終わりと始まりの丘(傾:シリアス M:士郎)


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1: オルガット (2004/03/05 19:18:49)



 ある冬に、この冬木市で聖杯戦争という魔術師同士の争いが起きた

 英雄を従え、全ての望みをかなえる聖なる杯を賭けて争う7人の魔術師

 これが聖杯戦争を簡単に説明したもので、俺は偶然その戦いに巻き込まれた

 騎士のサーヴァント、セイバーと共に聖杯戦争を俺は終わらせるために戦うと誓い

 その戦争の最中に、死にかけたり、実際に死んだり、憧れの学園のアイドルの本性を見たり

 果てに英霊となった未来の自分と戦ったり・・・

 まあ、なんだかんだで聖杯戦争は終わり、町は平和に戻った


 それから共に戦争を戦い抜いた遠坂とセイバーと共に倫敦の時計塔へ留学し

 ルヴィアと遠坂のケンカに巻き込まれながらたり、セイバーと剣の鍛錬をしたり

 そうしながら、俺はあの男の背中に追いつこうと必死に努力した




 だというのに



 俺こと衛宮士郎は大切な人を失う寸前だ


 3人を守ると、何時か誓ったはずなのに



 話の発端は俺の唯一使える魔術である固有結界がバレたことにあった



 ある戦場で戦いになった魔術師に止めを刺せなくて

 そいつが固有結界の事を魔術協会に報告して俺は協会から封印指定を受けた

 遠坂もセイバーもルヴィアも俺の事を庇ってくれ、3人と共に逃亡を試みたが

 ついに俺の故郷である極東の島国の最北で追い詰められてしまった・・・



 そして戦いになった


 本来3人とも戦闘能力は高いがでそこいらの魔術師に後れを取ることはないが

 セイバーは十分に力を発揮できない身であり、遠坂はセイバーに魔力を割いている

 そして、俺の甘さが、ここでも彼女達の足を引っ張ってしまった

 殺せなかったんだ、俺にはどうしても、だから躊躇してしまって

 俺がやられ、3人も数の暴力には勝てなかった

 倒れた3人は顔を見合わせ苦笑した後、動きを止めた

 俺の体はまだ多少は動く、生きながら捕らえないと封印できないからあえて止めを刺されないんだろう

 わかっている、彼女達はまだ死んでいないと、そして彼女達が俺のせいでこうなったことを



 だから、あの言葉を口にした



 「契約しよう。我が命と死後を預ける。その報酬を、ここに貰い受けたい」



 それは俺を庇ってくれた3人対して、何よりの裏切りだと理解していた
 
 それでも、俺は3人生きて欲しかった、俺のせいでこいなったのだから

 3人の協力を無理矢理にでも拒めばよかった、いや、実際拒んだつもりだった

 けど、心の何処かで3人甘えて、3人を巻き込んでしまった

 俺は3人が助かるのら、悪魔にだって魂を売り渡していいと思った




 契約は完了し

 周囲が眩い光に覆われた後には、無傷の3人だけが残っていた






 気がつけば剣の丘

 そこで、赤い騎士と会った

 かつての戦争で出会ったもう1人の俺、俺の可能性

 今では背もそう変わらず、格好もあまり変わらないので鏡を見てるようだ

 赤い騎士は何も言わずに無言で俺を睨んでいる

 「交代だ、おまえは休め」

 無言の赤い騎士に代わって俺が言葉を紡ぐ

 赤い騎士はいかにも、やれやれ、というポーズをした後

 笑みを浮かべながら静かに消えていった



 それは同じ人物が英霊になった矛盾を解消するシステム

 比べられ、劣ったほうが消え、優れているほうが残される

 赤い騎士が消えた後、剣の丘に変化が訪れる

 なんてことはない、ここは主の心を写す場所

 ならば、主が変われば世界も変わる、それは当然のことだ



 無言で世界を感じる

 目に留まったのは新しく登録された宝石剣

 以前に4人で協力し合い作り出した宝剣

 きっとそれは、4人を繋ぐ大切な絆だと思ったから

 その剣を、そっと胸に抱いた





 そして今、あの声が懐かしい声が俺の耳に飛び込んでくる

 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ
  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 本当にもうずっと聞いてなかった声

 「満たせ。 満たせ。 満たせ。 満たせ。 満たせ
 繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する」

 あの赤い騎士もこの声を懐かしく思いながら聞いていたのかと思考する

 「―――――セット」

 「――――――告げる」

 「――――告げる
  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に
  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 「誓いを此処に
  我は常世総ての善と成る者
  我は常世総ての悪を敷く者
  汝三大の言霊を纏う七天
  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」



 「その契約に答え、俺は君の剣となろう」

 そう呟きながら、召喚の渦に身を任せる

 必ず君を、3人を守ると何時か誓ったのだから



 その誓いを、今果たそう


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