坂の上のお屋敷の使用人(になりたて)


メッセージ一覧

1: lock (2004/03/11 01:01:26)


――――――――――――――――

「はい、これがこの屋敷の地図……ってのも変ですけど、見取り図です」
「ああ、有り難うございます」
 渡された紙をセイバーと二人して覗き込む。確かに、この広さなら見取り図と言うより地図の方が正しいかもしれない。
 おお、大浴場なんてのもあるぞ。
「まだ秋葉さまと志貴さんが帰ってくるには時間が有りますし、今からこの屋敷を案内「姉さん」……何? 翡翠ちゃん」
 翡翠さんがおもむろに口を開いた。
「シーツの洗濯がまだ終わっていません」
「――あは、忘れてました」
 可愛らしく舌を出して琥珀さんが笑う。
「うーん、みんなの分のシーツは二人で洗わなくちゃいけませんし、衛宮さんたちにはそれが終わるまでここで――」
「あ、いえ、見取り図があるなら俺とセイバーだけでも結構です」
 俺たちも洗濯を手伝う、という手もあるが、さすがにいきなりでは勝手が違うだろう。二人の足を引っ張ってしまうかもしれない。二人が洗濯をしている間に俺とセイバーが軽く見回って来る方が時間的にも効率が良さそうだ。
 立ち上がって、「セイバーもそれで良いか?」と聞く。
「はい、かまいません」とセイバーも頷いた。
「立ち入っちゃいけないところとかはありますか?」
「ええと、私たちの部屋の扉にはプレートが付いてますし、あとは鍵の掛かった部屋に入らなければ……」
「はい、解りました」
「でも……よろしいんですか?」
「ええ、お二人を洗濯の後に歩き回らせたくありませんし」
「あは、紳士ですねー、衛宮さん。それじゃあ」
 ちょっと屈んで下さい、と琥珀さんは言う。
「……? はい」
 俺が言うとおりにすると、
 
 がぽっ。

 頭にヘルメットを被せられた。
「きゃっ」
 見ると、セイバーにも翡翠さんからヘルメットを被せられている。
 ヘッドランプ付だ。
 むー、とぶかぶかなのを手で支える仕草がちょっと萌え。
 じゃなくて。
「あの、これは……」
「はい、これも」
 ディパックとコンパス(文房具じゃなくて方位磁石だ)を渡された。
 どこに持ってたんだこの人は。
「その中には非常食とー。寝袋とー。発信機とー。懐中電灯とー。燃料とー。あと……」
「あの、琥珀さん……?」
「あ、心配なさらずとも寝袋は一つだけです。二人で身体を暖め合ってください」
 私って気が利きますねー、と実に朗らかにそう言う。
 間違いない。
 この人はあくまの眷属だ。
 日本に帰ってきてまであくまの相手をせにゃならんのか。
「大丈夫ですよー。みんな『もしも』のための物です。天井から下がってる紐は迂闊に引っ張らないで下さいねー」
 地下王国には発信機の電波も届きませんからー、と実に活き活きと楽しそうに言われた。
「あと壁に体重を掛けるのもお勧めとは言えませんねー。くるんとひっくり返ってどこに行くか解りませんよー」
 忍者屋敷か、ここは。
「――ふざけ過ぎです、姉さん」
 見かねたのか、翡翠さんがぴしゃりと言う。
「ひ、翡翠ちゃん……」
 涙目の姉を無視して翡翠さんは頭を下げた。
「済みません、姉さんは大げさなのです。今は地下に大量のメカ……」嫌そうに顔をしかめて「――ロボットがございますので、昔のように二週間も消息を絶つ、という事は無いかと。せいぜい一日、二日でしょう」
 昔はあったのか。
 メカって何だ。
 一日、二日は『せいぜい』か。
「もし迷って地下にたどりついても、あそこの所々に散らばっている白骨は気にしないで下さい」
 ……妹の方も突っ込みどころ満載だった。侮れないぜ、遠野家。
 使用人でこれならば、主人たちはどんなエキセントリックな方たちなのだろうか。
「え、えーと、やっぱり洗濯が終わってからにしようかな。な、なあ?セイバー」
 俺も命は惜しい。
「…………」
「セイバー?」
 琥珀さんの『二人で身体を暖め合って〜』のあたりで真っ赤になっていたセイバーが黙り込んでいる。
「――行きましょう。シロウ」
「あ?」
「行くのです」
 俺の服の袖を掴んで歩き出した。直接手を握らないのがセイバーらしい。
 ではなく。
「お、おいセイバー! 今の話聞いてなかったのか? やばいって!」
「壁には手を付いて歩きましょう。紐があれば引くべきです!」
「え!?」
 いったいどうしたというのか。何やら顔に笑みを貼り付けて俺を引っ張る。
 怖い。
「そして一晩二人で一つの寝袋を……!」
「それが狙いかーーーーッ!」
「リンが居ない今が出し抜くチャンスなのです!」
「マスターを出し抜くサーヴァントがいてどうする!」
「いたではないですか!」
 そう言われれば、マスターを殺した奴とか結構……。
 じゃない!
「セイバー……。男は女以上にムードを大事にするもんなんだよ、だから、あの、ほら、その、さ」
「地下に迷う男女二人!不安を忘れようとお互いの身体を求め合う……十分にムーディーではないですかッ!」
 『ムーディー』は死語だヨー。どこで覚えたのかナー。元マスターとしてヒジョーに気になるゾー。
 振り返ると、琥珀さんは凄い良い笑顔でひらひらとハンカチを振り、翡翠さんは『良いのかな』とでも言いたげな顔つきで俺たちを見送っていた。
 良くないんですーーーーッ!!

《続けちゃう?》
―――――――――――――――――

 あれ、ゼルレッチの爆弾とか、秋葉とか志貴とかアルクェイドはどうした?
 いやーん(爆殺)
 そのうえセイバー壊しちゃいました!
 ろくにプロットも立てずに書き出すこの指がいかんのですよ!(万引き犯ぽく)
 ごめんなさい、今、かなりテンパってます。
 次回は……、いや、やめときます。どうせ予告通りにいかないんだし。
 もっとこうしたら良いよー、とかご指導くださると大変有り難いです。
 初心者ですし(いいかげんこれも苦しいな……)。
 それでは。」



記事一覧へ戻る(I)