二人の想い M:衛宮士郎 傾:らぶ


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1: みなせ (2004/03/02 22:52:10)

二人の想い


ふうー、今日もいい汗をかいた。時刻は8時前、夕食の支度は汗を流してからでもいいだろう。
と、すれば一応桜に声を掛けておいた方がいいかな。

「おーい、桜ー」

「何ですか先輩?」

「ちょっと汗を流してくるから夕飯の支度始めちゃっててくれるか?」

「はい、ゆっくりしてきていいですよ先輩。」

「いや、そういうわけにはいかない昨日も任せちゃったからな。今日は手伝わせてくれ」

「そういうことなら、お待ちしてますね先輩」

うん、桜は今日も元気いっぱいで冷蔵庫を覗いている。台所はしばらく問題ないだろう。
部屋に寄り着替えを取り浴室のドアを開けようとした時、台所の方から桜の声がした。

「あ、先輩そういえば姉さんがお風呂使っているかもしれませんよ?」

「え?」がちゃり、何だ鍵掛かってないじゃないか。瞬間時が止まった

「え?」「あ」

「えっと、何やってんだ遠坂?」

「何ってお風呂入ってたのよ!じゃなくて、いいから早く出てドア閉めなさいったら!」

「え、あ、ご、ごめん!」

はー、参ったこんなの不意打ちだ。湯上りの火照った桜色の肌、しっとりと濡れた髪、
大きくはないが形のよい胸が脳裏に焼きついている。

「綺麗だったな…、ば、ばか何言ってるんだ俺は。」

いかんいかん、色即是空、空即是色…よし、とりあえず治まった…
仕方ない風呂は後にして先に夕飯の支度を済ませちまおう。

「桜ー今日の夕飯は何だ?」

「早かったですね先輩。やっぱりまだ姉さん使ってましたか?」

「あ、ああ、まだ入ってるみたいだったな」

「そうですか、先輩?顔赤いですよ?」

「え、あ、何でもない!それより今日は鍋か?」

「はい、雷河お爺さまの所から蟹を戴いたので。」

「そっか、あとでお礼言っておかなきゃな。」

「そうですね」

そうだな、これだけ立派な蟹があるんだ冷蔵庫には確か鮭もあった筈だし石狩風で行こう。
そうと決まれば鍋に水を張って沸騰する頃に味噌を溶いてどんどん食材を放り込んでいく。

む、何か…視線を感じる。これは、振り返ると顔を赤くしてこっちを見てるのが一人視線が合うと目を逸らし
一旦目を逸らしてまた視線を戻し視線が合うと目を逸らす。む…

「桜あと任せちゃって良いか?」

「あ、はい、後は味調えて火加減調節するだけですから」

「悪いな」

「いえ」

さて…

「あれ?セイバー今遠坂居なかったか?」

「凛なら今庭の方に行きましたが、また何かしたんですかシロウ。」

「な、何かって何だよセイバー」

「さぁ、それよりシロウご飯はまだですか。」

なんてにやける騎士王、むぅ最近あいつに似てきたんじゃないかセイバー

「もうちょっとで出来るからそれまで大人しくしてな」

「はい、もぐもぐ」

今からご飯だって言うのに、あんなにみかん食べてるよ…恐るべし
さてと、遠坂は庭の方だったな。風呂上りなのにあの格好で外に居たら風邪ひくぞまったく。

「とおさかー…」

庭に出るとそこには見知らぬ少女が居た。思わず言葉を失い見とれるしか出来ない俺
なんていうか…乾ききっていない髪を下ろして月の光に照らされて儚げに佇むその少女は、俺の知らない
『遠坂 凛』だった。

「とお…さか?」

「ん、あぁどうしたの士郎?」

「いや、綺麗だなって見惚れてた。」

「ば、ばか、あんたその歯に衣着せぬ物言い直した方が良いわよ。」

「?何でさ?」

「はぁ、ま、いいけどね。」

…その、嬉しかったし。何て顔を真っ赤にして言うもんだからそこで焼き切れた。

「とおさかっ!」
瞬間俺は目の前の少女を抱き締めていた。

「ちょ、どうしたのよ士郎。」

「い、いや、何でもない。寒そうだなって思っただけだ!」

ほら、これ着とけなんて言いながら持ってきた上着を渡す。

「ん、ありがと」

やっぱり士郎は優しいな…。そんな言葉が聞こえた気がした。

「で、こんな所で何してたんだ遠坂?」

「あ、えっと、ほら月が綺麗だなーって」

「?あぁ、綺麗だが何焦ってるんだ?」

「何でもないわよ!」

「?む、どうしてそこで不機嫌になるんだ変なやつだな。」

「はぁ、何でもないわよ。」

そーよ、こいつはこういう奴だったわ。何て一人で唸っている。
むー、俺なんか言っただろうか。


「遠坂、俺なんか変な事言ったか?」わからないんだが…

「何でもないったら!」

「なによあんたにとって私の裸なんて意識するまでもないって訳!?」

「な、な、な何言い出すんだお前は!」

「何ってさっきのことよ!こっちだけ意識しちゃって馬鹿みたいじゃない!」

あー、その、なんだ。要するにこいつはさっきの風呂上りの着替えを見られて意識してたって事か。
そこまで考えて今度は、こっちが真っ赤になる。

「いや、待て遠坂。意識してないって訳じゃなくてだな、その…
意識して顔も合わせられないから、がんばって忘れようとしてたんだよ!」

ったく、なのに思い出させやがってこれじゃまともに顔も見れないじゃないか。
と、ふと月が翳った。
「え?」
顔を上げると遠坂の瞳があった

ちゅ、そして唇にやわらかく少し湿った感触。

「なっ、と、とおさか!」

「えへへ、キス…しちゃった。」

「な、なにすんだお前は!」

「忘れなくて良いよ。実はね、士郎があんまり普通にしてるから私に魅力ないのかなーって
ちょっと落ち込んでた。」

あははーなんて笑う彼女、その姿がすごく愛しくて言葉を失う。
だめだ、今は言葉にしなちゃいけない時だ

「な、魅力がないなんてそんなわけがあるか!」

「士郎?」

「遠坂は、ずっと前から俺が憧れてた女の子で、付き合ってみたらトンでもないいじめっ子で、かっこいいやつだったけど…」

ねぇ、それって褒めてるわけ?貶してる訳?なんて声が聞こえるがそんなのは無視だ。まだ伝えたいことを言い切ってないのだから。

「それでも間違いなく遠坂は遠坂で俺の好きな女の子で…俺にはもう遠坂しか考えられないんだから。」

「そっか、うん安心した。」

そう言ってとびっきりの優しい微笑みを浮かべる少女。

「ねぇ、もう一回キスしよ?今度は…士郎からして。」

頬を染めてそんなことを言う彼女に、俺はありったけの気持ちを込めて…キスをした。




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あとがき


凛の風呂覗きイベントを自分なりに妄想してみた訳ですが、後半もはや風呂なんて関係なくなってるな^^;
SSは初めてなのでお見苦しい点はご容赦下さい。m(_)m
感想、修正点等戴けるとありがたいです。


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