「今回も始まりました、こんちくしょう。ロアの料理教室だ。転生先(友に裏切られて傷心旅行ともいう)から拉致られきました番外位のロアです。今回のゲストはインドが生んだカレーの魔人シエルさんです。どうぞ、お入りください!」
「誰が魔人ですかっ!! 呼ぶなら妖精と呼びなさい」
ドスゥゥ!!
声と共にばかでかい剣が降ってきてロアに突き刺さる。
「グガァ」
スタッ!
カメラに剣から飛び降りたシエルが映る。そして、すぐ側で倒れているロアを蹴り起こす。
「いつまで寝てるんです、さっさと起きて司会進行しなさい」
「シ、シエルさん。いきなりこれはひどいんじゃないでしょうか?」
「死なないようにただの鉄塊を使ったんですから、どうってことないでしょう」
「それにしてももっと手加減してもいいじゃないですか」
「私があなたに手加減なんかするわけないでしょう。ついつい殺さないようにしただけです。序盤から司会がいなくなるのはテレビ的に困るでしょう?」
「それだけの理由で……」
「何か問題でも?」
「いえ、ありません」
この時ロアはこれが終わったら自分の人権を探しに行こうと、かたく心に決めたという。
「では、今回作る料理は……」
ロアに皆まで言わせることなく、
「カレーに決まっているでしょう!!」
「言い切ったよ」
「それではおいしいカレーの作り方です。始めはスパイスの準備から」
ロアを無視しシエルは早速作り始める。
途中で様々なうんちくが入り数時間が経過する。
当然ながら不必要なところはカットされた。
「はい、これでできあがりです。それでは試食の時間です」
テーブルの上においしそうなカレーが2つのせられる。
「おおー! まともな料理だ」
ロアはそれを見ただけで感動する。
「テレビの前の皆さん!! 私はやっとまともな料理を食べることができます」
「ごちゃごちゃ言ってないで食べなさい」
「いきます……」
少し緊張しロアはスプーンを口の中にはこぶ。
その表情に驚きが広がる。
「あっうまい」
「あたりまえです。だれが作ったと思ってるんですか」
「てっきり、私を滅ぼすために滅茶苦茶なカレーを作ると思っていたんだが……」
「そんなカレーに失礼なことするわけないでしょう。それに最後の晩餐くらいはおいしい思いをしてもいいでしょうしね」
ロアの喜びの表情にさっと影がはしる。
「え?」
「そろそろ番組も終わりに近づいてきたところですし、司会がいなくなっても問題なしですね」
「ちょっと待て!」
「待ちません! 来なさいセブン!!」
虚空から第七聖典が現れる。
「何で来るんだっ!?」
「大切に扱えばきちんと応えてくれるのです」
「説得力ないぞ」
その言葉には答えず、シエルはゼロ距離で発射準備をする。
「こ、この距離で使うとお前にも被害がくるだろ!」
「大丈夫です。セブンが守ってくれますから」
「そうなのか?」
『……』
「ま・も・り・ま・す・よ・ね」
一言一言くぎられる言葉に圧力が込められている。
『もももも、もちろんです! マスター。全力で守らせていただきます!』
「せめてもの情けです。カウントを取ってあげましょう。3」
「短いぃ! 何もする暇がない!」
「2、1」
「しかもはやっ!」
シエルは躊躇なく引き金を引く。
「ファイア!!!」
眩しい閃光がおさまった後、カメラに映っているの微笑んでいるシエルだけだった。
それでもだれも気にせず番組終了間近の合図をだす。
「今回のお料理教室はこのへんでお別れです。次回のゲストは……アインナッシュを呼びに行った人が帰ってこない?しかもその次のゲストを呼びに行った人も迷路で迷ってる?ええと、次回のゲストは未定です。番組再開の予定はあるでしょう、あの距離でかわしやがりましたからね。ロアの遺言は『いつかお前らに転生してやる』だそうです。何むりなこといってるんでしょうかねぇ。ではさよーならー」
にこやかに手を振るシエルを映しながらカメラはさがっていく。しかし今回はロアのかけらすら映ることはなかった。