Stay Knight assasin,ver prologue&1 M:遠野志貴 傾:シリアス


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1: こきひ (2004/03/04 12:25:30)




prologue



 ―――今もあの笑顔を思い出す。



 誰よりも白が似合った彼女。
 誰よりも血を吸うことを嫌った彼女。
 誰よりもその全てを美しいと感じた彼女。



 ―――その約束を、覚えている。
 ―――その笑顔を、覚えている。
 ―――なにもかも、覚えている。



 別れてから一日たりとも忘れることなく追い求めた、遠野志貴にとって唯一の大切な女性。



 「―――アル、クェイド―――」
 そうして、殺人貴と恐れられた人間はその人生を終えようとしていた。
 直死の魔眼という未曾有の魔眼を持ち、卓越した体術を以ってして死徒という死徒を殺して廻った殺人鬼。
 黒の姫君という後ろ盾に、復讐騎という協力者。
 故に、彼に手を出して無事な者はおらず、教会ですらその存在を容認せざるをえなかったほどの存在。

 人間という最弱種にして、最強である真祖の姫を求めるという最難の道を選んだ彼の寿命は、
それが当然とでも言うが如く、人間のそれの三分の一にも満たなかった。

 「……ごめん。俺、もうおまえを探せそうにない」

 体に渦巻く死は、今まで視てきた誰のものよりも、深い。
 草原に横たわる体は重く、まるで鉄のようだった。

 「最期に一回でも、逢いたかった――――」

 そうして、裏世界で万人に恐れられた人間は、息を引き取ろうとし――――『その』存在に気づいた。

 「……誰だ」

 聞こえない声は、静かに青年へ語った。

 『英雄として“孔”へ行き、有事あらば召喚されん事』

 そして流れ込む大量の知識。
 それは英霊としての知識であり、地球の意思でもあった。
 薄れ行く意識の中、殺人貴はしばしの思案の後、それに応えた。

 「……いいだろう。契約する。でも、一つだけ条件がある」

 無言の促し。
 それを意に介さず、また介する余裕もなく、彼は言った。



 「俺が、召喚された土地でもあいつを探せるように、“俺であった”という記憶―――

                          ―――“遠野志貴”の記憶は、奪わないでくれ」

 目的を果たせばそれは消し去ってくれてもいい、と告げる。



 『……承知』



 殺人貴はそれを聞いて満足したように微笑み、ゆっくりとその身を闇へ委ねた。















 Stay Knight Assasin,ver















first

 それから幾度現生したのか。
 百を超えるのか、それとも未だ召喚されたことはないのか――――
 しかし、そんなものに意味などありはしない。
 その場限りで掘り起こされる殺人貴としての記憶。
 消えればまたリセットされ、死後すぐの状態へと戻る。
 そしてまたあいつを求めて彷徨う。
 その意志が自分の中にあるかぎり、それはつまり、

 ――――俺があいつに届いていないという、何よりの証拠だった――――

 




 次、と言うべきか否か。
 月明かりを感じたのは、ほの暗く、異質な臭いを纏った密室だった。
 地には奇怪な陣が未だ共鳴を続けている。
 薄闇の中、正面から静かに、ひっそりと声が伝わってくる。
 「……貴様はどのクラスのサーヴァントだ?」
 その質疑の意を瞬時に理解し、主にも勝る静けさで伝える。
 「俺のクラスは――――アサシン。そしてあなたは俺のマスター、で相違ないですね?」
 「そうだが……貴様、本当にアサシンか? どうも伝承とは違うようだが」
 どうやら戸惑っているようだけど……こっちだってあるかどうかもわからない前回の記憶なんてないのだから、勝手がわからないんだ。
 「私の聞いたところによるとアサシンというのは毎代、ハサンの名を継ぐ者がなるというが……。
  貴様の真名はサハンでいいのか?」
 「さはん?」
 誰だそれ。
 ……ていうかこれみよがしに溜め息吐かれるとなんか申し訳ないんだけど。
 「……マスター。申し訳ないんだけど、俺はサハンなんてヤツじゃない」
 「……だろうな。で、貴様の真名はなんという?」
 「……殺人貴」
 「は?」
 「殺人貴。知りませんか?」
 一応その手の世界では悪名として知れ渡っていると自負している名前を明かす。
 だというのに、
 「……知らん。それはいつの時代の英雄だ?」
 なんて訊いてくるこの人こそいったいいつの――――
 そこまで考えて、気づいた。
 「マスター、あなたに一つ訊きたい事があるんだけど」
 「なんだ?」
 「ここは、いつの時代ですか?」
 返ってきた答えは、自身の望みを果たすに相応しいものだった。






 話を聞くところによると、俺のマスターとなったこの男はアオザキの魔具の類を持っていて、それを利用して正規よりも強力なサーヴァントとして召還しようとしたところ、それが俺の魔眼殺しと反応したということがわかった。
 そんな事はどうでもいい。
 何より重要な事は、ここがあいつと出会う八年前だということ。そして季節は夏。
 つまりは――――
 「マスター。一つ提案してもいいかな」
 ――――これは絶好のチャンスだということ。
 「俺との契約を切ってほしい。
  そうすればこんな得体の知れないサーヴァントよりも、あんたの望むサーヴァントを手に入れることができる」
 その提案に、主は嗤った。何を馬鹿な、と。
 しかし、こちらにとっては重大なことだ。
 記憶が正しければシキに殺された遠野志貴はすでに彼女と出会っている。
 そして、急がなければ数日後には彼女と別れてしまうだろう。
 俺に伝聞された彼女に対しての記憶が正しければ、彼女ならば俺の願いを叶えることができるかもしれない。
 たしかに聖杯を手に入れればこの世に受肉することもできるだろう。
 しかし、それは聖杯を手に入れるという前提があってのこと。
 はっきり言って、この主にその力があるとは思えない。
 それに、
 「馬鹿なことを言ってないでさっさと街へ行って食事をしてこい。
  最初だからな、二桁は喰うなよ」
 こんな馬鹿げた要求に従うつもりもない。
 「それはつまり、人を襲えと?」
 魔術師は、無論だ、と頷いた。
 「それとも令呪を使わぬといけないかな?」
 その問いに、まさか、と答え、
 「そんなモノはいらない。そして―――」
 魔眼殺しを包帯ごと拭い取る。
 「―――あんたの命令も、聞かない」
 そうして、初めて見た主の体を宝具と化したこの両眼で見据え、



 「じゃあな。名も知らぬマスター」



 俺と彼を繋ぐレイラインを「殺した」。













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 注意。

 今回の舞台は第三回目の聖杯戦争です。
 勝手な解釈(改竄)で志貴が殺されかけた年と聖杯戦争の年がかぶっています。
 上記のようなマスターがいたかどうかは知りません。つーか多分居ません。完璧な妄想作品です。
 ここに出てくる志貴は、『殺人貴』です。
 目には魔眼殺しと包帯を巻いています。
 その辺を想像してもらえると読みやすいと思います。

 ダッシュが見苦しいかもしれませんが、ご了承下さい。


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