ぽかぽかたいよう。イリヤのおひるね。 (ちょっと改訂版)


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1: ちぇるの (2004/03/13 23:37:59)

 真っ暗。
 真っ暗なのは生まれたときと目を閉じたとき。
 私はもう生まれているのだからきっと目を閉じているんだろう。
 だから真っ暗。
「……うぅん……」
 むにゃむにゃ、と言葉にならない言葉を口の中で噛み砕いて一回大きくあくびをした。
 目をうっすらとあけると慣れてきたタイガの家の天井じゃない天井。
 あれ? と疑問に思いながら上体を起こしてみる。
 まだちょっとばかり重いまぶたを両手でごしごしとこすってベッドから降りようとして……ベッドじゃないことに気がついた。
「む」
 なんか変な力の入れ方してた自分が馬鹿みたいで面白くない。なんだろう、この不可思議な状態は。
 とりあえず、とふすまを開けて廊下に出てみる。
 そこまで来てようやく思い出す。
「あ、そっか。シロウの家に泊まってるんだっけ」
 中庭の方に出てみるともう、眩しい朝日がそこにあった。
 そこでもう一回背伸びをする。日本で過ごし始めてもう3年にもなるがやっぱり春はいいと思う。とりあえず布団からでても、おひさまに当たれば温かいのが素晴らしいのだ。
「さて、目を覚ましてきますか」
 軽くほっぺたをぺちぺちと叩きながら私は洗面所に向かう。
 こうして、私――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの一日がはじまるのだ。




『おひさまぽかぽか。イリヤのひるね。』




 洗面所に向かう途中で居間の前を通ると中からシロウのものらしき包丁の音が聞こえた。今日の朝食はなんだろうか。個人的にはやっぱり洋食が好きなのだけど、和食もそれはそれで美味しい。……うん、まあ。シロウが作ってくれるのならそれはきっと私にとってはなによりのご馳走となるのだ。
 顔を洗って、長い髪を整えると鏡の中には見慣れた銀髪と赤い瞳が映っている。3年も月日が立っているのに目線の高さが大して変わらないのはいかがなものか。
 そりゃあ、背は伸びた。十センチ以上伸びたとも。
 でも自分の周りにいる人の誰よりも小さいのだから私としては憮然とするしかない。
 と、台所からなんかどたどたした音がしてシロウが洗面所に駆け込んできた。
「い、イリヤ!?」
「……あのねシロウ。あまり身嗜みを整えてる最中のレディを覗きに来るのは感心しないわよ?」
「バカ。こんな堂々と覗くか。それよりイリヤ……」
「何よ?」
 シロウは何かを口に出そうとして、そして一旦動きを止めて、最後にすっごくキレイな笑顔を浮かべる。
「おはよう、イリヤ」
 その言い方に疑問を抱かないでもなかったが、そんなキレイな笑顔見ちゃったらいい気分になるよりほかにないじゃないか。
「うん、おはよシロウ」
 だから私だって心のままに一番いい笑顔を返してあげるのだ。

 シロウが鍋の様子を見に居間に戻っている間に一回部屋に戻って着替えをする。
 もう慣れたけどレディの部屋に鍵がかからないと言うのはどうだろう? まあこの家にはシロウしかいないんだし、シロウならまあいいかな、と思ってしまうのは家族的倫理感に反するのだろうか。まあサクラとかもそんなところがあるし、別にいいのだろう。
 着替えを終えて居間に行くと四人分の朝食がおいてあった。
 トマトの彩りが目に映える新鮮そうなサラダ。入れられたコーヒーは猫舌な私やサクラ専用に二つだけおいてある。ボイルしたフランクフルトソーセージの隣に半熟卵。どれもこれも私の好きな食べ物。
「あ、イリヤちゃん、ちょっと待っててね」
 サクラが台所から声をかけてくる。
 コーンポタージュの美味しそうな香りが既にここまで伝わっている。
「私も手伝うわ」
「ありがと、イリヤちゃん」
 初めのうちこそぎこちない態度を取っていたサクラも今では私を妹のように扱っている。私の方が年上だ、と大人気ないことを言おうとしたが、あんまりにも嬉しそうだから止めておいた。妹がほしかったのだろうか。
 まあ、私だってサクラとかリンとかタイガとか、一気に大好きな三人の姉が出来て嬉しかったのだし。
「トースト、すぐに出来るからな」
 少し広めの台所の端っこで三枚の皿と格闘中のシロウに私は微笑を返す。
 うん、素敵なぐらいにいつもの朝の光景だ。

 バターを塗った焼きたてのトーストと言うのは、もう他に何もいらないくらいに美味しい。食費を他の誰よりも入れている私としてはこれだけはゆずれないので最高のバターってものを常に冷蔵庫に常備させている。
「イリヤはいつもそうやって美味しそうに食べるよな」
 シロウのその台詞は別に私をバカにしたものじゃないんだけど、子ども扱いしていてなんか面白くは無い、面白くは無いんだけど、半熟卵の出来といい、トーストの焦げ方といい、コーンポタージュの素敵な甘さといい、幸せの方がはるかに大きくて何もいえない。
「美味しいものは美味しそうに食べるのがマナーなんだよ」
「なるほど。そりゃそうだ」
 にこっ、と笑うシロウ。そんな真っ直ぐな優しさがいつだって私の心に暖かいものを残してくれる。サクラも私の方を見て微笑む。
 優しさが心地よすぎて、私は少し照れくさくなりトーストを食べるスピードを速めることにした。
「なあ、イリヤ」
「?」
 口にものをくわえたままでは話すことも出来ないが、目線だけでなあに? と答える。
「今日どっかにでかけないか?」
「う〜ん、といいや」
「そっか。家でごろごろしてるのか?」
「ええ。年頃の少女がやることじゃないんでしょうけどね」
 たまにはそんな気分にもなるのだ。どことなく気だるいし。
 春は人を自堕落にするものである。まる。
「いいんじゃないのか? ……俺も、ごろごろしようかなぁ……」
 魔術の勉強で、毎日毎日リンにスパルタされているシロウは結構本気でその台詞を口に出した。
「へぇ、ごろごろねぇ。いいわね、私もごろごろしたいわぁ」
 語尾をいちいち可愛らしく嫌みったらしく言うその技法。もう本当に聞き慣れてしまったその言葉の主はにっこりと微笑みながら居間に侵入してきた。
「と、遠坂!?」
「おはよ、士郎。いやあ、まさかサボるつもりだったなんて。師匠としては哀しい限りねー」
「姉さん、嬉しそうな顔して言っても説得力ないですよ?」
 サクラが半ば呆れ気味の顔をして二枚目のトーストに噛り付く。
 シロウとリンが漫才を進めている中、私は一つの疑問に思い当たった。
「ん? どうしたんだ、イリヤ。不思議そうな顔して」
「あのさ、士郎」
「何?」
「リンが今ここにいるってことは、タイガはどうしたの?」
「へ?」
「だって、朝食四人分しかないじゃない」
 そう。リンとサクラとシロウと私の分しかここにはない。
「それは……」
「私、別に朝食ねだりに来たわけじゃないわよ」
「あら、そうだったの?」
「そ。今日は桜を連れ出して服選ぼうかなーって思ってたの。ね?」
 話を振られたサクラは一瞬ぽかん、とした後に
「え、ええ」
 とぎこちない笑いを浮かべた。

 小さな違和感を感じる。

 だが、その違和感について深く考え込む前に入り口ががらがらと開けられる音が聞こえてきた。
「うあ、藤ねぇだ。すまん、イリヤ。いい加減人の家に入るときの作法ってのを躾けてくる」
 シロウがどたどたと入り口にかけていくのと同時にリンが口を開いた。
「あのさ、イリヤ」
「何? リン」
「士郎って、最近疲れてると思うのよね」
 自分の頭の上に疑問符が浮かんだのを自覚した。なにを言っているのかが分からない。それを私に話してどうすると言うのだろう?
「だから、今日はお休み。イリヤ。自由に使っちゃっていいわよ」
 にやり、と笑ったその笑顔。ああ、つまり久しぶりにサクラと一晩中遊ぶからその間あの朴念仁をひっ捕まえておけという依頼だ。
「了解しました、サー!」
 びしっと敬礼すると、よろしくね、とリンは微笑んだ。

 リンも優しい笑顔だった。

「こらー、ちびっこー! 士郎に迷惑かけなかっただろうなー!」
 あはははは、と笑顔で飛び込んでくる飢えた虎の為にサクラがトーストを焼きに台所に戻っていく。
「わっ、今日洋食なんだ、すごいねーっ!」
 やけにハイテンションなんだけどなんでそんなにテンションが高いのかはよく分からない。よく分からないけど、よく分からない行動はとてもタイガらしいと思う。思うけど、それは結婚もしてない女性の評価としてはどうなのだろうか。
「洋食なことの何がすごいのよ、タイガ」
 私がそう問うと、何事も無いようにタイガは
「今日が洋食ってことがすごいのよ、さすが士郎!」
 私の自慢の弟なだけはあるわ! と微笑みを浮かべる。その後、いつもなら何を言ってるんだかよく分からないぞ腹ペコタイガー。飯ぐらい落ち着いて食え、と言うはずの士郎が、
「ありがとう」
 と控えめに苦笑を浮かべた。

 その空気の全てが優しい。
 春。
 春という空気だ。
 だから私は春が好きだ。毎年毎年この季節はみんなが優しい。

 ご飯を食べ終えた虎はうんうん、とうなずいた後に
「100点! よくやった士郎!」
 と満面の笑顔で言い切る。士郎はもう一度ありがと、と言って食器を持って台所に引っ込んでいった。
「タイガ、今日はどうしたの? いつにもまして変よ?」
「わはははは、子供はそんな心配しなくていいのだ!」
 豪快に笑い飛ばすとタイガは私に近寄ってくる。
「ど、どうしたの?」
 一抹の不安を抱いて私が身を引くと、タイガはにこっと、笑って

――私を急に抱きしめた――

 何が起こったのかがよく分からなくなったけど、すごく暖かくてどうでもよくなった。タイガの腕の中はそこにいるだけで温かくって■■■■■に抱きしめられてるみたいだ。
「イリヤ」
「何?」
「イリヤ……」
「だから、何よ……?」
 私が訝しげな視線を上にあげようとすると、それを押さえつけるようにタイガが私の頭を胸に押し付けた。
「イリヤ」
 なんとなく私の名前を呼んでるだけなのか、と気付いた。
 タイガがよく分からない行動をするのは実にタイガらしい。
 だから深く考えないことにして、今は抱きしめられていようと思った。

「こら、藤ねぇ」
 ひとしきり抱きしめられた後にようやく士郎が虎を止めてくれる。
「だってー、イリヤちゃんふかふかなんだもん」
 なんでもないようにそう言って、タイガは私から離れた。
「あのな……」
「じゃ、もう行くね。学校、始まっちゃうもん」
 わはははは、ともう一度タイガらしい笑いを飛ばして嵐が去るように虎は去っていった。
「まったく」
 士郎が苦笑すると、釣られるようにリンも苦笑した。
「藤村先生らしいわね。……とじゃあ、私達もそろそろいこっかサクラ」
「はい、これ洗い終わったらすぐ準備します」
「早くしなさい」
 そういうリンは別に焦っているようでもないようだ。
「リン」
「何? イリヤ?」
「今度、私とも一緒に服買いにいかない?」
 リンは息を呑んで、きゅっと目を閉じて、そして開いてにっこりと微笑む。まるでさっきのシロウと同じ。優しすぎる微笑までさっきと同じ。
「ええ、その時は是非一緒に。私も上品な服ってのには興味あるから」
「楽しみにしてるね」
 私がそういうのと、サクラが皿洗いを終えて台所から戻ってくるのは一緒だった。
「じゃ、行きましょうか桜」
「ええ、姉さん。行きましょう」
 サクラが何故か少し赤い目でリンの言葉に頷いた。
「サクラ、どうしたの?」
 まるで泣いたみたいに。
「ああ、うん。眠くてあくびしちゃった」
 てへ、と控えめに笑うその仕草は可愛らしい。今度シロウにこの表情をやってみたらどうなるかな、なんてことを考えてしまった。
「寝不足はレディの大敵よ?」
「うん、そうだね。気をつける」
 そのままリンとサクラは部屋を出ようとして、そして最後にサクラが立ち止まって、そして思い出したみたいに振り替える。
「イリヤちゃん」
「何?」
 朝から何度この台詞を口にしただろうか。みんな私のことを名指しで呼びすぎなのだ。
「イリヤちゃん。今朝の半熟卵私が作ったんだけど、どうだったかな?」
 ああ、そうだったのか。そういえば鍋がシロウ担当だったんだから、他のこまごましたものはサクラが担当してて当たり前だ。
 前々からサクラの半熟卵には酷評をつけてきていたのだが、今朝に限っては変に硬くも無いし、生過ぎてもいない。
「うん。サクラ。100点!」
 私が笑顔でそう言い切ると、サクラはなんと涙をぽろりと流してしまった。
「さ、桜!?」
 隣でリンがあわてている。それはそうだ。私だってそこまで喜ぶなんて思っても見なかった。
「ご、ごめん。ごめんね、なんでもないから。なんでもないからね、イリヤちゃん」
 私にそんなどうしようもないくらいに心が一杯一杯な台詞を残して、サクラは入り口の方に歩いていった。
「ま、全く。いくら嬉しいからってあれはないわよね? イリヤ」
 リンの口元が引きつっているのは気のせいじゃないだろう。
「まあね。でもこんなに喜んでくれるならもっと早く言ってあげてもよかったかな……ってリン。貴女なんて表情してるのよ」
「え?」
 何のことか本当に分からないらしい。
「泣きそうな顔してるわよ? サクラが心配なら素直に行動したら?」
 リンはぐっ、と息を呑んで、不機嫌そうに眉をしかめた。
 同時にきゅるるるる、とリンのお腹がなる。
「……リン」
「う、うるさいわね! いいでしょ、朝ごはん抜くぐらい!」
 美味しそうな料理見てお腹空いちゃったのは私のせいじゃないわ、とそっぽを向くリンの横顔は真っ赤だ。
 くすくす、と笑うとばつが悪そうに眉根にしわがよっていく。
「ほら、早く行かないとサクラも待ってるよ」
「そうね、じゃ、イリヤ。ばいばい」
 と玄関に戻っていく。

 いつの間にか居間には私とシロウの二人きり。
 よくよく考えてみるとなんだろうか、この状況は。
 ここ三年でも滅多になかった構図だ。
「なあ、イリヤ。どこか行こうか」
「それ朝も答えたけど。今日はなんとなく家から出たくないの」
「そっか。そりゃしかたない」
 シロウは一瞬だけ考え込んでお手上げらしく溜息を付いた。
「じゃあ何するんだ?」
 それは私も考えてなかった。何をすればいいのだろうか。私はシロウといるだけで十分なのだけど。
 ああ、そうだ。二人っきりで何もしないで程々に幸せになれることと言えば一つしかないじゃないか。
「おひるねしようよ、シロウ」
「おひるね?」
「そ、今日すごく天気いいんだし」
「天気がいいんならもっと……」
 何故かシロウが切羽詰った表情で何かを言おうとして、その後にすごく後悔した顔をする。
「シロウ?」
「ああ、ごめん。そうだな。おひるねしようか。すごくすごく気持ちいいぞ」
 そう言う表情は優しくて。
 なんだろうか。

 このふしぎな感じは。

「じゃあ、準備しなきゃ」
「そうだな、準備しよう!」
 ふたりして布団を押入れからひっぱりだしてくる。
 敷布団とタオルケットと枕。この三つがあればいい。
 あたたかいおひさまの差し込む縁側に、私たちはふとんをひいた。
「うっわぁ、気持ちよさそうだなぁ」
 シロウがそういってふとんの上に座る。
「うん、きっと気持ちいいよ」
 と、いいながら私はシロウの体に背をあずけるようにすわった。
 シロウの胸のあたたかさが私の背中につたわってくる。
「イリヤ……」
 なんかあわてているシロウの声が聞こえるけど私は気にしない。
「あはは、これってすごい安心するんだ。さあ! シロウ、ぎゅぅって私抱きしめてーっ」
 いつも似たようなことを言っているけど、シロウはぎゅぅって抱きしめてくれることはない。本当にそうしてほしいのに。
 なんてことを考えていた矢先に私の体はシロウの両手で抱きしめられた。
「シロウ!?」
「……イリヤ」
 そうやって名前をよばれると、なんか驚きよりもやっぱり、って気持ちのほうがつよかった。
 やっぱり、シロウにだきしめられるのは気持ちがいい。
「イリヤ。こんどさ、おはなみ行こうか。きれいだぞ」
「おはなみかぁ。うん。たのしそう」
 いちめんのサクラ。きょねんのことを思いだす。
 私はたのしくっておもわず微笑んでしまった。
「夏はうみだ。あんまりキレイなところには行けないけど」
 それでもかまわないのだ。きっとそこにはシロウとかタイガとか■■■とかリンとかが一緒にいる。
 それだけでたのしい。
「秋はイリヤのすんでるお城のまわりがキレイになるからな。もみじ狩りだ」
 まっかなはっぱ。きいろいはっぱ。キレイでキレイで。
 うんうん、とうなずく。
「冬はまた雪がつもるかも。そうしたらいっぱいあそぼうな」
 雪がキレイなだけじゃなくてたのしいものだ、ってことをはじめてしったのは三年前の冬。シロウと初めてあった冬。シロウとか■■とか■■■とであうきっかけ。

――なんだろう、いわかん、が――

 ふと、あたまの上から。あめがふっていた。
 ぽつぽつと。
 ぽつぽつと。
 まるでシロウのあたまからふってるみたい。
 そんなわけはないでしょう。だってあめは空からふってくる。
 ぽつぽつと。
 ぽつぽつと。
 それはとまらなくって。
 ふしぎでしたから私は上をむきます。そこにはシロウのあたまがありました。
「雪が、とけなければいいのにな」
 それはおかしいです。だって、雪は■けるのがあたりまえだから。
「■けるよ。あったかいとゆきは■けるの」
 それがあたりまえのこたえ。
「でも……」
 シ■ウの声がふるえている。
「春になると■は■けるの。あたりまえだもん」
 あたりまえだから。
 あたりまえに。
 ねむい。

 あったかいからだ。

 あったかくってやさしいからだ。

 はるはみんなやさしい。
「そんなの■だっ! なんで■けなきゃいけないんだよっ!」
 ■■ウの声がとおい。
 やさしい■■ウのこえ。
 ねむい。

「■じゃないよ。うん、ほんとうにどうしようもないこと」
 ■が■けるってのはどうしようもない。

 あったかいからです。

 あったかくってやさしいから。

 ■は■けてしまいます。

 はるだから。

 わたしがねむいのも。

 ■が■けてしまうのも。

「■だっ!」
 ■■■はないています。
 なくことはありません。あたりまえなのです。

 ねむい。
                      あたたかいはる。
 ねむい。

                  あたたかい■■■。
ねむい。
     ねむい。

                 あ■たかい■■。
ねむい。

        ねむい。

                ■■た■い■。
    ねむい。

               ねむ■た■■■。


  ねむい。


           ねむい。 ねむい■■。

 ねむい。




























               ねよう。






 そういえば、きのうまで■がふっていたとおもう。
 いつ■が■けてしまったのだろう。


 きっと はる だからだ。


 ■■■というなまえのモノが、■が■けてしまうように、おわってしまうのは。


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