男はアーチャーと名乗った。
そして、俺に簡単な聖杯戦争と令呪についての説明を行った。
…なぜか偉そうだった。
1「遠坂凛」
私は、急いで衛宮君の屋敷へ向かった。もう、形見の宝石はない。次にランサーに襲われたら、もうどうしようもない。
気ばかり焦る。
「セイバー、あいつの気配は感じる?」
「はい、凛。気配が濃くなっています」
セイバー―私が契約した最強なサーヴァントの少女―は冷静に言う。
こういった時の悪い予感は外したことがない。
(やばいかな…)
衛宮君の屋敷に着いたとき、辺りは異様なほど静まり返っていた。
「間に合っ…」
瞬間、物凄い閃光と、魔力の奔流が辺りを包み込む。
何?何なのよ、一体
セイバーの方を見ると、臨戦態勢えお整え、屋敷の中を睨んでいる。
「セイバー、これは一体…」
「分かりません。しかし、ランサーの気配が消えましたが新しい、サーヴァントの力を感じます。恐らく、何者かが新しいサーヴァントを召還したのではないでしょうか」
「でも、この家に住んでいるのは…」
衛宮君の顔を思い出す。
私の実の妹の思い人。
じゃあ、彼がマスターになってしまったということなの?
「凛、危ない!!!」
思考の世界に沈んだ私の意識は、セイバーの叫び声で現実に引き戻された。
目の前に、葉巻を咥えた髭を生やした男。そして、只者でない魔力。
(ヤバイ、完全に油断した!!!)
一番大事なところでポカをする私の性格がまさかこんな形で現れるとは。
男は振り上げたで、私に必殺の一撃を加えようとしている。
魔術はもう間に合わない。
…死ぬ。
(あ〜あ、結局、彼氏も出来ず、中途半端なまま終わるのか)
私は、最後の最後で、衛宮君の顔を思い出した。何故だか分からないけれど。
きっと、最期に目にした男の子だったからだろう。きっとそうだ。そうに違いない。
しかし、来るべき衝撃は、いつまで経ってもこなかった。
「やめろ、アーチャー!!!!!」
そう、衛宮君が叫んでいたから。
令呪を使って。