戦いの日々から解放された少女。
その寝顔はただただ穏やかで、これこそがこの少女の本当の姿だと、一片の偽りもなく思う。
無邪気で、無垢で、それ故に無慈悲で残酷な魔術師である彼女の本当の姿は、こんなにも普通の女の子なのだ。
この少女が、何時までもこのままで在ることが出来れば、と、そう願う。
それがけして叶わぬ幻想と知りつつ、願わずにはいられない。
「なあ」
何故、という想いを押し止めることが出来ない。
「あんた、イリヤとは姉妹なんだよな」
少女の眠る布団の傍らに座り、じっと少女を見つめ続ける女性に訊ねる。
「イリヤ、姉妹」
その一刹那すら惜しいというのか、女性は少女から視線を離すことなく、ただ、言葉だけで簡潔に答えた。
「そうか」
空には蒼い蒼い月、輝きの下で彼はただ涙する。
「イリヤ」
失われる少女に、ただ、涙する。
「イリヤ」
止まらぬ時に、涙する。
「イリヤ!!」
「大人になんかなっちゃだめだ!!!」
空には蒼い蒼い月、輝きの下で彼はただ涙する。