「お前達の力はそんなものか?」
目の前に佇む男は余裕綽々と俺達を見回している。強い・・・・
俺達3人を相手に一歩もひかず、寧ろ押してさえいる。
そして問題は何より、目の前の相手目の前の相手は紛れもないサーヴァントであるということだ。
ロンドンに来て早2年、やっとこっちの生活にも慣れていつも通りセイバー、遠坂、と三人で夕食を食べていた時の事だった。
「士郎。セイバー。明日からアイルランドのほうに探索に行くから、今日中に準備しといてね。」
っと、唐突にきりだされた。
「ふーん。アイルランドか近いっていやぁ近いな・・・・・って」
「「えぇええっー!」」
コレには流石のセイバーも反応が遅れたらしく、俺と同時に非難の声を上げた。
「もう二人して大声上げないでよ。耳が痛いじゃないの!」
「そういう問題じゃないだろ!どうしてお前はこーいつも突然そういう訳の解らんことを言い出すんだ!」
「シロウの言うとおりです。リン、そういうことはもっと前々から申してくださらないと。」
いきなりの事に怒り出す俺とちょっと論点のずれているセイバーを相手に、いつもと変わらぬ口調で遠坂は説明をはじめた。
「この間図書館で面白い資料を見つけたのよ。その資料本来なら閲覧禁止らしいけど何故か一般欄に置いてあってそれをちょっと盗み見ちゃったのね。」
「む。それは不味いだろう?閲覧禁止って禁書とか古代魔学とか現代じゃ封印指定されてる書類のことじゃないのか?
そんなの盗み見したってばれたら大変じゃないか。って問題は其処じゃないだろ!」
「大丈夫よ。私がばれる様なへまをすると思う?まぁとりあえず話は最後まで聞きなさいって。その資料ってのは現代にも残る古代の魔具や宝具についての資料だったんだ。
それであんたには話したと思うけど今私が研究してるものは遠坂の秘伝、宝石剣ゼルレッチの研究をしているの」
「あぁ、それは前に聞いた良く意味が解らなかったけど遠坂の大師父が持ってたっていう剣なんだろ?」
淡々と説明をする遠坂。ちなみに横ではセイバーがこくこくと頷きながら夕飯を食べている。
「まぁそんなとこね。それで宝石剣の研究にはものっっすごくお金がかかるのよ。高価な宝石も必要だしそれ相応の資材や工具も必要になってくる。」
むーといった感じに顔をしかめながら言う遠坂に
「マァそれはいいとして何でその話がアイルランドに行くことになってくるんだ?まったく関係ないじゃないか。」
意味が解らないといった感じに答える。
「つまり本来ならお金も資材も物凄くかかるんだけど。宝石剣と同等の魔具や宝具が在れば一気に研究が進められるとおもうのよ。
そして近場だとアイルランドのほうにそれらしきものがあるらしいのよ。」
つまりそういうことねっと笑顔で言う遠坂に
「えーとつまり宝石剣と同等の魔術道具を手に入れるためにアイルランドに行くってことか。」
俺はまだ納得いかないといった風に答える。
「でもさ、それって今もあるとは限らないんじゃないか?資料に載っていたってことは、俺達以外の者も知ってるってことなんだから。」
俺の言葉を聞いた遠坂は少し呆けた顔をした後、あはは〜といった感じの顔で笑った後
「で・・でも、まだ残ってるかもしれないでしょ。閲覧禁止になるような資料に記載されていたのよ。全部持ってかれてるってことは無いでしょう。」
ちょっっと引きつった笑顔をしながら答える遠坂、その横ではさりげなくおかわりをしているセイバーが見えたりする。
「確かにな。しかし・・・」
やはり遠坂はどこか抜けているというか少し考えが浅かったりするとこが在るというか・・・・などと考えていると。
「とりあえずもう決まったことなの!明日アイルランドに行くから準備しておいてね。良い?」
前半すごい勢いで言ったかと思うと後半は有無を言わせないといった笑顔で言う。
こういうときの遠坂には今までの経験上何があっても逆らわないほうが良いと解っている。
こうして俺達はアイルランドへ来た。とわいってもはっきり言って俺に土地勘はなく、なすがまま遠坂について行くしかなかったわけだが。
「やっと着いたわねぇ。」
目の前は見たこともない遺跡などが広がっている。今までよくこんな場所が話題にならなかった物だ。
遠坂曰く、魔術によって結界が張られているからだそうだ。確かにここに足を踏み入れた瞬間、妙な違和感を感じた。きっとそれが結界だったのだろう。
そしてその遺跡の中で一層強力な魔力を発する遺跡があった。
見ているだけでわかる明らかに他の遺跡とは違う。それに「アレ」を理解しようと思ってもできない。
構造や設計図さえ浮かんでこないとこを見るとあれ自体に強力な結界が張られているのだろうと予測する。
「どうやら一番奥にあるあの神殿に在るみたいね。しかもあれだけの魔力を放ってるってことはまだあの中に魔具や宝具があるってことよ。」
「どうやらそのようですね。私もアレから強力な力を感じます。が・・・・」
遠坂の言葉に同意を示したセイバーだが
「どうしたセイバー?何か問題でもあるのか?」
セイバーの言い方が気になった俺はセイバーに何かあるのか聞いてみた。
「シロウ、リン。アレだけ強力な結界を見たのは初めてです。アレを破るにはそれこそ宝具クラスの魔術が必要になるかもしれません。」
深刻な顔をして答えるセイバーに難しい顔をしながら
「うーん、そっかそこは盲点だったわね。たしかに魔具や宝具が封印されてるんだからそれ相応の結界が張られてても不思議じゃないものね。」
と遠坂は言う。
「もしどうにもならなかったら、セイバーのエクスカリバーでどうにかできないかなぁ?」
ってえぇ!?遠坂お前何物騒なこと言ってんだ!
「使用を許可していただけるなら、多分やれない事はないと思いますが。」
セイバーまでなにをいってるんだ・・・・そんなことしたら遺跡ごとぶっ壊しちゃうんじゃあ・・・・・
などと思索していたら。
「其処までだ、アレにはそれ以上近づかないでもらおうか。」
と突然後ろから声が聞こえた。
「「「!!」」」
驚いて振り返ると其処に一人の青年が立っていた。
年は見た目俺達と同じくらいだろう背が高く整った顔の男が其処には立っていた。
「悪いがアレに近づかないでもらおうか。どうせお前達も神殿の中の物が目当てで来た魔術師かトレジャーハンターの類だろう。
ここ十数年そういう輩は来なかったが、まさかお前達みたいな子供が来るとはな。思いもよらなかったよ。」
と目の前の青年は呆れたような素振りで語った。
「何あいつ。いつの間に後ろに・・・・。」
「まさか私が気づかないなんて。シロウ、リン、気をつけて相当の使い手であるのは間違いありません。」
などと会話しながら俺達は一気に警戒態勢に入っていく。
目の前の得体の知れない者はセイバーの言うとおり相当手ごわい相手に違いない。
「でもあまり魔力を感じないぞ。あいつ普通の人間じゃないのか?」
「セイバーも気づかないほどの気配遮断を行っていたんだからそれ相応の魔力隠蔽を使っているのかもしれないわ。何にせよ油断しないほうがいいわ。」
なるほど。と遠坂の言葉に頷く。すぐ横では既にセイバーは魔力で展開された鎧を着込み戦闘態勢にある。
「ふむ。なるほど其処の女の子はサーヴァントだったか。なるほど侮っていたが久々に楽しめそうじゃないか。ということはそっちの二人もやはり魔術師ってことか。
面白そうだちょうど退屈してたところだ。」
セイバーを見てサーヴァントと判断したところを見るとやはり目の前の男はただの人間って訳ではなさそうだ。マァこんなところに居る時点で只者じゃないわけだけど。
「もう一度警告しておく。神殿に近づかずこのまま帰るって言うなら記憶を消してそのまま帰してやる。」
「もし、イヤだって言った場合は?」
警戒態勢のまま遠坂が尋ねた。
「その場合は悪いけど痛い目にあってもらう。まぁ、殺しはしない半殺しか気を失ってる間にここから帰ってもらうだけさ。」
物騒なことを言う男に遠坂は
「ならお断りね。折角ここまで来て諦めるなんてできるわけないじゃない。」
なんて最もなことを言う。
「じゃあ交渉決裂だな。」
目の前の男がそういうと。目の前から魔力の突風が吹きつけてきた。
「なっ・・・・なんて魔力なの。セイバー、うぅんそれ以上の魔力よあいつ。」
確かに目の前の男はさっきまでが嘘のような魔力を放っている。セイバーの魔力放出にも劣らない魔力だろう。
「来ます!シロウ、リン、後ろに下がって!」
そういうとセイバーは風王結界による見えない剣を取り出し構えている。
「さて参ろうか。我が名はルーフ。ここケルトの発祥の地においてトゥアハ・デ・ダーナンの神殿を守護するサーヴァントだ!」
そういうとルーフと名乗ったサーヴァントは一本の槍を構えセイバーに向かっていった。
ルーフとセイバーの打ち合いは肉眼では捉えられないほど疾く聞こえてくる剣戟の響きと風を切る音だけがその激しさと苛烈さを示している。
かろうじて魔力で視力を強化して見えているに過ぎない。
「ダメだ。セイバーだけじゃ無理だ。俺も援護にまわる。遠坂も魔術で遠距離から援護してくれ。」
と言って援護に向かおうとしたら
「待って!」
っと遠坂に腕を掴まれ止められてしまった。
「何するんだ。今のままじゃセイバーは劣勢だ。援護しなきゃ勝てる相手じゃない!」
「解ってるわよそのくらい!ただあいつ自分で『ルーフ』って名乗ったわ。
もしそれが間違いじゃなければあいつの正体はケルト神話の主神ダーナ神族の王にさえなった光の神『長き腕のルー』よ。」
「長き腕のルー?」
「えぇ。あいつは天空と雷光の現す槍ブリューナクと光速の太陽弾の二つ名をもつ魔弾タスラムや他にも数多くの武器を持つ万能の神と言われるケルト神話の主神よ」
「な・・・・・じゃああいつはいくつも宝具を持っているって事か!?」
遠坂の説明に驚きを隠せない俺に、
「私が知る限りだと4つか5つだと思う。どのくらいの威力かわからないけどあの槍はルーフの象徴ともいえる武器だから、下手したらセイバーの宝具クラスの力をもっているかも。」
と更に驚愕の事実を突きつけてくる。
「く・・・尚更援護に向かわないと。それが本当ならセイバーでさえ勝てるかわからないぞ!」
「解ってるわ。とりあえずそういうことだから用心して私も魔術で援護するから士郎も投影で援護してちょうだい。」
「解った!」
こういうとき冷静な遠坂は頼りになると思いながらセイバーの援護に向かった。
俺の見る限りじゃセイバーが押されているようだ。あのセイバーの剣技と魔力放出にほぼ互角に渡り合い寧ろ押してさえいる。
下手に近づいても俺じゃ足手まといにしかならないか・・。隙を突いて中距離から援護するしかないと思い
手ごろな木の枝を強化、変化させ簡単な弓を作る。
あいつ相手には木で作ったような半端な威力の矢じゃ当たりさえしないだろうな・・・となると。
そのとき脳裏に浮かんだのは紅い外套をまとった騎士、未来の自分の理想像だったアーチャーの姿が浮かんだ。
そうだ、あいつがやったように・・・・
「こうなったら宝具クラスの物を投影して射抜くしかない。」
そう呟くと手元の変化させた弓をより強化させていく。
チャンスは一瞬だろう。その一瞬で射抜くしかない。
思ったより頭の中は冷静でまばたき一つせず強化した眼でセイバーとルーフ二人の動きを追っていく。
ガキィィン!
っとより激しい響きが聞こえた瞬間、セイバーが後方に飛ばされていた。倒されたわけではなく鍔競り合いに負け飛ばされただけのようだ。
しかしその瞬間はセイバーがルーフから遠ざかった瞬間でもあった。
今しかない!そう思うと
「我が骨子は捻じれ狂う。」
弓を構えつつ集中し詠唱する。
投影はうまくいった。手には思い浮かべたとおり『偽螺旋剣-カラドボルグ-』を掴んでいる。
そして矢を番え弓を引き、射る。
瞬間両腕に痛みが走ったが射った手ごたえはあった。
そして射った先を見た。っとそこでおかしなことに気づいた。ルーフは先程まで手にしていた長槍を手にしていなかった。
代わりに持っているのは剣、いやどちらかと言うと太刀に近い反身の刃だった。
ルーフの魔力が高まっていくのが解る。その直後、
『応酬する虚無の歪[アンサラー]』
と叫ぶルーフの声が聞こえた。
そして偽螺旋剣は見えない何かと拮抗し、衝突した後パキィィンという甲高い音と供に弾かれてしまった。
「なっ!」
流石に俺も驚きを隠せず声を出して呆然としてしまった。
何がおきたのかすぐには理解できなかった。持っていた槍はどうしたんだ?何故剣を持っている。偽螺旋剣は何に弾かれた。
だが一つ解ることはあいつが宝具を使用したということだ。
呆然としていると後方で強力な魔力を感じた。遠坂が魔術を行使しようとしているのだろう。
そのおかげで我に返りまたルーフを見る。
っと今度は剣ではなく弓を持っている。
弓自体はたいしたことは無いのだろう。問題は其処に番えられている矢だ。
まるで魔力が凝縮されているといった力の塊。
発光し、まだかまだかと放たれるのを待っているようでもある。
そして、それは遠坂の魔術とほぼ同時に放たれた。
『光り閃く太陽の礫[タスラム]』
というルーフの叫び声が聞こえると眩い位に発効し。魔力の本流ともいえるほどの閃光の矢が放たれた。
それは容易く遠坂の魔術を打ち破りそのまま遠坂自身に向かっていく。
まずいっ!、あのままでは遠坂が・・・・
そう思い自分の中で最大の盾を投影しようとするが
間に合わない。放たれた矢は正に光速の二つ名に違わぬ速度で遠坂に向かっていく。
が予想していた通りにはならず、光の矢は遠坂には当たらずその横を通り過ぎていっただけだった。
流石の遠坂もやられたと思ったのだろう。何故当たらなかったのか解らないといった具合に唖然としている。
しかし、俺としては何にが起こったにせよ遠坂が生きていてくれたことが純粋に嬉しかった。
ほぉっと安堵の溜息をついた後、当の矢を放った本人を見る。
そのすぐ側でセイバーも体勢を立て直したのか距離をとりつつ剣を構えている。
いつの間にか弓からまた槍を持っているルーフを俺は不思議そうに眺めた。
あいつの武器は一体何なんだ。何故矢は外れたんだ。
それにあいつの腕なら俺が遠坂に気をとられている時に俺を倒せたんじゃないのか?
等と思索していると、
「言ったろう。俺はお前達を殺すつもりはない。だから矢も当てる気はなかったし、隙があったお前を倒そうともしなかった。」
あいつは俺の考えていることを見透かしているかのように答えた。
「な・・・。お前は倒す気がないって言うのか・・・・・。」
「そうは言ってない。命を奪うことまではしないと言ったのさ。お前達に帰る意思がないのなら力ずくで帰ってもらうのみだからな。」
と話しているといつの間にかセイバーが俺達の近くに戻ってきた。
「リン、怪我は有りませんか?さっきの一撃は逸れましたがあれだけの攻撃をされたんです。どこかに異常は有りませんか。」
「えぇ大丈夫みたい、何処も異常はないわ。どうやらあいつ本気で私達を殺す気はないみたいね。」
「そのようですね。それどころかどこか彼は闘いを楽しんでいる様な様子です。先程の打ち合いでも必要に急所を攻めてきませんでしたし、致命傷といえる攻撃もしてきませんでした。」
横では遠坂とセイバーが話し合っているがその間も俺はルーフの方を眺めていた。
というのもルーフの持つ武器を理解し、投影しようとしたからだ。だがどういうわけかあいつの武器からは何も見えてこない。
さっき持っていた弓もあまつさえ俺の得意分野であるはずの剣からも何も見えてこなかった。
何故だ・・・・。今だにルーフの方を睨んでいると
「ふむ。もう終わりか?」
俺たちはその言葉に反応しまたも身構える。
「お前達の力はそんなものか?」
余裕綽々といった感じでルーフは叫んだ。
(続)
[Post script]
こんばんはー。シベリンと言います。
初めて小説という物を書きましたがこれだけ書くのに結構時間かかっちゃう物ですね。
設定としては凛GoodEnd後です。
私的見解が多く皆さんのキャラクターとは少し違って見えるでしょうけどその辺は愛嬌で勘弁してください。
何分初めてなもので文法的にも設定的にも至らないところなどありますが、多分続くと思うのでよろしく御願いします。