聖杯はきみへの・・・9


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1: non (2004/03/08 16:12:50)

聖杯はきみへの・・・9








アーチャーの言葉に頷く。

食われている人がいるのに動かずにいるなんてこと、俺には出来ない。


「その選択の責任を負うのはお前だ。」








サーヴァントを探して町に出た。アーチャーは門を守っている。
隣にはランサー。遠坂は魔方陣の制作手伝いで手が離せないらしい。




大量に行方不明者がでたからだろう、異様なほど静かだ。
この町のどこかで活動しているサーヴァントは存在する。
自分をおとりにしてでも見つけ出す。
そして必ず倒す。




いくら探しても敵は見つからない。
焦りばかりが体を蝕む。
いったん寺に戻ることになった。




その途中。



「セイバー・・・。セイバーなのか?」



「・・・・・・・」


俺たちの前にいたのは間違いなくあのときのセイバーだった。




なにも考えられず足だけが前に進む。




響いたのは武器と武器とがぶつかりあう甲高い音。




「坊主を殺されると、嬢ちゃんに泣かれちまうんでな。」




セイバーの一撃をランサーが防いでいた。


あの剣は不可視。 ・・・間違いない。




俺が棒立ちになっている間にも、

ランサーとセイバーの間で神速の攻防が繰り広げられる。

様子見など不要、とランサーの槍が唸る。

一撃、一撃ごとにこの身まで響く魔力の波動。

セイバーは俺の問いに答えず沈黙のまま剣を振るう。



「セイバー、答えてくれ!」
















「・・・シロウ。」



ランサーの槍を弾き、後ろに後退したセイバーが静かに呟いた。

そしてそのまま見えなくなった。



まさか人を襲っていたサーヴァントはセイバーだったのか?

なんでセイバーが現界しているんだ?

彼女はアヴァロンにいるんじゃなかったのか?


「坊主、帰るんじゃなかったのか?」


逃げたことに拍子抜けしたのか、やる気なさそうにランサーが言った。


「ああ。」


そうだ、とりあえず寺で考えよう。
アーチャーや遠坂にも聞いてみないとわからないことがあるだろう。













「セイバーがセイバーだった。」



「はぁ?」



「・・・・・・・・・・。」



遠坂は、訳がわからないと聞き返し。


アーチャーはその言葉に黙りこんだ。





そしてアーチャーは


「まさかセイバーが・・・。」


と一言、消えるように呟いたあと、





「いや、そのセイバーはおそらくお前の知っているセイバーではない。」

と宣言した。




なら二重矛盾。


彼女の存在は何だというのか?



「でも俺のこと知ってた、俺の名前を呼んだんだよ!」



「それはそうだろうよ。英霊アルトリアは確かに衛宮士郎と一度聖杯戦争を経験している。」



こいつ、何か知っている。


「だが俺の真名には気づいているだろう?」


俺とは違う時間軸において自らの理想を貫き、英霊になった俺自身。




「「まさか・・・」」



俺と遠坂の声が重なる。




「そうだ、彼女はおそらくお前とは別の時間軸において、
違う結末を迎えたセイバーだ。」



「英霊に時間的概念はない、お前と俺が別物であるように、
そのセイバーはお前の知っているセイバーじゃない。」




同じ英霊が呼ばれる今回の聖杯戦争の特殊性を考慮すれば
ありえない話じゃない。




彼女はセイバーだった。





「どうやらお客さんだぜ。」



今までラーメンをすすっていたランサーが言った。

それに反応するように部屋の電気が消える、

結界が反応したのだ。






外に出る。








そこには、倒したはずのバーサーカーがたたずんでいた。



圧倒的な魔力量、血の色に染まっている左腕。



そこにいたのは鬼だった。


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