その身は、剣で出来た聖剣の鞘 第一部その5 Mアーチャー


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1: kouji (2004/03/09 17:45:48)

12セイバー視点

シロウの救出は困難を極めるのは予想出来た
何しろ最強の敵バーサーカーとそのマスターの本陣である
加えてこちらは武装すら出来ぬ身の上であり
リンとアーチャーの助力が無ければたつこともおぼつかない
そうなればもはや主の盾になる他あるまい

覚悟を決めて、何とかバーサーカーとマスターの不在時に侵入し、
シロウを救出した
ここまでは良かった

だが…………

出口へとようやくたどりついた私たちを待っていたのは、
鉛色の巨人を従えた白の魔術師

イリヤスフィール=フォン=アインツベルン

出口はこれで防がれた
アーチャー一人ではリンを護るのが精一杯だろう
私がシロウの盾になったところでたかが知れている

だと言うのに

「アーチャー聞こえる?
―――少しでいいわ、一人でアイツの足を止めて」

弓兵の主は自身のサーヴァントにそう命じた

「正気ですかリン? アーチャー一人ではバーサーカーにかなわない……!」

「私達はその隙に逃げる。アーチャーには逃げ切る時間を稼いでもらうわ」

私の意見を無視し、冷静に指示を続けるリン

「賢明だ、凛たちが先に逃げてくれれば私も逃げられる
単独行動は弓兵の得意分野だからな」

言い切るとアーチャーは私たちの前に出る

相手は最高クラスの英霊ヘラクレス
無銘の英霊がかなう相手ではない

「…………アーチャー、私……」

顔を伏せリンが何かを言いかける

「ところで凛、ひとついいか?」

それを、いつもとなんら変わりない口調でアーチャーがさえぎった

「いいわ、なに?」

「ああ、時間を稼ぐのはいいが―――」

少しだけ間を置いて、アーチャーは

「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

そう、余りにも無謀なことを口にした

余りの発言にイリヤスフィールさえ呆然となった

「えぇ、遠慮はいらないわ、
ガツンと痛い目にあわせてやって、アーチャー」

それで開き直ったのか、リンもいつもの調子で言い返す

「……出来るのですか?」

「なに、これでも一度、生前にアイツとはやりあってる、
少なくとも六度は殺せる自信はある」

私の問いにアーチャーは静かに言い切った

「だがその先はわからん、後はお前たちしだいだな」

不可解なことを言う、六度死んだ程度では倒せないと言うことだろうか?

「衛宮士郎」

バーサーカーに向かいながら彼は私の主に声をかけた

「いいか、お前は戦うものではなく、生み出すものに過ぎん
余分なことなど考えるな、お前に出来ることなど一つだけだろう
ならばその一つを極めてみろ」

それは忠告

「忘れるな、イメージするのは常に最強の自分だ、
外敵などいらぬ、お前にとって戦う相手とは、自身のイメージに他ならない」

そう言うと
その両手に短剣を握り、弓兵は、狂人へと向かっていった


13

駆けていく主たちの足音を後ろに聞きつつバーサーカーへと走り出す
その手には双剣、それを持って、なぎ払われる巨人の剣をかわし、凌ぎ、避ける

やがて英霊の耳にすら彼女らの音が聞こえなくなった頃

「さて、それでは始めようか」

まるでここまでが準備運動であるかのようにアーチャーは呟いた

「手始めだ、これがかわせるか?」

“投影、開始(トレース、オン)”

その言葉と供にその手に矢を番えた弓を構える

否、そこにあるのは剣であった

九つの釘のような剣が弓に番えられている

「……受けろ、挨拶代わりだ  
『射殺す百頭(ナインライブズ)』!!」

九つの刃は射手の意に従いその敵を射抜かんとする
だが、相手も只者ではない

飛燕を超えてくるそれを

一つをなぎ払い

二つを叩き落し

ついで三本を打ち払った

それでもなお、かわしきれなかった数本がその身に突き刺さる

だがその程度は狂人にとってたいした意味は無い
この程度では彼を傷つけるには足りない

「なんで、なんでアンタがヘラクレスの弓を使えるのよ」

驚いたのは感情の消された狂人ではなく、その主であった

『射殺す百頭(ナインライブズ)』

幾度首を落とそうと蘇生する九頭の大蛇をしとめた、
ヘラクレスの宝具たる弓の名であり

かの英雄の最強の技である

「なに、ただあやかっただけだ、では次に行くぞ」

もう一度、弓を構える

「我が骨子は捻れ狂う」

螺旋の剣をその弓に番え、放つ

「偽螺旋剣(カラドボルグ)!!」

轟音と供に解き放たれたそれは、
まっすぐに巨人の胸を打ち抜いた


14

アレハナンダ

                                  「ごめんね、士郎」
       
オレハタダ   
      
                「桜、藤ねぇは?」
                              アレハダレダ

     「違う、そうじゃない」

                 アレハせいばージャナイ   

「じゃあ何だよ? 全て無駄だったって言うのか?」

      ミトメラレナイ

                「先輩だって会いたかったんでしょう?」
       
  トオサカ、シヌナ

    「誰もいない、セイバーも、遠坂も藤ねぇも、一成も美綴も、誰も」

                                        いりやダメダ

                 「こんな再会は望んでない!!」

        サクラキミハ

               「まだ残ってたのか」

                                クロイキシ、クロイヒカリ

「誓約する、我が死後を預けよう」

      ココニヒトリノムイミナエイユウガウマレタ

                   コレハタダソレダケノコト


15

「これで五つ」

満身創痍でアーチャーが宣言した
相対する巨人も同様、
いや、むしろ傷の深さで言えば巨人の方が勝るであろう

それはイリヤからすれば信じられないことだった

自分のサーヴァントは最強であり、目の前の弓兵は真名すら判らぬ
格下に過ぎぬ
慢心が無かったと言えば嘘だろうが、このような虫けらが
神を討つなど誰が想像できようか

ただの保険のはずであった宝具『十二の試練(ゴッドハンド)』
その十二個の命の半分をここで使うなどどうして考えられようか

「さて、宣言してしまったのでな、少なくても後一つはもらっていくぞ」

傷ついた体で、それでも両足で地面を踏みしめ弓兵が言う

その時

ザワリ

           ザワリ
                                ザワリ

『なにか』の影が現れた

「ちッ、こんなときに」

舌打ち、バーサーカーを無視してそちらへと向き直る

「バーサーカー、イリヤをつれて逃げろ!!」

表情が険しくなる
苦渋に満ちた顔で、過去を思い出すように

「何よいきなり!!」

イリヤとてそれの危険度は解る
わからないのは弓兵の態度の方だ

「いいから俺の言うことを聞け!」

その表情は先ほどとは別人で、
まるであの少年のようだった

それについて、イリヤが考える前に、バーサーカーはイリヤを抱きかかえて
走り出した

理性が無いゆえの本能がそうさせたのだろう

バーサーカーは逃げた
逃げてくれた

あの少女の忠実な守護者として彼以上の存在はいないだろうが、
それも、凛達にとっては脅威でしかない

「さて、アレを始末できるかどうかはもはや私の気にするところではないな、
それに、これでは逃げ場も無い、」

次第に囲まれていく中で呟き、ふと彼女たちに思いをはせる

「―――遠坂、達者で、
…………セイバー、君に会えてよかった」

巨人と少女を見送ると、そう呟いて彼は影の中へと消えていった



あとがき
影が出た

今回はアーチャーが中心の話、途中の妙な文章形態の部分は
断片から推測してくれってことで

さぁて、次はバーサーカー戦だ、
原作がすごすぎてどうしたらいいかまるで解らんが


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