月姫応援クロスオーバーss
黒猫のための殺人舞踏
「この道で良いんだっけ?」
周囲を見渡しながら隣を歩く蒼髪の少女に話しかける。
少女は手に持った雑誌と周囲をキョロキョロと見比べ、頷いた。
俺は今、ちょっと遠出をしている。コレにはちょっとした理由がある。あれはいつものごとくアーネンエルベでレンとケーキを食べていたときだった。
〜回想〜
「レン、どれが食べたい?」
『────────これ』
レンは、メニューのチーズケーキを指差した。
「レンは本当にチーズケーキが好きだな。」
『────シキは?』
「俺は、レンと一緒に食べる料理なら何でも好きだよ。」
レンは何故かほんのりと頬を染めていたが、微笑んでくれた。
うん、連れて来て良かったな。俺はレンの頭を撫でつつ思った。
その頃、店内最奥のボックス席
「兄さん・・・。私にはあんなことしてくれないくせに。」
「遠野君。あんな小さな子に手を出すとは感心しませんね。」
「む〜。レンばっかりずるいにゃ〜。」
いつものメンバーがいつものように志貴を監視していた。
しかも全員サングラス+マスク+帽子着用。
どう考えても怪しすぎることこの上ない格好なのだが、何故か誰も彼女たちに気付く事は無かった。
〜志貴の席〜
「レン、おいしいかい?」
コクン。
頷いて肯定を示すレン。
無邪気に目の前のケーキを食べる様子は子供そのものなのだが、どこか高貴な雰囲気を醸し出しているのは彼女の生まれ故なのだろうか?
そんなことを考えていると、顔を見上げたレンと目が合った。
『────食べる?』
すると、フォークに刺したチーズケーキの一片を差し出してきた。
どうやらずっと見ていたのが、ケーキを食べたいからだと思ったらしい。
しかし、せっかくの好意なのでありがたく頂くことにした。
『────アーン。』
差し出されたそれに口を近づける。
ぱくっ。もぐもぐ。ごっくん。
『────おいしい?』
「うん、おいしいよ。そうだ、俺のも食べるかい?」
『────いいの?』
「いいよ、お返し。」
何となく食べたそうな表情してたからな・・・。
苦笑しつつフォークでチョコレートケーキの一片を取ると、
「ほら、あーーん。」
同じようにレンに食べさせようとした。すると、
ガタッ!ガタガタ!!ドタン!
?どこかで、身を乗り出しすぎて椅子ごと倒れたような音が聞こえた。
が、気にせずにケーキをレンの口に運ぶ。
ぱくっ。
「おいしいかい?」
コクン。
ふと、レンの頬にチョコクリームがくっ付いてしまった事に気付いた。
すっ。
クリームを指でぬぐってそのまま自分の口に運んだ。
かああ〜〜〜
何故かレンの顔が真っ赤になったように見えるが、気のせいだろう。
しかし、ちょっと前には考えられなかったな、こんな風にのんびり平和を満喫できる日が来るとは。
────吸血鬼騒ぎで死に掛けていた頃を思い出す。
でも、だからこそ、今この時が長く続けば・・・。
ゾクッ!!!!!!!
急に感じた殺気に思わず体が緊張する。
な、何だ?この世のものとは思えない殺気が・・・。というかロアやネロなんか目じゃないぞ?もしや新たな死徒?
なんて現実逃避してみる。いや、分かってるんだけどねこの殺気。何て言うか日常的に受けている感じのコレ。
もう振り返らなくても分かる。秋葉に先輩にアルクェイドか・・・。
「兄さん」
「遠野君」
「志貴」
「「「覚悟はいい(ですか)?」」」
振り返るとそこには鬼がいた。しかも表面上は笑顔なのがさらに空恐ろしい。
HAHAHA、死んだかな俺・・・(汗)。
何故か怒り120%の3人を前に覚悟を決めた俺の前に、蒼い髪が立ちふさがった。
「レ、レン?」
レンだった。どうやら俺をかばっているらしい。強い意志のこもった瞳で3人を睨み返している。
「遠野君は大人しくしていて下さいね。」
「レン、どきなさい。」
アルクェイドが軽くレンに殺気を向けた。しかしレンは怯む事無くにらみ続けている。
しかし俺には気付いてしまった。コレは虚勢だ。その証拠に足がわずかながら震えているし、呼吸が不規則になっている。
「いい機会です。兄さんに纏わり付く虫の一匹をここで排除して差し上げます。」
秋葉の髪が赤く色付いていく。ちょっと待て、ここでそんなもん使うのか?
「やめろ秋葉。ここがどこだか分かってるのか!?」
レンを背に庇いつつ説得を試みる。
「安心してください兄さん。すぐ兄さんの番ですから。」
説得失敗。取り付く島もなし。
というか死刑宣告をされた気がする。
「奪いつくして差し上げます!」
秋葉の檻髪がレンに伸びる。
「くっ。」
ざんっ
眼鏡を急いではずし七ツ夜で髪の線を切る。
まずい、秋葉のやつ周りが見えなくなってる。このままじゃ本当に殺しかねない。
そう判断した俺は、テーブルをひっくり返して秋葉の視界を隠し、ひるんだ隙にレンを抱えて逃げ出した。
「「「お、お姫様抱っこ!?」」」
アーネンエルベから脱出し、少し経って今来た方向から爆発音のようなものがした気がするが、気のせいだと思いたい。
結果から言えば、アーネンエルベは半壊。賠償金は遠野が払うらしいが、しばらく営業はできないだろう。
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ということがあり、今俺は少し遠出してケーキを食べに来ていると言う訳だ。
別にケーキを食べるだけなら買って食べればいいのだが、ちょうど有彦からこのあたりにある旅館の無料宿泊券をもらったため。レンを旅行に連れて行くのもいいだろうと、ついでに一泊して帰るつもりなのだ。
琥珀さん以外には無断で来たのでちょっと後が怖い。
「ん?ここか?」
雑誌の地図を確認する。どうやらここで間違えないらしい。
「じゃあ入ろうか。」
そう言うと、喫茶店のドアを開けた。
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その頃、そこから少し離れた場所で・・・
「アーチャー、感じる?」
少女は一人にもかかわらずその口から出てきた言葉は、誰かに問いかける言葉だった。
「ああ、だがサーヴァントではないな。」
しかし、誰もいないはずの虚空から男の声が聞こえる。
「確かに強い魔力を持ってはいるが、どうやらただの使い魔のようだ。」
少女は腕を組んで考えるような仕草を取った
「(確かに、魔力が強いとは言ってもアーチャーとは比べ物にならない。
だから、サーヴァントでないことは始めから私にだって分かっていた。問題は────、)」
「問題はその使い魔のマスターよ。これだけの使い魔を従えているって言うことは『参加者』であることはほぼ間違いない。なのに使い魔の近くからは魔力を全く感じない。どう思う?」
「魔力殺しを使っているのか、使い魔が単独行動しているのか・・・、どちらにしても。」
魔力殺しを使っているなら、気配を消せない使い魔と一緒にいるのがおかしい。また、もうすぐ戦争が始まろうというのに使い魔が単独行動というのもおかしい。ということは────
「『罠』かしら?」
それが一番可能性が高い。そうでなければ、誰がわざわざ自分の手の内をさらすようなまねをするだろうか。
だとしても、どんな罠だろう?こんなリスクだらけなことをして何になるのだろうか?
「どうする、凛?」
「────距離を取って様子を見るわ。最低でも使い魔は確認できるし。」
令呪は反応していない。ということは近くにマスターはいないということ。まだマスターになっていないのだとしてもアーチャーがいれば魔術師に負けることは無いだろう。
そう高をくくって、私達は使い魔の気配の方向へ歩き出した。
あとがき・第一話
読者の方々の「どこがクロスオーバーやねん!」
というお怒りの声が聞こえてくるようです。
とりあえず最後にちょろっと出したのでそれで許してやって下さい(ヲイ
次からはクロスさせますんで(汗
一応次はもう出来てるんですが、凛以外のキャラが全く分からないので、下手をするといきなり終わるかもしれません(激汗
なので、キャラ設定とか裏話とか、必要な情報を教えてくれると助かります(願