四角関係の昼食事情の巻(M:士郎,傾:壊れギャグ


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1: 非国民 (2004/03/02 03:14:28)

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※拙作「サーヴァント一家の平凡な朝の風景」「セイバー、デートへ良くの巻」の続きとなってます。
読まなくても構いませんが、呼んでおくと色々分かり易いと思います。
※壊れSSです。苦手な方は今すぐ左上の戻るをクリックする事をお薦めします。
※このSSは思い付きで書かれています。
 「この設定はおかしい」と言う方は諦めてください。
※キャラが不当な扱いをされる事がありますがご了承ください。
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「このままじゃまずいわ」

開口一番。
遠坂凛はそう言い放った。

「同感です。
 このまま放っておくとセイバーさんに先輩を奪われかねません」

凛の言葉に頷いたのはその妹、桜。

事の発端は先日。
士郎とセイバーのデートだ。

二人は当然のように尾行をし、妨害をした。
しかしその全てがことごとく裏目に出て、妨害をするどころか逆に二人の仲を進展
させてしまう事となった。

大事な所で大ポカをする、遠坂の血をこれほど憎く思ったことはない。

「セイバーが髪形を変えてきたのは大きかったわね。
 まさかあそこまで印象が変わるとは……」
「先輩は鈍感ですし、そう簡単に進展する事なんてないと思ったのが間違いでした」

何にせよ、士郎とセイバーの仲が急接近した事は事実。
その事実が、本来恋敵である筈の二人を協力させていた。

「妨害が駄目なら……」
「なに、何かいい考えがあるの、桜?」

考え込むように呟いた桜の言葉に反応する凛。

「……やっぱり、正攻法しかないんじゃないでしょうか?」
「……どういうこと?」

凛はとっさに聞き返す。
正直、少しテンパっていた。

「自分の魅力を最大限に引き出して、先輩に迫るんですよ。
 そして既成事実でも作ってしまえばもうこっちのも…」

言って、途中で口をつぐむ。
凛は少し考えて、頷いた。

「なるほど、一理あるわね」

押して駄目なら引いてみろとはよく言うが、逆に言えば、引いて駄目なら押してみろ、
ということか。

勿論、二人が今まで押さなかったか、と言うとそうではない。
だが、その時はまだ余裕があったので、それ程過激に迫る事は出来ずにいた。

しかし今は違う。
放っておくとすぐにでも士郎はセイバーとくっついてしまいそうで、焦っていた。

二人の双眸に、決意の炎が燃えさかる。

「待ってなさいよ士郎。あんたなんかメロメロにしちゃうんだから―――!」
「待っててください先輩。すぐにでもメロメロにしてあげますから―――!」

普段は「似ていない姉妹」と言われる二人だが、ここ一番で、やはり二人は姉妹だった。



サーヴァント一家の平凡な日常
〜四角関係の昼食事情の巻〜



四時間目の終わりを告げる音が響く。

「それじゃ、今日はこれでおしまいね。
 日直、お願い」

そう言うのは藤村大河、自称士郎の姉。

「きりーつ、礼」

日直の女子がそう言い、昼休みが始まった。

体育祭でも出さないような超スピードで教室を後にする漢たち。
男子は数人、女子は半分程度が教室に残る事になる。

残った数人の内の一人、衛宮士郎は巾着袋を持って立ち上がった。
授業中、狙うような視線が絡みついていた巾着袋。

言うまでもなく、中身は弁当である。

巾着袋を隠すように、忍び足で教室を出ていこうとするが、呼びとめられる。

「衛宮くん、どこいくのー?
 あたし達とお弁当のおかず交換しなーい?」
「あ、ずるーい。
 あたし達と交換しようよー」

途端に集まってくる視線に焦る。
勿論、女の子から昼食を誘われるのは年頃の男として嬉しい事だが、
朝っぱらから丹誠こめて作った弁当をコンビニ弁当と交換されてはさすがに割に合わない。

断ろうとして口を開く。

「――いや、今日は「先輩お弁当作ってきました食べてください!」

物凄い勢いで現れる少女S。
どのくらい勢いがあるかと言うと、ドアの前に立っていた士郎を体当たりで吹き飛ば
すくらいには勢いがある。

きりもみ回転しながら床に叩き付けられ…しかし弁当は死守。
超バランスで、恐らくこれなら具が片寄ったりなどという失態は免れそうだ。

「ああっ、先輩、大丈夫ですか!?」

自分の体をクッションにして弁当を死守した士郎。
当然のようにクッションにした体へのダメージはで大きかった。

「ぐ……さ、桜……」
「ひどい……誰がこんな事を!」

お前だ、お前。

この場にいる誰もがそう思った。
だが物凄い目つきで教室全体に威圧をかけてきたため、誰もそれを口にする事は
叶わなかった。

「は―――ぐ」

渾身の力を振り絞って立ち上がる。
どうやら「ギャグ漫画の登場人物が死ぬことはない」の法則が適用されたようだ。

「さ、桜……何かあったのか?」
「いえ、ただお弁当作ってきたので先輩に食べて欲しいな、と思って、思わず」

突き飛ばしちゃいました、と照れながら言い放つ少女S。

思わず、と言うには少し威力が大きすぎたが、そこは正義の味方を自称する士郎。
なんら疑いなく受け答えをする様は周囲の人々を感動させた。

「そっか、有り難う。
 でも、今日は俺も作ってきたから、遠慮しておくよ」

辺りから溜め息が漏れる。
それを不思議に思ってか、士郎は辺りを見回して首をかしげた。

桜は一瞬残念そうな顔をするが、すぐに気を取り直して口を開く。

「じゃ、じゃあ、一緒に「士郎お弁当作って来たから食べて!」

物凄い勢いで現れる少女R。
どのくらい勢いがあるかと言うと、ドアの前に立っていた桜を体当たりで吹き飛ば
すくらいには勢いがある。

きりもみ回転しながらふき飛ぶ桜。
士郎は桜の手から離れて飛んできた弁当を思わず死守。

勢いを回転の遠心力に変えて殺し、ゆっくり静止。
大成功。これならきっと中身も無事――――

桜は床に突っ伏して、ぴくりとも動かない。

時が、止まった。

この事態を作った張本人は、口もとを引きつらせて頬に汗を一筋垂らしていたりする。

「あー……さ、桜?」

R――凛は恐る恐る桜に声をかけて――

「な に を するんですか姉さん!」
「ひぇっ、い、生き返った!?」
「死んでませんッ!!」

話について行くことが出来ず置いてけぼりになる士郎。
頭を掻いてみたりしてみる。

「だいたい姉さんはいつもいつも…」
「何よ、それを言ったら桜だって…」

恐る恐る、といった風に桜の重箱弁当を置いておく。
小声で、すっごい小声で「桜、ここに置いておくからな」と言ってみたりする。
もちろん無反応。それに満足げにうなづく。

忍び足で教室を去る。

「・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・!」

まだ聞こえるよ。

早めに生徒会室やら屋上やらに逃げて置かないとヤバイ。
そう思い、歩きだし…いや、走り出そうとして、呼びかけられる声に気付いた。

「シロウ」
「あれ、セイバー?どうかしたの?」
「いえ、その……」

セイバーは赤くなり、もじもじしている。
正直に言って、可愛い。
もうなんかもうひどいくらい可愛い。

「出来れば、昼食を一緒にと、……思って」

言って、うつむいてしまった。
ヤバイ。ひどい。もうなんかすごい可愛い。

「・・・・・・・・・」
「……? シロウ?」
「あ、ごめん、ぼーっとしてた」

途端不機嫌そうに顔を歪ませる。
すぐに表情が出る素直な所が可愛い。
そう、思う。

「セイバー、じゃ、屋上に行こう。
 あそこなら邪魔もあんまり入らないし」

驚いたように顔を跳ね上げ、しかしすぐに微笑む。
その頬は赤く色づき、白い肌に良く映えた。

「―――――はい!」

手を取って走りだす。
顔が熱い。でも、気分は良い。

躍りだしそうな鼓動を押さえて、二人は屋上に駆け上がった。










「―――で、いつの間にか士郎いないし」
「―――はぁ」

二人同時に溜め息一つ。
結局凛と桜は士郎の机でお互いの弁当をつつき合っていた。

「――あ、この卵焼き美味しい」
「――ああ、これは自信作なんですよ」

―――――しばし、無言。

「ねぇ、桜」
「なんですか、姉さん」

遠くをみるような目で呟く。

「なんでこう、やる事なす事全部空回るのかしら―――――」
「さぁ……それが分かれば苦労しないんですけどねぇ―――――」

頑張れ凛、頑張れ桜。
報われる日はいつかきっと多分もしかすると来る―――かもしれない。


続く。のだろうか?(聞くな)

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あとがき
第3弾となります、非国民です。
今回はサーヴァントほとんど登場しませんでした……副題の意味無いなぁ(笑
ま、連作って事で。

今回は凛と桜に頑張ってもらいました。
というか、ごめん二人とも(笑

次回、ネタあればまた書きに来ます。

それでは、また会う日を夢見て……
                              非国民でした


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