みんな一緒(1) (M:いりや? 傾:正直不明


メッセージ一覧

1: ミッシング・マス (2004/03/03 17:41:43)

何だろう、頭がひどくぼうっとする
遠くの方で見たことがないのに
見たことがある魔術師が立っている
どこで見たんだろう
あぁ、そうだセイバーの夢の中で垣間見た魔術師だ
『マーリン』
頭はほとんど働いていないのにその名前が頭をかすめた
その魔術師が俺に何かを言っている
何を言っているかまるで聞こえないのに
なぜか魔術師に言われるまま自分の体を見てみた
その時初めて頭がぼうっとする理由がわかった
体がないんだからぼうっとするのは当たり前だ
しかしなぜかそこには少しも驚きがない
自分が死ぬのはわかっていた
−アーチャーの腕を使った時点で決まっていた運命−
それでも俺の中には
−桜を守り抜いた−という達成感と
−桜をずっと守る−と言う約束を果たせなかった
         後悔のような感情が渦巻いている

するとその魔術師が近づいてきた
『おぬしはよく頑張ったな。ゼルリッチを投影したり、
なかなかおもしろい男だ。』
なんて事を言いながら魔術師は俺のそばで笑っている
『さて、聖杯は無くなってしまったが、
いやあれは破壊したという方が正しいのかのう?
まぁよい。アインツベルンのお嬢ちゃんが
おまえを魔法で何とかするだろうが、
おまえはあれだけ頑張って、それにあやつに個人の幸せを教えてくれた。
その礼に等価交換として、ワシと消えつつある聖杯の力で
おまえの願いの叶えられる部分を叶えてやろう。
願いを言ってみるがよい。』

−この魔術師が何を言っているのか正直よくわからないが−

『俺は十分に幸せだ。あえて言うならもう一度桜の笑顔が見たい。
みんなに囲まれて笑っている桜にもう一度、
そしてあいつの罪を一緒に背負って桜を守ってやりたい』
そんなことを言っていた
『おまえをもう一度あの娘に会わすのはワシの仕事ではないからな』
魔術師は何かぶつぶつと言いながら考え事をしている。
『よし、ならあの娘の罪を少し軽くし、笑える要因を増やしてやろう』
魔術師はそういうと呪文のような物を唱えだした。
だがもう俺にはそれを聞き取る力さえ残っていない。
意識が消えかかっている。もうすぐ俺は消えるんだと思える
意識がどんどん消えていきもう何も考えられなくなった時
『シロウ』
とても優しい聖母のような声で
−イリヤ−に呼ばれた気がして、そこで意識が途絶えた




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




みんなと一緒(1) 魔術師の奇跡





「うっ、うぅぅん」
目覚めは最悪だった。バーサーカーにやられた時もここまでではなかった。
体の節々が痛く、どうしようもない吐き気がする。
頭もがんがんと痛むがそれが逆に生きてることを実感させてくれる。

「・・・んっ」
−生きてる−
『確かおれ死んだよな??』
自分の体を見てみると
「確かに体はちゃんとある」

「なっ、なんだこりゃー!!」
俺は絶叫していた。そりゃ絶叫ぐらいしたくなる。
体の関節がおもちゃのフィギュアのような球体である。
「あぁー、なんかすごいやばい。」
もう何がやばいのかよくわからないがとにかく頭を整理しよう。

理由はよくわからないが俺はとりあえず“生きている”
身体に異常は−−かなりある。というか、これは何?
夢? 幻? 悪夢? 最後のが一番確率が高い気がするのはなぜだろう?
「そうかきっとここは天国だ。」
そんなことをいってみたが上を見れば見覚えのある天井
何年も見てきた家の天井を忘れるはずがない。

−おぼえてる?− 確か俺は記憶が壊れつつあった気がするんだが?
「ちゃんとおぼえてる。俺の名前は衛宮士郎。親父の名前は衛宮切嗣。
恋人の名前は間桐桜・・・・」
やばい自分で言っといてなんだが、声に出すとかなり恥ずかしいものがある。
自分の顔はきっと今真っ赤なんだろうなぁ〜・・
なんて黄昏れている場合じゃない!! 

「このままじゃ堂々巡りもいいところだ」
よしっ、と自分にかけ声をかけ、頭をすっきりさせるために顔を洗いに行く。
だが立ち上がろうとすると、布団のすぐ隣に座布団が一枚置いてある。
触ってみるとまだわずかに暖かい。
「誰かが看病してくれてたのかな?」
まぁそれを考えるのは後にしてとりあえず
洗面所に行こうと思い立とうとすると、
「うっ、うわっ!!」
まずい、ちゃんと歩けない。
「くっ・・、くそったれがー!!」
なんて叫びながらやっと壁までたどりつき、
壁に寄りかかりながら洗面所を目指す。



「はぁ、はぁ、っぐぅぅ。」
歩くたびに不快感が増してくる、
少しでも気を抜いたらそのまま倒れかねない。
下手をすると倒れたまま永眠なんて事もあるんじゃないか?
と思えるほどにつらい。
「くはぁっ、とりあえずここ天国ではないんだろうから
生きているんだろうけど、地獄じゃないよな・・
まさかなそんなに悪い事してない・・と思うんだけど。
でもこれだけ体をぼろぼろにすると地獄でもすぐに順応できそうだな。」
などと毒づきながら歩いていく、もとい這っていく。
「でもこれだけ頭が回っていればとりあえずは大丈夫だな。」

悪戦苦闘の果て何とか洗面所にたどり着き、
「ぷはぁー。少し頭もさえてきたな。よしもう一度現状を把握しよう。」
「まずは俺ちゃんと生きてる。これは問題ない。」
これに問題があったら何も始まらないな、などと思いつつ
「次に体は・・・これいったいなんだろう?
おれ確かに体を剣でずたずたにされて
いや待て俺、順を追って考えよう、確か言峰を倒してそれから・・」
そのとき頭の中で撃鉄がおりて、一瞬で頭の中が真っ白になった
「イリヤ!!」
思わずそう叫んでいた。
「くっ、イリヤ、イリヤはどうなったんだ。クソとにかく冷静に考えよう。
 確か聖杯を壊そうとして最後の投影をした時に・・・」
そうだ聖杯を俺は壊してない。じゃあ聖杯はイリヤが止めたのか。
「あの時イリヤを止められなかった。もうイリヤはいないのか・・」
んっ、となると
「魔術師が夢の中で何か言ってた気がするが、あれは夢じゃないのか。
じゃあ俺を助けてくれたのはイリヤなのか?」
そんな俺が考えても答えなど出るわけがない、出ないとわかっていても
考えずにはいられないことを考えていると
「イリヤ・・・・・・俺まだおまえに何もしてやってないのに・・
まだいっぱいしてやりたいことがあったのに・・」
そう呟いていて、頬を伝う熱い物に気がつき、
「まだ流れる分があったんだ」
「シロウ・・・目が覚めたんだ。」
と、突然後ろから声をかけられた。
その声を忘れるはずがない
誰かもわかる
今すぐ振り向いて無事を確かめたい
できることなら一緒に笑いたい
「俺たち助かったんだな」
そう笑顔で言いたい

でも

首が動かない
怖くて後ろが振り向けない
今の俺でも後ろを振り向くことはできる・・・できるが
「イ、リ、ヤ」
そう呟くのが・・・精一杯だった。

「なあに、シロウ?」
そういいながら少女−イリヤは俺に後ろから抱きついてきて、
首を支点して前に回り込んだ。
「・・イリヤだよな、イリヤなんだよな」
そうイリヤの目を見つめて言うとイリヤは
「むぅー、私が凛や桜に見えるのシロウは」
などと不満げな声をあげながら俺を睨んでいる。
「見えるわけ無い、おまえはどう見てもイリヤだ。
そのきれいな白い髪も、ちっちゃな体も見間違えるわけ無い。」
そう言うとイリヤは喜びと不満の入り交じった不思議な雰囲気で
「シロウ前者は嬉しいけど、後者はレディに対して失礼よ。」
なんてこれまた純粋に優しく微笑みながら睨むという器用なことをしている。
でもそんなやり取りだからこそ、
「俺たち、生きてるんだな」
それを心の底から理解させてくれるのだと思った。
「えぇ、私がどうして生きているかは後で話すけど、
シロウが生きているのは全部私のおかげよ。
心から感謝して、全身全霊で払ってね。お兄ちゃん」
なんてイリヤが嬉しいがかなり不思議なことを言ってくれた。
(後半はかなりやばいが)
するとイリヤが不思議そうに俺の顔をのぞき込んで、
「シロウ泣いてるの?」
と言われて自分が泣いていたことを思い出した。
「あぁ、イリヤがいなくなったと思ったから。」
するとイリヤは縮こまったり、明後日の方を見たり、赤くなったりと
いろいろと表情を変えて困った顔をしていたが、
「ありがとうお兄ちゃん」
なんて可愛いことを言って今までで一番の笑顔で俺の胸に顔を埋めていた。
あぁーイリヤに面と向かって『お兄ちゃん』なんて言われたら
“今顔真っ赤なんだろうなぁ”なんて思いつつ
俺は何も言わずにイリヤの頭を撫でていた。

そのまましばらくしているとイリヤが突然、
「あっそうだこんな事してる場合じゃなかったんだ、
でもいいやシロウといた方が幸せだし。」
などと嬉しいが聞き捨てならないことをおっしゃった。だが今はそれより、
「なぁイリヤ他のみんなはどうしたんだ。あの、その、特に桜は・・・・」
後半はもう聞こえないような声だったが、
今まで気にもならなかったというより
気にできなかったことを余裕ができたことだし聞いてみた。
「んー、みんな居間にいるよ。」
などと不満たらたらに教えてくれた。はて? 
俺はイリヤの機嫌を損ねるようなことをしただろうか。
などと考えながら、
「じゃあ、一緒に居間に行こうか。」
「うーん・・・今は行かない方がいいと思うよ。」
「なんで?」
と当然の疑問を口にすると、
「今あそこは戦場なのよ。たぶんあの戦場に入ったら
シロウはショックで気絶するだろうし、
シロウの参戦で戦場はきっと地獄とかすは」
などと大変物騒なことを口にされた。
イリヤが賢いのはよく分かっているから、
きっと居間はすごいことになっているんだろう。
本当に俺はショックで気絶するかもしれないという悪寒が背筋に走った。
でも俺がショックで気絶する程っていうのはいったい?
「なぁ居間で何が起こってるんだ」
「ただの女のいがみ合いよ。まぁ私以外は
レディとは呼べないようなのばかりだから、
醜態をさらして居間はかなりひどいことになってるわよ。」
「女のいがみ合い? 遠坂と藤ねぇか?」
「行けば嫌でも分かるから、行きましょうか」
などとこの後起こることが楽しみなのか少し笑っている。
そうその遠坂そっくりの邪な笑みを浮かべるイリヤを見て
−居間に入ったら取り返しのつかないことになりそうだな−
などと本能が告げいるのがわかるが、今は他に選択肢がないから、
覚悟を決めてイリヤと一緒に今に向かおう。
が、立ち上がろうとすると
「あっあれ?」
ガッキーーン
ととてもいい音がした
どこからだろうと考えるとすぐに分かった
−頭がもの凄く痛い−
「シロウまだ体が完全に馴染んでないんだから一人で歩くのは無理よ。」
「えっ体が馴染んでないって、どういうこと。」
「そのままの意味よ。今のシロウの体は
元のシロウの体じゃないっていうだけよ。」
「・・・・・・・・・」
「どうしたの口をぽーとあけて。」
俺は何を言うべきか
「あっ駄目だ目眩がしてきた。」
今イリヤの発言を深く考えると、居間に行く前に頭が“ぽんっ”
なんていい音を立てて意識が飛びそうだから、追求は後にしよう。
「イリヤその話は後でしよう。」
なんて今にも消えてしまいそうな声でイリヤに告げた。
「そうねぇ〜、今した方が衝撃は少なくてすむと思うけど
シロウがそう言うなら居間で全部しちゃいましょ。
シロウがショックを受ける姿を見たい気もするし。」
などと先程ではないがもの凄い“負”の笑顔をしている・・・

−居間に行くのはやめろ−
−居間に行くのはやめろ−
−居間に行くのはやめろ−

まずい聖杯戦争で培った本能が行くのをやめろと告げている。

−行けば後悔する−
−行けば後悔する−
−行けば後悔する−

どうしよう行くのやめようかな・・・
なんて悩んでいると
「お兄ちゃん早く行こうよ。」
なんて“純粋な”笑顔言ってきた。
『ここで引き下がったら男じゃない』などと後悔の材料にしかならないことを心で決意して
俺はイリヤに肩を借りて居間に向かった。
「・・・・・・・・」
こうして静かな気分でイリヤを見てみると
『妹がいたらイリヤがいいな』なんて本気で思ってしまうぐらい
イリヤは・・・・・その可愛かった
ちゃんと口にしたらイリヤはどんな反応するんだろうか
「これは今度の楽しみにとっておこう。」
「どうしたのシロウ。どこか痛いの?」
いや、その、そんな間近で心配そうに見つめられると男の子としては
平静を保つのに必死なのに
「ふ〜んやっぱりシロウって純情なんだ〜」
もう肩を貸してくれているというより、俺に抱きついている。
お願いだから白い悪魔の名を欲しいままにできる
邪な笑顔を向けないでくれ〜!!



to be Continued




あとがき
本編の桜ルートtrueエピローグの前の補完の予定が
まるで違う方向に走ってしまった。
桜が出てこない桜ルート・・・次回からは桜中心で行こう
どうしようイリヤが生きている以上もうなんでもありかな〜
まぁとりあえず題名の通り『みんな一緒』です!!
みんなです!!
でも神父さんと金色の人はどうしよう?
アサシンはどっちだろう? 侍? 真?
なるようになるさ!!


記事一覧へ戻る(I)