大兄さんの憂鬱の巻


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1: 非国民 (2004/03/05 20:18:12)

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※壊れSSです。苦手な方は今すぐ左上の戻るをクリックする事をお薦めします。
※このSSは思い付きで書かれています。
 「この設定はおかしい」と言う方は諦めてください。
※キャラが不当な扱いをされる事がありますがご了承ください。
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太陽がさんさんと輝く小春日和。
ほのぼのとした空気に街も浮き足立つ。

そんな中に、一人の男がいた。

真っ黒い服装。
真っ白い仮面。
右腕には包帯をぐるぐる巻きにしている。

はっきり言って怪しい。

そんな男の名はハサン。
サーヴァント一家の長兄である。

ハサンは悩んでいた。

周りの空気が酷い重さ(当社比7,5倍)になるくらい、深刻に悩んでいた。




サーヴァント一家の平凡な日常
〜大兄さんの憂鬱の巻〜



「……また、駄目だったか……」

この春、晴れて大学を卒業したハサン。
まあそこそこ真面目に通っていたので卒業できるのは当り前だったのだが。

大学に入学した時に一人暮らしを始めてアルバイト三昧だった毎日。

3つ4つのかけもちは当り前。
何せ、我等が母キャスターは

「家から出ていくんなら、仕送りはしません」

などと恐ろしい事を言い放ったのだ。
1つじゃとてもじゃないが生きてゆけるほどの稼ぎにはならない。

だが、就職すれば。
少なくともアルバイトよりは多くの給与を貰えるはず。

ハサンはそう考えていた。
ので、フリーターなど考えられなかった。

彼は努力した。
去年の4月から就職活動をはじめていたのだ。

しかし。

「……結局、私のこの1年は、全くの無駄だった、というわけか」

自嘲する。

そう、1年かけて、見つけた就職先は一つとして無い。
何故か何処の会社も、履歴書を送っただけで断られてしまった。

2社ほど前の会社もそうだ。
顔を見ただけで門前払い。

あれには流石に泣きたくなった。

「……昼飯でも食べて、次の会社に挑戦しよう」

レッツポジティブシンキング。
大丈夫次はきっと大丈夫なんて考えながら商店街。

精神的に疲れていて自炊する気になれないので今日は外食にしようか。
丁度道路工事のバイトの給与が入った所で懐は暖かい。

そう思って商店街の店を物色している所、知った顔がいた。

「セイバーではないか」
「…大兄さん!久し振りです」

セイバーは買い物袋を下げていた。
中には食料品が詰まっている。

「お遣いか?偉いな」
「大兄さん、私はいつまでも子供じゃありません。
 そう子ども扱いしないで下さい」

そう言って膨れる様子はとても微笑ましい。
この末っ子はいつも私の心の拠り所となってくれる、良い娘だ。

「すまんすまん。
 ――そうだセイバー、今から昼食にしようと思っていたのだが、一緒にどうだ?」

セイバーの表情が真剣になる。
いつも思うのだが、何故この末娘はこうも食い意地が張っているのか。

「その誘いはとても嬉しいのですが、この買い物を届けなくてはいけないので……」

残念そうに、本ッッ当に残念そうに言うセイバー。

「そうか……なら、せめて大判焼きをおごろう。
 それくらいならどうだ」
「はい、是非」

たかが大判焼きに目を輝かせるさまは見ていてやはり微笑ましい。
急ぎ近くの屋台に足を運び、四個買う。
中身は餡子が2個、クリームが2個だ。

そこらにあったベンチに腰掛け、二人黙々と食べる。
元々、話し上手なほうではないし、静かなほうが好きなのでこれで満足。

ものの1分で大判焼き3個を完食したセイバー。

息をつく。

「ご馳走様でした」
「満足したかね?」
「ええ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

なんとなく、無言。

「――大兄さん」
「ん、なんだ?」

真剣にこちらを見ているセイバー。

「……何か、悩みがあるのではないですか」

驚いた。
セイバーに気取られるほどに落ち込んでいたというのか。

「良ければ、話してください。
 力にはなれないかもしれませんが、人に話す事で少しは楽になれると思います」

その心遣いが、嬉しい。
可愛かった末娘は、人の心を思いやる事の出来る素晴らしい娘に育ってくれた。

自然、顔が笑みの形を作った。

「……?大兄さん?」
「いや、――その気持ちだけで、十分すぎるほどだよ」
「え?」

立ち上がる。
空は晴天。ああ、晴天だとも。

「さて、また、頑張るとするか」
「?大兄さん?」

不思議そうな顔をしているセイバーに笑みを向ける。

「それよりもセイバー、買い物はいいのか」
「!そうだった、早く行かないと、シロウに怒られる!」

青い顔をして走り出すセイバー。
私はそれを微笑んで見送って―――



―――シ ロ ウ ?―――



「待てセイバーそいつは」
「すみません大兄さん、急ぐので。
 また会いましょう!」

誰だ、と聞こうとするがかなり慌てているらしく、聞き流された。
その慌てぶりから、私の脳裏に最悪の事態が予想される。

まさか。まさかとは思うが。



―――オ ト コ か ?―――



あんまりだ。
そりゃ女らしくなったなとかこんなんじゃ男どもも放っておかんだろうとか思った
けれどもこんなのってない。

「待てセイバー、許さんぞ!」

聞いてない。
走るセイバー、追う私。

「まだ早い! まだ、私の心の準備が!」

速い。速すぎる。
走りにはかなり自信があったのに、追い付けないとは。

「ちょっと君、待ちなさい!」

警官だ。
やばい。傍から見ると変質者以外の何者でもない。

「く―――ッ!」

逃げる。
このまま走ると追いつかれかねないので、路地裏へ。

「待て!くそ。
 おい、本署に連絡を取れ!」

おのれ、おのれシロウとやら!

「かくなる上は、この私が貴様を殺してやるぞシロウとやら―――――!」










なんとか命からがら逃げ切った私は、会社の面接に来ていた。
シロウとやらを仕留めなければならないが、面接の日程も今日だったし、面接まで
してくれる会社は少ない。

「――ではハサンさん、特技は」
「はい、腕が伸びます」
「はぁ?」
「このように」

包帯を解いて、腕を伸ばす。
皆、口を開いて呆然とする。

「あー、その…その仮面は」
「ええ、鼻を削ぎ落として皮を剥いだ酷い顔なので見せられなくて」

皆、頭を押さえる。
気のせいか恐ろしい物を見るかのような目で私を見ているようだ。

「えーと…趣味とかは」
「投げナイフ集めですね。
 結構種類があって、ほらこれとか…」

言って、懐にしまってあったダークをみせる。
面接官の人達が互いに目配せした。

皆、神妙にうなづく。

皆で私を見て、妙に爽やかな笑顔で。
一言。たった一言。

「―――帰れ」

と言い放った。



―――何故だ。

いつも、最後は皆同じ顔で同じ事を言う。
その事を不思議に思いつつ、私はその会社を後にした。

大丈夫、次はきっと大丈夫。
うん。そうだ、次は、きっと―――

―――駄目かも。
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あとがき

ハサン長兄初登場にして主役を張る回。なんだそりゃ(笑
なんかネタ的に中途半端ですね…精進せんと。

ホントは最後の面接が書きたかっただけなんです、はい。すいません。

では、また会う日を夢見て……
                              非国民でした


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