はじめに
実在の人物および歌とは一切関係ありません
バーサーカーの正体がヘラクレスじゃなくてアレだったらな話です
今回はセイバールートを弄っています。
「―――――ねぇ、お話は終わり?」
幼い声が夜に響く。
歌うようなそれは、紛れもなく少女の物だ。
視線が坂の上に引き寄せられる。
いつのまに雲は去ったのか、空には煌々と輝く月。
―――そこには。
伸びる影。
仄暗く青ざめた影絵の町に、それは、在ってはならない異形だった。
「―――バーサーカー」
聞き慣れない言葉を漏らす遠坂。
……追求する必要などない。
アレは紛れもなくサーヴァントであり、
同時に―――一発で真名がワカッテシマッタ。
…いや、ある意味『狂』戦士だけどさ。
確かに、 ツヨカッタ
若かりしころは王者だし、
恐らくそのころはその世界の英雄だし、
今生きてる人間が英霊になってもおかしくはないし、
いまじゃあ伝説の男として詩われていたりするけど。
そう、誰しも判ってしまう、バーサーカーの真名は。
―――ガッ○石木公―――
あぁ……いいのかな。
「――――やば。あいつ、桁違いだ」
狂戦士の正体に脳内麻痺している俺とは違い、遠坂には身構えるだけの余裕がある。
……遠坂は知らないのか?
まぁ、TVとか見なさそうだし、アレはバラエティでしか見ないし。
遠坂がバラエティ見て爆笑している姿を思い浮かべる。
……必至で消した。
「はじめまして、リン。わたしはイリヤ。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」
「アインツベルン―――」
その名前に聞き覚えでもあるのか、遠坂の体がかすかに揺れた。
そんな遠坂の反応が気に入ったのか、少女は嬉しそうに笑みをこぼし、
「じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」
ガッツ
歌うように、背後の異形に命令した。
ガッツが飛ぶ
バーサーカーと呼ばれたモノが、坂の上からここまで、何十メートルという距離を一息で落下してくる―――!
「―――シロウ、下がって……!」
セイバーが駆ける。雨合羽がほどけ、一瞬、視界が閉ざされた。
バーサーカーの落下地点まで駆けるセイバーと、
旋風を伴って落下してきたバーサーカーとは、まったくの同時だった。
「っ…………!」
空気が震える。 ・
岩塊そのものとも言えるバーサーカーの大拳を、セイバーは見えない剣で受け止めていた。
「っ――――」
口元を歪めるセイバー。
そこへ
旋風じみた、バーサーカーの大拳が一閃する―――!
轟音。
大気を裂きかねない鋼と拳のぶつかり合いは、セイバーの敗北で終わった。
ざざざざ、という音。
バーサーカーの大拳を受けたものの、セイバーは受け止めた剣ごと押し戻される。
「くっ……」
セイバーの姿勢が崩れる。
追撃する鉛色のサーヴァント。
灰色のガッツは、それしか知らぬかのように大拳と叩きつける。
避ける間もなく剣で受けるセイバー。
彼女の剣が見えなかろうと関係ない。
バーサーカーの右ストレートは全身で受け止めなければ防ぎきれない即死の嵐だ。
故に、セイバーは受けに回るしかない。
彼女にとって、勝機とはバーサーカーの拳戟の合間に活路を見いだす事。
だが。
だがしかし。
……セイバー、よくマジメに戦ってられるな。
捌ききれず後退したセイバーに、今度こそ、
防ぎ切れぬ、ギャグの一撃が繰り出された。
「バーサーカー。
♪うさぎ追いしかの山〜さてこの唄のタイトルはなに?」
と聞かれて、真面目にこう答えた
「うさぎ おいし…
うさぎって美味しいの?
えっ!? 題名? ん…あっ、珍味」
……なぜか大きく弧を描いて落ちていくセイバー。
背中から地面に叩きつけられる前に、セイバーは身を翻して着地する。
「……童謡ぅ、ですけどっ……!」
なんとか持ち直すセイバー。
だが、その胸には、赤い血が滲んでいた。
……なんでやねん。
セイバーは決してギャグに走らない。
怒涛と繰り出されるギャグの気配を全て受け止め、気力でシリアスに押し返そうとする。
勝ち目などない。
そのまま戦えばギャグに流されると判っていながら踏み止まる彼女の姿は、どこか異常だった。
その姿に何を感じたのか。
0 K ホ ゛ ク シ ゛ ョー---
「■■■■■■■■■■■■――――!」
絶えず無言(さっき喋ったとか言うな)だったガッツが吠えた。
防ぎようのないギャグ。
完全に防ぎに入ったセイバーもろともなぎ払う一撃は、今度こそ彼女を吹き飛ばした。
だん、と。
遠くに、何かが落ちる音。
イリヤと名乗った少女は、愉しげに瞳を細める。
それは敵にトドメを刺そうとする愉悦の目だ。
動きを止めたバーサーカーに、
少女は『我々は今』と書かれた紙を見せ。
「バーサーカー、この台詞言ってみて?」
「ガガはいま」
……どういう原理か鮮血が散っていく。
その中で、もはや立ち上がる事など出来ない体で。
「フリガナ無しだとっ、必ず……間違えるのですか……」
彼女は、意識などないままこう答えた。
……まるで。
そうしなければ、残された俺が、ギャグに染まるのだと言うかのように―――
……だけど、 ア キ ラ メ
俺はね、セイバー、もう染まりきっているんだよ……
「いいわよバーサーカー。そいつ、シリアスになっちゃうから笑い転がせてからギャグに染めなさい」
バーサーカーの活動が再開する。
俺は――――
「こ―――のぉおお…………!!」
全力で駆け出していた。
あのガッツをどうにかできる筈がない。
だからせめて、倒れているセイバーを突き飛ばして、バーサーカーの一撃から助け――――
銀髪の少女はブロッコリーを取り出して
「バーサーカー、これって何?」
「ボ――」
「カリフラワーだ!」
言われる前に言ってやった。
「―――なんで?」
ぼんやりと、銀髪の少女が呟く。
少女はしばらく呆然とした後、
・・・・・
「……もういい。こんなの、つまんない」、
ぐさっ「ぐはっ」
俺に完璧なるトドメをさし、バーサーカーを呼び戻した。
「―――シロウ。次に面白くなかったら殺すから」
立ち去っていく少女。
それを見届けた後、視界が完全に失われた。
意識が途絶える。
今度ばかりは取り返しがつかない。
芸人にとって最大の禁句を言われてしまったのだから―――
こんな、屈辱に塗れた芸人を助ける魔術なんてないだろう。
フ ォ ロ ー
「……あ、あんた何考えてるのよ! わかってるの、もう拾うことなんて出来ないって言うのに……!」
叱咤する声が聞こえた。
……きっと遠坂だ。なんだか本気で怒っているようで、申し訳ない気がする。
でも仕方ないだろ。
俺は遠坂みたいにツッコミができる訳じゃないし、自由に出来るのはこのボケぐらいなもんだ。
……だから、そう。
こうやって体を張る芸ぐらいしか、俺には出来る事がなかったんだから――――
あとにかくもの
なぜか主役が士郎になってるし。
次はもう少し巧く書きたいです。
掲示板の限界と言えばそれまでですが、ルビ振りたいですねー
ええと。
……わからない人は土曜10時の日テレ系を見てください。