挟む余地なんてないんだし」

タイガ「そう! たまには良いこと言うねイリヤちゃん!」

イリヤ「でも、シロウはタイガのことを『藤ねえ』以上には想ってない

    みたいだから、そーいうしちゅえーしょんに陥ることもなさそ

    うだけど」

タイガ「……くっ! 余裕の笑みを浮かべちゃってまあ弟子一号っ!

    たとえ兄妹でも血は繋がってないから比較的オッケーみたいな

    ノリなのねっ!? また黒い影をけしかけられたいのっ!?」

イリヤ「望むところよ。その場合、師しょーも同時に取り込まれるから

    喧嘩両成敗になるけど、それでも良ければ」

タイガ「く……っ! ……強くなったわね、ロリブルマ」

イリヤ「ありがと。できればそれを先輩の口から聞きたかったわ……」

タイガ「……えーと、そこで涙を拭う理由がいまいちよくわかんない

    けど」

イリヤ「こっちの話だから気にしないで。……ところで、唐突に思うこ

    とがまたひとつ出て来ちゃったんですけど師しょー」

タイガ「うむ。すこぶる嫌な予感が背中を這いずり回ってるけど、まあ

    許可しましょう」

イリヤ「あのね……聞きづらいんだけど、師しょーが師範代ってこと

    は、正当な師範が他にいるってことでしょ? ……誰なの?」

タイガ「そ、それは…………アレ、かな」

 ……ず……ず……

イリヤ「え……!?」

 ……きゅるるる……

タイガ「……なんか、おなか空かせてるみたい……」

イリヤ「ちょっと師しょー!? なんで燃え尽きた顔してるのっ!?」

 ……ぐちゃぼりばり……

イリヤ「いやあぁぁぁ!! やっぱりダメぇぇぇ!!」

タイガ「……そう簡単にトラウマは克服できないわよねえ……」

イリヤ「師しょー師しょー!! そんなお母さんみたいな目で見ないで

    いやあああああ……」

タイガ「……ファンディスク希望!! げこ……!!」

 ……ぐちゃぼりばり……(フェードアウト)


『…………黙祷』


(笑点のテーマとともに、緞帳が下りてくる)

 ――ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃちゃ

 ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃちゃ

 ちゃーちゃー (かんかん) ちゃららっ ぱふ。


『――本日は、ここ深山町市民会館においで頂きまして、まことにあり

がとうございました。わずかばかりの謝礼と致しまして、普通の方には

スポンサーの中華飯店 宴歳館・泰山様より特別ご優待券を、同じくスポ

ンサーのインド料理店 メシアン様より特別割引券を。


 吐いた方には燃やしても有毒ガスが出にくい塩化ビフェニール袋を、

返り血を浴びた方にはごまかしが利くようにトマトケチャップを、ネタ

バレその他キャラクター崩壊で気分を損ねたという方は子供お悩み電話

相談室(ファックス可)にて洗脳記憶操作を、それぞれのスペシャリス

トがご提供しております。


 司会進行は、わたくしシエル・エレイシア(仮名)が謹んで務めさせ

て頂きました。

 それでは、舞台に参加してくださった方々に盛大なる拍手をー!!』


 ぱちぱちぱち……(誰もいない舞台に拍手だけが鳴り響く)





(緞帳、完全に閉まり、数分後にナニかが墜落するような音が聞こえる)

「うう……。苦かったようぬるかったようお嫁に行けないよう……」

「……(ゾーゲンぜってー泰山のマーボー食わしたる)」

 ――閑散とした舞台の上で、びちょびちょになった2人だけが悲しく

取り残されていた。





−了−





 お疲れさまでしたー、とスタッフの皆様に挨拶をして、私は市民会

館を後にする。

 遠野くんが待っててくれるかなあと思ったけど、あの鬼妹と一緒だ

ったみたいだから先に帰ってしまったようだ。まあ、優柔不断なあの

ひとなら無理もないけど。

 新都の駅に向かう途中で、私はふと考える。自分の存在意義、自分

に求められている役割を。

「……どらちかというと、私の方が喜○蔵師匠っぽくありません……?」

 なぜならば、黄色だから。それ以上に何があろう。

 とは言いながら、自分でカレーキャラ路線を開拓していくのはどう

なんだろう、と思い悩んだりもするのだった。





 あとがき。


 ……不遇です。いろんな意味で。

 ネタバレかつ笑点ネタとお笑い芸人ネタ(中身自体は自分で考え

ましたが)と、どうしようもない感じに仕上がってます。出せる

引き出しが極端に限定されています。

 ネタに詰まったとき、第二段が発動するやも知れません。

 最後に、ここまで頑張って読んでくださってありがとうございました。


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