おまけ、その1:
公園にて。
黒ずくめのサングラス集団に囲まれる斎藤四郎(24歳、歯医者、♂)。
「てめえ、この野郎、俺たちのお嬢さんに口付けかますとは、いい度胸してやがる!」
「い、いえ、その、まさか藤村組のお嬢様だとは存じ上げなくて……」
「『存じ上げなくて』だぁ??? お嬢さんの唇を奪っておきながら、そんな言い訳で済むとでも思ってんのか、コラ!!」
「坊ちゃんが一編死んでこいとおっしゃっていたが、一編じゃ済まねえぞ、百回死んでくるか、コラ」
「お嬢さんを泣かした落とし前きっちりつけてもらおうかいのぉ」
「坊ちゃんと同じ名前だからって、粋がってんじゃねえぞ、コラ」
「若頭! わしに任せてやって下さい、この藤村大河ファンクラブ会員番号002の後藤に!」
「そんなら、会員番号001のわしが最初にやらしてもらおうか、おい、ドス持って来い!」
「ど、ドス!??? か、勘弁してください。たかがキスじゃないですか」
「『たかがキス』、お嬢さんの純潔を『たかが』だと!? その暴言、点が許しても、この藤村大河ファンクラブ会員証が許さねえ!」
「うわあ、切れる、切れる! 切れますって!」
「当たり前だ! 切れないドスなんてあるか!」
「うわあ、うわあ!」
「このやろう、チョコマカ動くな! おとなしく死ね!」
「そんな殺生な!」
「だから殺すっつてんだろが。コラ手前ら、この野郎の周りを囲め! 押さえつけて逃がすな!」
「「「「「「「ガッテンで!」」」」」」」
かくして、斎藤四郎の受難は続く。…組員の帰りのあまりに遅いのをいぶかしんだライガが公園に現れるまで。
「なんで、俺がこんな目にーーーーーーーーー」
「おい、どうだい、四郎君と藤村先生、まだ帰ってきてないぞ、こりゃあ四郎君も手が早いなあ、さすが私の甥だけのことはある、今頃は上の部屋にでも行ってたりなんかするのかな、ハッハッハッ」
「うちの四郎は男前ですからね、ホッホッホッ」
教頭先生は、いまだ幸せだった。
おまけ、その2:
「凛、落ち着いてください!」
「放して、セイバー。後生だから! お願い、放して!」
「凛、一体何をするつもりですか! 何故左手が光っているのですか! 何故呪文を唱えているのですか!」
「お願い! 士郎のバカ、こともあろうに、こ、この私を、あ、愛人呼ばわり…」
「だから、あれは話しの流れからして言葉のアヤというもので…」
「言葉のアヤだろうがサヤだろうが、この私を愛人にするとはよくぞ言ったわ。本当にいい度胸。いつの間にそんな偉くなったのかしらねえ、衛宮くんは」
「シロウが本気で言ったわけではないことくらい凛にもわかっているでしょうに。それに、今出て行っては台無しではないですか! 『士郎のバカを温かく見守る』のではなかったのですか、凛?」
「フフフ、そのつもりだったけど、もう、ダメ。我慢の限界。
キスも一回だけならともかく、二回もかますだなんて、益々いい度胸。しかも二回目は士郎の方からだなんて、ホント死にたいとしか思えない。士郎ったら、自殺願望でもあるのかしら? フフ…。
ね、セイバー、いい子だからその手を放しなさい。明日の晩御飯の量、倍にしてあげるから、しかもセイバーの好きなすき焼きよー」
「そんなことでは惑わされません!」
「それも高級特選和牛よー、……いや、奮発してあの松阪牛を食べ放題!」
「ま、松阪牛を食べ放題…」
「あんた今一瞬手が緩んだわよ」
「そ、そんなことはありません! 桜! 桜もボーっと見ていないで凛を止めるのを手伝ってください」
「……藤村先生、藤村先生だけズルイ。今度は私も先輩にキス……」
「桜! そこで妄想に頬を赤らめてないで!」
「セイバー、いいから放しなさい! 放さないと…」
「凛! あなた、まさかこんなバカバカしいことに令呪を使うつもりですか!」
「バカバカしくない! バカバカしくなんかないんだから!」
「落ち着いてください、凛!」
「私も先輩にキス・キス・キス・キス・キス……」
「桜もこちらへ戻ってきてください! 凛を止めないと!」
「放して、セイバー、放してったら! あのバカに一発叩き込んでやらないと私の気が済まないのよ!」
そして、咆哮。
「衛宮士郎の浮気者ォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「ん、士郎どったの?」
「なんか悪寒が…」
本当に終わり。