聖杯はきみへの・・・10 傾:シリアス


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1: non (2004/03/11 00:16:47)

聖杯はきみへの・・・10







一度は撃退した相手だというのに足がすくむ。

あの化け物から逃げろ、と人間の本能が呼びかけてくる。




あの左腕はおそらく宝具なんて生易しいものじゃない。

英霊たちの宝具を投影してきた俺にも

あんな物は見たことがない。

それにあの腕からは人のにおいがする。



「カカカ、どうやら理解したようじゃな。」



「人を襲わせたのはあんたなのか?」



「腕の再生には手持ちの素材が足りなくての、
人を食らわせるのに令呪まで使わされるとは
わしでも予想できんかったが。」


これ以上何か聞くことがあるだろうか?
目の前には人を食えと命令するマスターがいて、
それを実行したサーヴァントがいる。



何も言わずに投影を始める。

ランサーはゲイボルクを構え、アーチャーは双剣を手に取る。



恐れなど消えた。

今すべきことは、目の前の敵の殲滅以外にない。


「無駄なあがきじゃ。」










「なぜ斬らなかったのですか?」

その言葉には疑問と警戒が含まれている。

前回のマスターに剣を向けるのはセイバーにとっては不本意であろうとの予想。

そして未だにまったくわからない今回のマスターの正体。



「・・・・・」



今までで見たなかで一番セイバーの表情が揺らいだとライダーは感じた。

そして遠くで戦いの始まった気配、

襲われている。



「今から寺に襲撃します。」


有無を言わさない口調でセイバーが言い放った。

きっと彼女があの元マスターとまた一緒になれば、

私のマスターの安全は保証されるだろう



「・・・わかりました、行きましょう。」






幾度となく攻撃を繰り返してもまったく効いている様子はない。

あの左腕が薙がれるたびにすさまじい衝撃があたりを覆う。

きっと直撃すれば粉々になる。



ランサーのゲイボルクは真名を発して放ったにもかかわらず、
左腕に触れた瞬間に効力を失ってしまった。

アーチャーもかろうじて持ちこたえているが、一撃ごとに新たな剣製を
強いられては、そんなに長くはもたない。



それまでにあの左腕を超える何かを生み出さなければならない。


剣製の速度が限界に達したのか一瞬アーチャーの投影が遅れる。

バーサーカーがその機を逃すはずもなく、

アーチャーの体に、

バーサーカーの左拳が叩きつけられた。

崩れ落ちるアーチャー。



バーサーカーが次に向かったのは俺、

見えたには左腕を振りかぶるバーサーカー。

間に合わな・・・



聞こえたのは剣の響く音。

俺の前には美しい金髪の少女。


彼女の剣を取り巻いていた不可視の風は消え去り、

刀身を覗かせる。

それはたしかにエクスカリバーだった。

だがどこかに違和感を感じる。



「セイバー?」


「・・・・・」


急な乱入者に驚いていたバーサーカーが再び左手を振りかぶる。



「偽・螺旋剣」


その背中を血だらけのアーチャーが射抜く。


止まらないバーサーカー。



「壊れた幻想」


バーサーカーの存在を否定せんとばかりに無数の剣が


アーチャーから打ち出される。


前のめりに倒れるバーサーカー。




それを見届けてアーチャーが剣の放出をとめた。

まっすぐセイバーを見据えて階段を上がるアーチャー。

かつかつとアーチャーの靴の音だけが響く。





そしてアーチャーはいきなり、そのセイバーを抱きしめた。

門の中にいた遠坂が、この光景にすごく驚いているのが見える。


「え?えっと、その、私はサーヴァントで、あの。」


「やっと会えたね、セイバー。」


その口調は誰かにすごく似ていた。


「シロウ?」


「剣を見てすぐわかった、あの時のセイバーだってことが。」


それを聞いたセイバーが目の端に涙をためながら、


「シロウ!」


なんていいながらあいつの胸に顔をうずめた、見てておもしろくない。すごく。



「きみにどうしてももう一度会いたかった。
望んじゃいけないことだってわかってたのにね。」


やさしくセイバーの語りかけるアーチャー。




もういい。






ライダーとランサーの方は、


「あんた、めちゃくちゃ俺の好みだわ、名前教えてくれない?」


「サーヴァントが自分の名前を名乗るわけがないでしょう!真面目に戦いなさい!」


意地になったライダーをランサーが口説きながら戦っているみたいだ。
ライダーってあんなキャラだったっけ?






バーサーカーに刺さっていた無数の剣が消えた。

全員がバーサーカーから距離を取る。


「その程度でバーサーカーを倒したと思われても困るのでな。」



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前回あとがき書き忘れました。10話です。
いろいろ書きたいことあったんですが表現力不足ですなぁ。
最初はアサシン復活させてもう一回門番させようと思ってたんですが、
ゲイボルクでやられたあともう一度出てくるのも不自然だな、でカット。
セイバーとアーチャーの過去を詳しく語ろうとも思いましたが、
ペースといいますか作風?の関係上、カット(ただ書けないだけ)
アーチャーとセイバーが体験した聖杯戦争とは?
作中で士郎君も言ってます、「もういい」。



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