序「始まりは唐突に」
衛宮士郎は、そのとき初めて死を意識した。
自分の最大限の魔力も、ランサーに毛ほどの傷も負わせず、そして、今土蔵の中で
槍の矛先が今にも、心臓を貫こうとしている。
「くそ、ここまでなのか」
思えば校庭で、この『男』と見えない剣を持った『女』の一騎打ちを見たときから
自分の運命は決まってしまったのかもしれない。
「さあ、覚悟はできたか…死ね」
ランサーは槍を振りかぶると、躊躇いなく士郎の心臓を貫こうとした。
しかし、そのとき
眩い光の閃光と、衝撃によりランサーの体は庭先へと吹き飛ばされてしまった。
「くっ、一体なんだ!!?」
忌々しげに、立ち上がるランサー。
士郎も何が何だか分からない。
「貴様、一体誰だ!!」
ランサーは士郎の後ろを見て叫ぶ。士郎もつられて後ろを振り向くとそこには…
「貴様が、ワシのマスターか」
黒いスーツ。
ガッチリと固められた髪の毛。
口には葉巻を咥え、隻眼なのであろうか。片目にはサングラスのような物をつけた
男が、腕を組んで立っていた。
一瞬、固まる空気。
ランサーも士郎も、『何じゃ、こりゃ!!!』とこの場違いな男の出現に心の中で
突っ込んだ。
「もう一度聞く。貴様がワシのマスターか!!」
士郎は訳が分からないが頷く。なぜならこの男の目が『YES』以外の答えを求めていないように思ったから。…というより怖かったから取り敢えず頷いたのだが。
「うむ、ならば、マスター。貴様の命を狙う不届きな輩を木っ端微塵にしてやろう」
「ふん。できるもんならやってみろ。貴様のような老いぼれに遅れはとらん」
流石はランサー。一瞬で態勢を立て直し対峙する。
「早く、武器を取れ。素手の者とやっても面白くないからな」
ランサーは男に促す。しかし、男はニャリと笑うだけだった。
「俺を愚弄するのか。面白い。ならばそのまま死ね!!!」
光速の突きが男に襲い掛かる。
「お、おい!!!」
士郎が叫ぶ。しかし男は腕を組んだまま微動だにしない。
迫る槍先。あと少しで男に到達する、瞬間!!
士郎とランサーは驚愕した。何と槍先が男の目の前で弾かれたのだ。
「き、貴様。今何をした!?」
「貴様に答える口はない。そのまま朽ち果てよ!!!」
男は両手を広げる。するとその手に赤い奔流が生まれた。その奔流は衝撃波となり
ランサーに襲い掛かる。
紙一重でかわすランサー。しかし衝撃波は男の意のままに敵を追尾する。
「ち、このままじゃジリ貧か。…ここは、一先ず引かせてもらう。じゃあな」
ランサーが居なくなった庭先。
月の光が男と士郎を照らす。
月だけが見ていた男と『漢』の邂逅。
この出会いが今後士郎にいかなる影響を与えるのか。まだ誰も知らない。
すいません。初投稿させていただきました。運値と申します。
駄文ですが、暖かい目でお願いします。