聖杯はきみへの・・・12


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1: non (2004/03/16 00:50:48)[nonn at poppy.ocn.ne.jp]

聖杯はきみへの・・・12








セイバーは泣き疲れて眠ってしまった。


ライダーは降参して、居間でお茶を飲んでいる。



「あんなものに対抗できる宝具はおそらく存在しません。」



自分のマスターの安全を保障してくれるなら、と条件つきだったが
ぜんぜん問題にならない。



あと二日ばかりここを守るだけでいい。
でもサーヴァントは大体問題なくなったと見ていいだろう。



セイバー、部屋で寝ている。


アーチャー、過度の宝具使用により消滅。


ランサー、門番をしている。


ライダー、降参。


アサシン、ゲイボルクで死亡。


バーサーカー、無限幻想剣で消滅。


キャスター、遠坂と徹夜で部屋に篭もりっきり。




マスターはまだわからない事もあるけれど、


ランサーを倒せる人間はそう多くないはず。









考えごとをしていると、襖が音もなく開いた。




「士郎、一度だけ手合わせしてほしい。」




セイバーに決意を秘めた目で見られたら断れるわけがない。



庭で向かい合った俺とセイバー。


お互いの手に握られているカリバーン、あれは赤い騎士がセイバーに残した剣だ。



これは単なる試合ではない、
自分の未来がかかっている戦いだと理解した。



「行きます。」




認識すら難しい疾風の剣を、
俺はセイバーの技術を頭の中で投影、
先送りして辛うじて防いでいた。



彼女との特訓がなければこんなこともできなかっただろう。



一撃、一撃ごとにあの剣から、
アーチャーのセイバーへの思いが伝わってくる。




驚異的な技術と思いによって織られ、

真の担い手を見つけたあの剣は、

本物すら凌駕する鋭さをもっている。




俺の手に握られた偽物ではあの剣に勝つのは難しい。









難しい?

今俺は何を思った?

俺のセイバーへの思いはアーチャーに簡単に負けてしまうものなのか?

そんなこと認められるか、「俺は再会するって誓ったんだ!」







苛烈な打ち合いはお互いの限界を超えてエスカレートする。

信念に導かれるまま、愚直な突撃を繰り返す士郎。

一歩も後ろに引かないセイバー。





剣に込められた思いを曲げないために、
二つの黄金の剣は、
ぶつかり合いを繰り返す。







決して刃こぼれなどしないはずの
聖剣はお互いにぼろぼろだった。




すでに二百を超えた打ち合いは
降り出した雨にも止めることなど出来なかった。




限界など超えた、
体を支えているのはお互いに
剣に誓った者への思いだった。











一際、甲高い音がして宙を舞う一振りの聖剣が戦いの終わりを告げた。





「私の負けです。」




ずぶ濡れで顔をうつむかせる少女。



勝者である少年の手には、一振りの短剣が投影されている。




「これは俺のわがままかもしれない、でも君に消えて欲しくない、」




その短剣が真名の開放と共に少女の胸に伸びる。



「ルールブレイカー」




戦いは終わり、少女は自由になった。




とりあえず風邪をひくといけないので
バスタオルを持ってきて頭にかぶせる。




「冷えただろ、早く風呂に入ったほうがいい
ライダーが準備してくれていたみたいだから。」




タオルでセイバーの髪を拭きながら言った。



セイバーは、クスリと笑って、



「一緒に入りましょう、そのほうが効率的です。」



トンデモナイことを言った。














ホカホカした体で昼飯を作る。



体中が筋肉痛で痛む、
飯を食ったら一眠りすることにしよう。



「セイバー、契約どうする?」



ルールブレイカーでマスターからの魔力供給を断ってしまった、
なにか手を打たないと彼女は現界し続けられない。



「士郎、マスターになってください。」



速攻で答えが返ってきた、
どうやら決定事項らしい、
彼女と戦う前から決心していたことだから、
俺は何も言わずに頷いた。




聖杯戦争が終わってからも遠坂から魔術を教わっていたので
契約は簡単にできた、
昔の俺はこんなことも知らないで
セイバーに迷惑かけてばっかりだったんだな。




そして、俺が眠りの世界に旅立って数時間後、
開かずの間と化していた「キャスターと凛の魔術室」
から妙にテンションの高い二人が現れたのだった。


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黄金の剣でぶつかり合う士郎とセイバー。
話が妙な方向に転がり続けていますが一応次回完結っす。
無限剣使わなかったのはセイバーを消滅させたくなかったからですね。


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