「はい!ということで今日も始まりました。わたくしロアのお料理教室。
放送が始まりはや3回!いまだにまともな料理を食べておりません。
しかし、今回は期待していいでしょう。『食材は持参する』といったところからも期待が高まります。
27祖が1人にして、わたしの心の友カオスさん!どうぞお入りください」
奥の扉が開きコート1枚の黒い男が堂々と入ってくる。だが持参すると言っていた食材はどこにもなく手ぶらでカメラの前に立つ。
「あのぉカオスさん?」
「なんだ?我が友ロアよ」
「持参すると言っていた食材はどこに?もしかして忘れましたか?」
「ふむ、そのことか。心配するなちゃんと持ってきている。ただな、ここまで持ってくるのに邪魔になってな……」
続けて何か言おうとするカオスを遮ってロアがしゃべりだす。
「なんだそうでしたか。今回食べることができないのかと思いましたよ。
前々回メイド、前回お嬢様と続いて死にかけましたからね。楽しみにしてたんですよ。
それで食材はどこに?」
「少し待つがいい、すぐにとりだす」
「は?とりだす?」
カオスはコートの前を広げ黒い、しかし確かに食材の形をした何かを出す。
「ふむ、少し混沌に染まったか」
「いや少しどころじゃ……。なぜ体内に?」
ロアは目の前の何かを見てつぶやく。
「持ち運びに便利だからだ。さて食材もそろったから始めようか」
「プロデューサー!!今回もたべなきゃいけませんか!!」
ロアの魂の叫びに「もちろん」と返事が返ってくる。
そんなロアの様子を気にせずカオスは作業を始める。
カオスの料理は順調に進む。技術は一流、食材もこの腕ならば一流のものを用意したのだろうと簡単に予測できる。
しかし、いまや食材は“元”一流になってしまっている。
いくら一流の腕をしていようがまともなものを作ることは不可能。
そんな様子をロアは悲しそうに見つめつづけていた。
「できたぞ。さあ試食だ」
出来上がった料理はあたりまえだが黒い。
盛り付けが完璧なのと合わさって異様なものとなっている。
カオスとロアはイスに座る。カオスは料理の出来に満足し、ロアは料理に恐怖している。
タタリがこの料理に実現化するんじゃないか?というくらいに。
2人は同時に食べ始める。
「我ながら上手くできているな。ただ欠点は自分を食しても意味はないことだな」
これがカオスの感想だった。一方ロアはというと、
「…………」
返事がない屍のようだ。
「何だロアよ。あまりの美味しさに転生してしまったのか。
次の転生先は用意していたのか?」
番組の終了合図が送られるも司会は転生してしまっている。
カオスは仕方ないなというふうにしゃべりだす。
「これで今回の料理教室は終わりだ。
次回のゲストは代行者らしい。番組再開は転生したロアがみつかりしだいだそうだ。
今回の料理名は“新鮮魚の地中海仕立て混沌風”だ。
材料は……手に入れたければ私を倒すことだ。珍しい生物との交換もしているがな」
カオスを中心に映してカメラは遠ざかっていく。
CMにかわる瞬間倒れているロアがちらりと映った。