イリヤたんはぁはぁする小説は俺が書く。


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1: ちぇるの (2004/03/02 17:50:09)

「シロウ起きろーーっ!」
 ばぁさ、といつも通りの掛け声と布団を剥ぐ音。
 でもさ。ここ最近冬木市には珍しく寒い日が続いている。そんななか暖かい布団から抜け出すのはどうかと思う。
 人類は毛皮を捨てて服と布団を手に入れたのだ。この至高の英知を否定することはないのだ! 合掌。
「む〜・・・ここ最近こんなんばっかだなぁ」
 と、少しばかり不満そうな声が聞こえて、その気配がゆっくりとこっちに近づいてくるのがわかる。
「ほら、早く起きてよ、シロウおにいちゃん」
 軽く頬に暖かい感触。
 慌てて目を覚ますと、えへへ、と可愛らしく微笑む銀髪の少女がそこにいた。
「うぅぅ、って言ってもなぁ。最近寝不足なのは主に寝るのが遅いからなんだぞぅ・・・」
 俺がそう呻くと、昨日のことを思い出したのか顔を真っ赤にする少女。
 うん。そういうところもまた可愛い。
「とりあえずおはよう、イリヤ」
「う、うん。おはようシロウ」
 と顔は真っ赤のままで律儀に答えるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと言う名前の最愛の少女が微笑んだ。


 イリヤの体をアインツベルンの秘法でほぼ人間の状態に戻すのに二年近く費やした。魔術師としての資質は随分と弱くなったらしいが、人として真っ当に天寿を迎えられる体にはなったらしい。
 が、それはそれとして当面の間体を安定させるために定期的な魔力を供給する必要があるらしく、まあ、その、なんだ。衛宮士郎と言う魔術師の、その、ソレが使われている。
 いや、使うと言う表現は良くないかもしれない。大体、別に義務だからやってるわけじゃなくて、本当にイリヤが大切な人だからやっているのだ。うん。
「むむむ、士郎がなんか不穏な表情の変化させてるぞ?」
 と、藤ねぇが睨む。
「先輩どうかしたんですか?」
「いや、どうもしない」
 今考えてたことを口に出すのもどうかと思う。
「イリヤとの昨日の逢瀬を思い出していたのでは?」
 ぶっ、と思わず俺と桜は噴出す。藤ねぇはなんか良く分かっていないご様子。
 もはや、大分この日本の風景に馴染んだメイドさんの一人の台詞にもう一人はなんか、食事中に話すようなことじゃないでしょう、と黙々と箸を進めていた。
 ちなみにフォローに回る気がないのか、余裕がないだけなのかイリヤは顔を真っ赤にして止まっていたりする。
「あ、ああああ。いや、その違うんだぞ。うん」
「むむむ、逢瀬ってなんなのかな?」
 疑問符を浮かべる藤ねぇにメイドさん一号がぼそぼそと耳打ち。うわああ、教えなくていいから。ていうか教師としてその程度の語彙力ないってどうよー!?
 だんだんと顔が赤くなっていき、その後で一瞬固まる藤ねぇ。この家にはしろいあくまが二人いる。大きい方が本命だ。
「ええい、この悪魔っ子! そこに直れーーーーーーーっっ!」
「な、なんでよ・・・!」
「うちの可愛い士郎とところかまわず時かまわず、ええええええいうるさい問答無用!」
 藤ねぇが意味分からない。
 が、イリヤの方もいっぱいいっぱいだったのか顔を真っ赤にさせて立ち上がり臨戦する。
「わ、私はシロウともう、ふかーい関係なんだからいいの! こ、ここ恋人だよ!?」
「みとめーーーーーーっん!」
 なんだその強引な理論は。
「・・・シロウ。味噌汁の味付けがちょっと薄い」
「私は濃いと感じましたよ」
 だから、その中間に合わせてるんだってば。
 喧々囂々とするイリヤと藤ねぇの会話を尻目に、ああ、まあそこそこ幸せだなーなんて考えたりしている。


「イリヤも学校行くのか?」
「そういうシロウは大学?」
「そんなところ」
「う〜、学校ってこなんで毎日いかなきゃなんないんだろうね」
「身につかないからだ」
「そりゃそうなんだけどね」
 と少しばかり大きくなったイリヤは綺麗な髪をふぁさり、と振り払う。
「まあ、がんばれよ」
「むー、頑張ってるよ」
 二人で靴を履いて途中まで一緒。
「じゃあな、イリヤ俺こっちだから」
「はーい。また後でねー」
 にぱり、と笑う少女を俺はほほえましく見ていた。


 まあ、その最後の言葉にこういうトリックがあるとは予想もせずに。
「というわけでお弁当一緒に食べよー」
「待て、イリヤ」
 ? と疑問符を浮かべるその仕草も愛らしい、ってそうじゃなくて。
「あのな、イリヤ。ここは大学だぞ。というかお前の学校から往復一時間かかるんだぞ?」
「知ってるよー」
 といいながら俺の作った弁当を広げる。
 なんか周りから「げげ、衛宮が銀髪女子高生とお昼をともに!?」「エロ学派め・・・」「やだ、士郎君ってああいう趣味だったのね。ちぇき」とか聞こえてくる。
「いや、いいんだけどさ・・・」
 もうあきらめてるから。
「あははは、シロウももの分かりがよくなったなー」
 そりゃ毎日赤い悪魔と格闘してきたから。
「じゃあ、はい♪」
 と、にこやかに笑いながらイリヤは俺に玉子焼きを持った箸を差し出してくる。
「? なんだ、これ」
「あーん♪」
 どよ、と一斉に周りが声を上げた。
「あ〜〜〜〜ん♪」
 ぐはっ、いや。可愛いよ? うん。
 でも、ここでそれをやれと?
「あ〜〜〜〜〜〜〜ん♪」
 しろいあくま。
 分かっていたことだったけど。

 まあ、でもこんな悪魔みたいな天使みたいなイリヤが誰よりも大事なんだからしょうがないじゃないか。
 幸せな時間は大切に。

 追伸:エロ学派の理事長に任命されました。なんでさ・・・。


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