凛に連れられて街にでる。
冬木市、深山町、新都、大雑把にわけると街はこんな感じだと説明を受けた。
無論そんなことは知っているが。歩きながら色々説明してくれる彼女の姿は
遠い昔、俺に魔術の初歩の話をしてくれた時の姿と重なった。
凛は先生に向いているんじゃないかと考えながら、彼女の歩幅に合わせて歩く。
―――ふと、視線を感じたが、敵意が無いので無視する事にする。
あと、最近引越しってきた、魔術師が気にくわないとか。
そして、しばらく歩いてたらその視線は急に感じられなくなった。
新都と深山町を繋げる大橋を渡って新都に向かう。そして、あの公園に着いた。
ここは、俺の、衛宮士郎にとっての一つの終わりの土地だ。
幼き日の衛宮士郎はここで、空っぽになったのだから。
「ここが新都の公園よ。これで主立った所は歩いてまわった訳だけど感想は?」
凛からそう問いかけられる。
「そうだな、広いが・・・凄く寂しい場所だな」
そう、ここは人気がない。これほど広くて整地された公園なら
平日でも子供の遊び場になっているハズだ。・・・あの火事さえなければ。
「やっぱりそう見える?ま、ここはちょっとした曰くがあるから」
そう言って凛はあの火事の事を説明してくれる。
ここは怨念で満ちている。この怨念が、自分を責めているようで、胸が痛い。
「気づいたみたいね。そうよ、ここが前回の聖杯戦争決着の地」
――――何だって―――頭が真っ白になる、凛が何か言ってるがもう聞こえない。
ここが、前回の聖杯戦争決着の地?あの火事は聖杯戦争によってもたらされたのか。
だから、親父は俺を、誰かを救おうとしたのか?親父が火事を起こしたから?
ダメだ―――考えがまとまらない。だが、ただ一つはっきりと言えるのは、
今回の聖杯戦争では、こんな事は絶対に起こさせないと言う事だけだ。
「セイバー、どうかしたの?顔色が悪いけど・・・」
凛が心配そうに顔を覗き込んでくる、ああ、どうかしたさ。
だがそんなことを言えるわけがない、なんとかごまかさないと。
「いや、サーヴァントは霊体だ、同じ思念体には敏感でね。
この怨念の濃さは、俺らから見れば固有結界のそれに近い。故に、
少々取り乱しただけさ、体調は最高のマスターの助けもあって万全だ」
そう、この怨念の在り方は妄執に近い。それを表すかのように、
ここの空気は汚れ、無念の念に満ちてる。それは心象世界で
現実を侵食する固有結界に近いと言えば近い。
と、凛が何やら考え込んでいるが。
「凛?どうした、考え事か?」
「え・・・?ううん、ちょっと意外だったら。固有結界なんて
セイバーなのに珍しい言葉を知ってるなって」
確かに、キャスターのサーヴァント以外のクラスでは魔術とは縁が
無いように想像できるだろう。けど、自分が無知だと思われているようで
ムっとして、つい拗ねた声で返事をしてしまう。
「なんだ、俺が知ってたらおかしいのか?」
そりゃあ凛には英霊になっても適わないとこはあるが。
知識の量は以前とは比べ物にならない程増えているぞ。
・・・・・・未だに魔術は強化と投影と基礎を少ししかできないが。
いや、本当は固有結界を張ることが衛宮士郎に許された唯一の魔術だ。
投影も強化もその副産物なんだが・・・
「だってそうじゃない。固有結界は魔術師にっとては奥義にして禁忌
だもの、セイバーである貴方が知っているなんて筋違いよ」
視線で「でしょ?」と視線で問いかけてくる。
確かにサーヴァントでは魔術に詳しいのはキャスターくらいだろう。
「凛。仮にもこの身は英霊と呼ばれる存在だ。それくらいは知っているし、
セイバーは剣、アーチャーは弓しか使えないと決め付けると痛い目を見るぞ」
現にアルトリアの風王結界は魔術だった。何事も例外は存在する。
凛は基本的に優秀だから判断を速く下しすぎであり、他人を過小評価しやすい。
それでは機転が利かない。故に不意打ちの事態に弱い。
あと、思い込みが激しくて、集中したり怒ると周りが見えなくなる。
ここぞという時にミスをするのはそれが原因だろう。
長年、付き添ってきて、発見した凛の弱点だ。
「わ、わかったわよ。確かに今のは軽率な発言だったわ」
たぶんわかってないんだろうなあ、とか思いつつも口には出さない。
口にだしたら令呪で口を塞がれそうだ。以前の戦争で1つ目の令呪を
何に使用したか聞いたら、赤い騎士を絶対服従にしようとしたそうだし。
―――――サ−ヴァントの気配!?
「凛、近くにサーヴァントがいる、気を引き締めろ」
そう凛に言って、周囲に意識を伸ばす。
「奇遇ね、私も誰かに見れてるって感じたところ。
令呪が痛むからマスターの可能性が高いと思うけど」
俺には視線は感じられない、するとマスターも一緒か
おそらくここで仕掛けてくる気だろう。
まだ7人揃っていないが、始めようと思えば戦いは始められる。
どうやら前哨戦でもやる気のようだな。
グラムを投影して、襲撃に備える。
「なるほど、あなたのサーヴァントはセイバーですか」
なんて、女性の声が響いた瞬間、何らかの結界が公園を覆った。
思わず舌打ちする。 隣を見ると凛も顔をゆがめ舌打ちしてる。
凛までもが気づかない程の結界を張る相手か。
昔、凛から他人に感知されるような結界は三流で
仕掛けるまで隠し通しておくのが一流の魔術師と聞いたが
凛までも出し抜くとは間違いなく相手は一流の魔術師だ。
まさか人気はないとはいえ、昼間から襲ってくるのは予想外だ。
「結界を張りました、これで人目を気にすることなく戦えますよ、ランサー」
「やれやれ、ようやくか。だが、最初に掛かった奴が
セイバーだったとはツイてる。やっぱあんたはいい女だぜ」
ショートカットの女性と、青い騎士。ランサーが俺たちの前に姿を晒した。
――――ランサーのマスターはあのエセ神父だったはずだが、
俺が体験した世界とは違う世界なのか?
いや、考えるのは後だ、今は目の前の敵に集中しないと。
「ランサーと、そのマスターか。こんな所で何のようだ?」
凛を庇うようにしながら前に立ちながら、グラムを持つ手に力を込める。
距離はおよそ20メートル、あの男なら一蹴で詰められる間合いだ。
「はっ!ここまでやっておきながら、挨拶しに来たのでも思うのかテメエは!」
そう言い放ち、ランサーが高速で間合いを詰めてくる。
ランサーが繰り出す槍をグラムで弾く。
その突きは休むことなく雨のように繰り出される。
やばい、正直予想以上に強い。今の俺ならなんとかなると思ったが、
まだ、ランサーは本気をだしていない。本気ではないのにこの突きだ、
本気の槍を止められるかどうか正直わからない。
槍をかい潜り間合いを詰めようにも、ある程度近寄るとランサーが後退するため
同じ事の繰り返しになる。だが、絶対に詰める。
それ以外に、衛宮士郎・・・、いや英霊エミヤの勝機は無いからだ。
「さて、私達も始めましょうか」
ランサーのマスターが凛を目指し駆けてくる。
凛は戦いが始まってから一歩も動いていない。
「凛、しっかりしろ!来るぞ」
ランサーの槍を受けながら凛に叫ぶ。だが俺にできることは
それくらいだ、ランサーとの戦い、少しでも気を抜いたら
あっという間に蜂の巣だ。
「どうだ?俺のマスターのが良い女だろ!」
ランサーが渾身の一撃を繰り出しながら、そんな事を言ってくる。
「はっ、どうやらオマエは女性を見る目が無さそうだな!」
その槍を、奴が共に放った言葉と同時に渾身の力で弾く。
ランサーのマスターがどんな女性かは知らないが今の一言は容認できない。
大体おまえ凛の事気に入ってただろうが――!とか心の中で叫んだりもする。
「その言葉、そっくりそのままオマエに返すぜ!」
ランサーの槍がさらに速度を上げる。
それはもう、雨等という甘いものではなく、降り注ぐ落雷だ。
だが、ここで押し負けたらあの言葉を認める事になる。
ならこっちも全力だ、残りの魔力を全て身体能力強化に注ぎ込む。
そして、全力を持って、落雷を迎撃する。
一旦、ランサーが大きく後退する。それに合わせこちらも後退して様子を見る。
一瞬だけ視線を凛の方へ向ける、――――彼女は明らかに押されていた。
が、今ここで凛の元へ駆けつければ死ぬのは彼女と自分。
衝動を押し殺し、再びランサーへ目を向ける。
「やるじゃねえか、流石はセイバーのサーヴァントだ。
まあ、女を見る目が無いって返したのも素直に撤回しよう。
あの、お嬢ちゃんも俺のマスターが相手でまだ生きているとは」
そう言ってランサーは槍を構え直し、身体を沈める。
あの構えは知っている。ゲイ・ボルク。突けば必ず心臓を貫く呪いの槍。
英霊クーフーリンの宝具。あれを使うときの構えだ。
「だがこれは受けきれるか?我が必殺の一撃を!!」
やばい、――アレは死ぬ。俺にはあの魔槍の呪いから逃れる術は無い。
っちい、ここらが引き際か、凛は怒るだろうがなんとかして撤退しなければ。
腕力を強化していた魔力を全て脚へまわす。そして、全力で凛に向かって跳躍する。
ランサーも追ってくるが、速度は僅かに俺より速いが、立ち位置の
関係で追いつかれることは無い。
満身創痍の凛を抱え、さらに跳躍して、公園の端へ着地する。
「無駄です、その結界はあなた達が公園外に行くことを許さない。
いや、サーヴァントであるあなただけなら突破できますが、
その場合マスターを置き去りにする事になります。それは
騎士道に反するでしょう?セイバー。あなた達は逃げられない」
ランサーと合流したランサーのマスターがそう宣言する。
ちい、確かに俺一人なら突破できるが、凛を置いては行けない。
それにこのクラスの結界を力ずくで破るには時間が掛かる。
その間にランサーに刺されて終わりだ。
もう、形振りかまっちゃいられないな。投影を――使うしかない。
「なんだ、もう戦ってるの?開戦まで待てないなんて、わたしより
ずっと年上のなのに、二人共レディのたしなみってものがないんだから」
そこには、心底呆れたように肩をすくめる。
あの時助けられなかった少女と少女を守るように立つ巨人が居た。
あとがきの様なもの。
戦闘シーンって上手く書けないものだなーと思いながら、バゼッタ嬢登場。
個人的なイメージはシオン。エリートですしなあ。ランサーとかキャラしっかり
書き分けれてる自信もないっす。話も全然進まないですし。しかもイリヤ登場。
バーサーカーはサーヴァ士郎(何か言いやすい名前ないかな)が本気でもやはり
勝てない程強いおっさんですし。ちなみにランサーと共闘するのは不明。
このまま三つ巴の乱戦もおもしろいかも。いや、メリットはないんですが。
実は今回の話も削られたシーンがあって、サーヴァ士郎君が商店街で一時間くらい
食材とにらめっこする話がありましたがカット、考えたらサーヴァ士郎
金持ってないしw いつか誤字脱字の修正と共に付け加えようかな等と考えています。
どうでもいいですが、たまに無性にギャグに走りたくなります。
本編でほとんど無いんで。あと誤字脱字等を指摘してくれたらうれしいです。
書き忘れた事があったんで、ちょいと補足を。
今回バゼットが展開した結界ですが、自分を含め中にいるものを外に出さない
ようにする結界です(サーヴァントは規格外なのででれますが)
バゼットさんはマテリアルによるとバリバリの武闘派で、封印指定の
魔術師を捕らえるそうなので、逃がさないための結界を張れるかなあと。
ちなみに得意な魔術は身体能力強化、および結界術により守り。
攻守ともにバランスがとれている、腕のいい魔術師である。
ちなみにバゼットさんの生まれのマクレミッツ家が得意とする魔術は結界術
とか守りの魔術である。と、「丘」のバゼットさんはこんな設定です。