坂の上のお屋敷の使用人(になりかけ)


メッセージ一覧

1: lock (2004/03/08 15:45:02)


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ぷるる、ぷるる、ぷるる、ぷるがちゃ
「はい、もしもし遠野ですがー」
「琥珀ですか、シオンです」
「あらシオンさん。いったい何の御用でしょうか?」
「衛宮士郎の雇用に成功しました」
「ああ、この前お話になられてた凄腕のメイドさんですね?」
「凄腕なのは認めますが彼は男性です。メイド、というのは正確でない」
「あはー、相変わらずみたいですねーシオンさん」
「褒め言葉として受け取りましょう。それについて秋葉と話がしたいのですが。彼女は今どちらに?」
「はい、こちらにいらっしゃいますよー。志貴さんが今日はどなたかの所へ遊びにいってらっしゃいますので、とっても不機嫌ですけど」(「琥珀!余計なこと言ってないでさっさと代わりなさい!」)
「・・・そのようですね。なに、いつものことです」
くすくすと笑い合う声。
「はい、それでは秋葉さまにお代わりしますね」
「ああ、琥珀」
「はい?」
「今なら、貴女の気持ちが、良く解る」
「は?」
「これは・・・快感です」

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「シオンーーーーッ!」
扉を蹴破るくらいの勢いで俺はシオンの部屋に突入した。
あまり使う機会がないせいか、たいして家具も置かれてはいないが、俺の用があるのは部屋の主。
錬金術師。
冬の倫敦でもミニスカートの強者。
むらさきのあくま。(最近俺が認定)
シオン・エルトナム・アトラシアッ!

昨日の晩はすごかった。何が凄かったってそりゃあもお遠坂とセイバーが。
凄さの度合いが単品時より二倍、じゃない、あれは二乗だね。
『ふふ、手伝ってあげようか?士郎』
『ああ・・・駄目ですリン。そんなことを・・・しては。ふあッ!』
『だって私も早くしてもらいたいんだもーん』
『だ、だからってそんな・・・ひゃうッ!』
『ふふふ、セイバーだってこんなになってるじゃない』
『ち・・・違います!私は、こんな・・・ああ・・・』
ぐお。思い出すだけで鼻血が。
二人がかりで俺を骨抜きにして色よい返事を取ろうとしたのだろうが、俺もそこまで甘くない。
ゴーグルをかぶったどこかのコーヒー好きのハードボイルド検事も言っていた。弱者は運命に流され、強者はそれを飲み干す・・・、と。
というわけで鋼の精神力と魔術で強化した肉体でもってあの二人を返り討ちにしたのが数刻前。
まさかこんなことに魔術を使うとは思わなかった。あの世に行ったらかなり親父に申し開きしにくい。いや、集中も途切れがちだったけど。

「――って、いないのか?」
人の気配はない。
む。机の上に紙切れが。
手に取ると英語で『しばらくサンプル採取のため留守にします』と書かれてあった。
絶対嘘だ。
しばらく呆然としていると、その下から流暢な日本語で『士郎へ』と書かれてある紙が床に落ちた。眼を通す。
『この話、断ればエーテライトで手に入れた貴方の秘密を公表させていただきます。興味深いので今度研究させてください。渡日する日時と必要なものは下に書いておきます』
・・・・・・・。
だったら昨日言えよぉ。あのギリギリの攻防は何だったんだよぉ。拒否権無いじゃんかよぉ。
あくまめ。いや、あくま以上だ。まおうと呼んでやる。

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「それで、三日後に日本に戻るの?シロウ」
「はい、お嬢様。急な話で申し訳ありません」
「ルヴィア、で結構よ」
「いいえ、ルヴィアゼリッタお嬢様。まだ勤務時間でございます」
「妙な所で律儀なのね」
「恐縮です」
「今のは皮肉よ」
「恐縮です」
「それは皮肉かしら?」

腹はくくった。行き先がどんな場所だろうが受けて立ってやる。
あれから部屋にもどった俺は、まだ昏倒している遠坂とセイバーの為に軽い朝食を作ってからバイト先、ルヴィアの屋敷に赴いた。体力的につらいがこれも仕事だ。
バイト開始前に日本に戻る、と言うと何故かルヴィアは遠坂が一番怒ったときの笑みとそっくりの笑顔で「もう来ない気かしら?」と御下問あそばした。
めちゃめちゃ怖かった。
事情を説明すると頭を抱え、「ミスシオンも昔はああじゃなかったのですけど」と言う。
何でも初めて日本に行って帰ってきたら、異様に人間臭くなっていたらしい。
「昔は何かの機械のようでしたわ。本当にあの国で何があったのかしら」
「でも、それは悪いことじゃないだろ?」
そう言うと「ええ、それは、そうですわね」とルヴィアは微笑んだ。
・・・・・・・俺、被害者なのに甘いなあ。

「ならば命令よ、シロウ。いまからわたくしの使用人ではなく友人として振舞いなさい。ほら」
「――解ったよ、ルヴィア」苦笑して、それに応える。
「それにしても、こんなんじゃ仕事した気になれないな」
「使用人は主人にとって快い環境を作るのが仕事ですわ。主人の――」
「『主人の要望には全身全霊で応えること』、だろ?」
「ええ、その通りですわ」
「解ってるよ。ただのハウスキーパーじゃ使用人は務まらない」
それをここで叩き込まれたからな、と笑うとルヴィアも
「ええ、士郎は飲み込みが早くて良かったですわ」と言った。
先ずは言葉遣い。そして立ち振る舞い、果ては纏う空気まで。
一度間違うと痛い目線が飛ぶ。
二度間違うと言葉(とんでもなく上品な罵詈雑言)が飛ぶ。
三度間違うとガンドが飛ぶ(壊れたところは俺が修復)。
そういう戦場をくぐり抜けてきたのだ。
・・・・・・やっぱり時計塔は変人の集う場所だと思う。

そして仕事が終わり、帰ろうとするとき。
「シロウ」
「何だ?ルヴィア」
「・・・貴方はどこに出しても一流の使用人――いえ、執事ですわ。相手がどんなに大層な屋敷でも大丈夫。自信を持ちなさい」
「・・・・・・」
椅子に座って背を向けて、作業を続けながらルヴィアはそう言った。
俺は、
「――恐縮です。ルヴィアゼリッタお嬢様」
俺は深々と頭を下げた。

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そして出国前夜。
いきなりシオンが帰ってきて開口一番、
「予測通りです」とのたまった。
わりと本気で殴った。
避けられた。
「何をするのです、士郎」
「やかましいわ!この有線式サトリが!!」
挨拶なんてこんなもんだ。
そのままシオンは俺たちと夕食を一緒に食べた。
俺、遠坂、セイバーの騒ぎを眺めて、珍しく声をあげて笑った。
「貴方はどこか志貴に似ていますね」
「志貴?」
「遠野家当主の兄です」
「へえ、どんなところが?」
「お人好しで、いつも女性に振り回されている」
「・・・俺以外にも、こんな経験をしている奴が?」
「スケールはあちらが上です」
「――その人の事は同士・・・いや、師匠と心の中で呼ばせてもらうよ」
マジで。

セイバーは俺に付いてくると言っている。遠坂もそれを認めた。
「私は貴方の剣です。契約がなくとも、それは変わらない」
「しかしなあ・・・」
「いいじゃないの。私ももう少ししたらちょっと休暇とって帰るから。日本で会いましょ」
「向こうが置いてくれるかなあ?」
「う・・・。そ、それは・・・」
「失礼ですが、セイバー」シオンが軽く手を上げる。「スリーサイズを測った事はありますか?」
「え、ええ。服をシロウとリンに買ってもらった時に」
「よろしければ教えていただけますか?」
「あ?セイバーのスリーサイズが何の関係があr・・・ぐはっ!」
遠坂のリバーブロー零距離ガンドが俺の腹部に突き刺さる。そして俺の耳を塞いで、「はい、喋っても良いわよ」と言った。
俺は押さえつけられながら悶絶する。もうちょっとやり方が有るだろうに・・・!
セイバーはごにょごにょとシオンの耳元で何やら告げている。
シオンは一つ頷いて、遠坂に手を振る。もういい、ということだろう。
「おそらく大丈夫でしょう。むしろ士郎よりも待遇は良いかもしれません」
「何で?」
「行けば解ります」
凄い良い笑顔で返された。
訳が解らん。

シオンが帰って、セイバーが引っ込んで、遠坂と俺だけになる。
「遠坂、一人で大丈夫なのか?」
「あら、心配してくれてるの?遠坂は俺たちが居ないと寂しくて泣いちまうかもーって」
「ああ、そうだよ」
「・・・・っ」
俺の直球ど真ん中の返答に遠坂は顔を赤くして黙り込んだ。
「一緒に住んでた人がいきなり消えちまうのは、慣れるなんてこと、ないからな」
「士郎・・・」
「何かあれば連絡してくれ、何があっても何をやってもお前のところに戻ってくるから」
そう言って、俺は遠坂を抱きしめた。俺の方からこういう事はあんまりしないけど、だからこそ希少価値が高いってものだ。
「うん、解った。ありがとう、士郎」
遠坂もそっと俺を抱き返す。
「でもね士郎」
・・・・・・?
ぎゅうううううううっ。
ぐお。何だこの締め付け方は。遠坂の額が俺の鳩尾にめり込む。
「浮気はセイバーまでよ」
「お、オーケイ・・・」
どうやら俺はラブシーンと縁が無いらしい。
・・・そもそもお前が行けって言ったくせに。

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そして俺とセイバーは日本へ飛んだ。

《ここまでやったら続けるしかないんでしょうね》
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地味ーーーーーー。
今回地味ーーーーーーーー。
っかしいなあ・・・凛とルヴィアゼリッタの恋の鞘当て書くつもりだったんだけどなぁ。
まだまだ未熟者ですね、はい。
さあ、次回はありそでなかったメイド服セイバーだッ!(挿絵は出ませんが)
もっと精進します。それでは。」
















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