本日もまた「式神の謳う死」はお休みさせていただきます。
物語も終わりに差し掛かったというのに、このていらく。
読んでくださっている方々申し訳わけありません!
代理として、おなじみ理不尽ワールドをお送りします。
それでは、めくるめくる阿鼻叫喚の世界をお楽しみください。
これまでのあらすじ(CV:藤ねえ BGM:「ゴッドファーザーのテーマ」)
「fate/stay night」主人公、衛宮士郎は自らの夢の中で様々な理不尽に遭遇する。
作品を冒涜するガイキチワールドの中から、衛宮士郎は果たして脱出できるのか!?(多分無理)
ちなみに、あらかじめ言っておくと、作者はこの文章を書いている時点で丸二日寝ていない。凄まじくテンパった状態での構想0分、製作30分以内の行き当たりばったりストーリーは果たしてどういう方向性を辿るのか? それは書いている本人にも分からないのだった……(フェードアウト、暗転)
俺は目を覚ますと、なぜか身動きが取れないことを理解した。
「む?」
自分の体を眺めてみると、手首足首をガッチリと輪のようなもので固められていて、スポットライトのように闇の中にポツンとある診察台のようなものに乗せられている。
「なんだこりゃ?」
念のため、力を込めてがちゃがちゃと動かしてみるも、やはり無駄だった。とりあえず状況の把握を……
「ようやく目覚めましたね、先輩」
「桜か!? これは一体」
よく聞き知った声に反応して、声のするほうに振り返るとそこには、俺の後輩である間桐桜がなぜか白衣を着て、眼鏡をかけて闇の中から現れた。
「ふふふ、先輩、唐突ですがこれから手術を行ないます」
「な、なんだってーー!!?」
出し抜けに言ったその言葉に我ながら律儀な反応する。すると、桜は満足げに妖艶と微笑み、
「大丈夫ですよ、痛いですけど、全然大丈夫です。私が受けた今までの痛みの2割減ぐらいだと思ってください」
「それは断固として拒否したいんだが……」
「何を言っているんですか!? この改造手術が成功すれば先輩もさらに素敵な肉体に! そして、私の立派な奴隷になれます」
「勘弁してくれ、っていうか改造手術なのかこれ!?」
なんとか話をはぐらかそうとする俺に対して、桜は少し考えてにっこりと微笑み、
「ええ、ほら、あそこの三人を見てください」
と指をパチと鳴らし、その箇所をライトアップする。
そこには、セイバー、アーチャー、ライダーがいた。
なぜ上から糸で吊るされていて……と言うかよく見るとディティールが微妙におかしい。
セイバーにはなぜかV字の角がついているし、アーチャーは褐色の肌も真っ赤になっている。ライダーにいたってはなぜかバッタみたいなお面をつけさせられている。
「その、つかぬことを聞くけど、あれなに?」
「右から順番に、白い悪魔になった白い人、通常の三倍になった赤い人、改造手術を受けた蹴りを代表的な必殺技にする人です」
「……」
「……」
「いやだああああ!!助けてくれええええ!!」
「往生際が悪いですよ、では行きます」
パチと指を鳴らすと、診察台の周りにずらりと手術用具やらなんやらかんやらが上から降りてきた。
「麻酔を打ちますね〜」
と言いながら、注射器をピンと指で弾き、中の液を少し飛ばしながら俺の腕に打ち込んだ。
抗うことを忘れた溶けていく意識の中で、「ドリルがいいかな?」などということを桜が言うのを聞き、「チュイーン」とか「ガガガ」とか人体をどうにかするにはその効果音は物騒すぎるだろ、などと益体も無い感想を抱きつつも、俺の意識は完全に落ちた。
俺は朝の清々しい空気と光で目覚める。そうして忘れてしまった夢から目覚めた。
印象的な夢→朝のルーチンワークは割と定例化しているお約束なのだが今回はどうやら無かった模様。残念だと思うのだが……
「む、おはよう」
なぜ、一成が、同じ、布団に、寝ていて、あまつさえ俺の顔をじっと見ているの、だろうか?
「……」
「……」
「う、うわわわああああ!!」
俺はハンパではない速度で、絶叫しながら畳を這い、一成から離れる。
逃げたい、本当に。心底逃げたい。勘弁してくれ。これはまずい、純粋にきつい。
俺は、壁に寄りかかって、壁に爪を立てて、これ以上逃げ場が無いというのに、壁にさらに背中を押し付ける。
「む、なんだ? 衛宮、どうかしたのか?」
至極当然、いつものような口調で話しかける一成に対して俺は、
「どどどどうかしたのはお前だ!? なななんで俺の布団の中にお前がいるんだよ!?」
「失礼な、昨夜を忘れたのか?」
むっとした表情で口をとんがらせる一成に対して、俺は少し落ち着きを取り戻して怪訝な表情を返す。
「昨夜って?」
「言うな、それは……言わぬが華よ」
となぜか顔を赤らめる一成、指で布団にのの字を書いている。
俺の全身は震えが発生して止まらない。嫌な汗が全身をびっしょりと濡らす。首が強張ってギギギと錆びた鉄が擦れ合うような感触がする。
「ま、ままままさか!? いや、そんなばかな!? 俺はノーマルかつ童貞かつ雰囲気重視かつそのくせ必要性重視かつ割とむっつり、なおかつ若干のSかつ突発性言葉責め初期患者であり、なんで」
体を抱きかかえて、首を激しく振り、自身の性癖について振り返る。しかし、
「うむ、激しかったぞ」
その一成のきっつい一言で、俺は後頭部を思いっきり壁にぶつけて、この記憶が飛ぶことを願い、昇天した。
「はっ!!??」
ガバっと起き上がった俺は、布団をめくり一成がどこにもいないことを認識して、ぜいぜいと息をつくのを落ち着かせる。
「よ、よかった……」
「なにがじゃ?」
「はうわ!?」
何時の間にいたのか、今度は間桐のじいさまが布団にいた。
これは、本気で、洒落に、なり、ません。
俺の硬直していく思考に構わずに、じいさまはポッと頬を染めて、
「わし、初めてじゃったのに……」
「▲@×★+%‡……ッ!!」
その言葉で意識が声ならない声を上げて、俺は早々と狂気の世界から退場した。
「はっ!?」
がばりと起き上がると、そこは学校だった。夕暮れが静かに夜の帳を待つ時間。薄紫の雲が青と赤の境界線にたなびいているのが窓の外に見えた。静かな時間が校舎に降りていて、遠い生徒の騒ぎ声が、ここが普通なんだと教えてくれた。
俺は、本当に心底、心をなでおろす。まずは深呼吸。
そして、
「よかった〜」
首をうなだれ、肩を垂れた。しばらくそうやっていて、俺はむくりと起き上がる。
「まったく、あんなネタ、誰が喜ぶんだ!? あんなのは俺のキャラじゃないんだよ! ああいうのはどこかの歪んだ性癖を持った小動物系後輩キャラの同類ぐらいしか喜ばないだろうが!!大体から……(注:この話はフィクションであり、暴言、虚言、偏見を交えてお送りしています、しばらくお待ちください『BGM:世界遺産のテーマ』)」
俺は、長々(大体3000字ぐらい)と悪態を誰に言っているのか自分でも分からないがついた後、とりあえず俺は鞄を持って、教室を出る。
すると……
「やあ、衛宮」
聞きなれた声がした。振り返ると、友人である間桐慎二がいた。
「あれ?珍しいな。お前がこんな時間まで残ってるの」
「まあ、ちょっと野暮用があってね」
と、髪を上げる仕草をした。
「ふ〜ん、じゃ、俺帰るから」
「ああ、僕も帰るから久しぶりに帰ろうじゃないか」
珍しい提案だった。心持ち、慎二はいつもよりも温和なような気がした。いい傾向だなあ、と俺は一人頷いて、
「じゃ、帰ろうぜ」
そう言った。
下校の道。交差点までの道のりの会話は初め何もなかった。慎二はいつものようにペラペラと女友達がどうのこうのという話もせず、俺のほうも特に話題もなかったので、俺たちは黙って歩いている。ふと、俺は話を切り出した。この町に住む奇妙な住人達の一人についてだ。
「そういやさ、金ピカ元気?」
と何故か間桐宅で居候している男のあだ名で言った。金ピカは遠坂命名だったが、割と事情を知っている間のマスターには通った意味で、慎二もそのご多分に漏れず、にっこりと笑う。
「元気も元気、こないだ気まぐれに出した剣を犬が銜えて持っていっちゃって必死に追いかけてた」
「なんだそりゃ」
俺は、苦笑めいたものを浮かべた。
「そういや、桜は?」
と少し含みのある言い方をした。慎二は特に嫌そうな顔もせずに、代わりに決して不快を意味するわけではなく、むしろ親しみの意味を表すように少し顔を歪めて、
「あ〜、あいつね、また喧嘩して負けた」
「またかよ、今度はなにやったんだ?」
何故か俺はそう答えていた。桜と慎二が仲良く(というとちょっと語弊があるかもしれない)喧嘩するとは、想像できなかったが、何故か俺はいつも仲良く喧嘩している二人を想像してしまう。
「スカートめくったらグーが飛んできた。やり返そうと思ったら、ライダーに蹴っ飛ばされた」
がっくりとうなだれて慎二は言う。苦労しているんだなあ、と思いつつ、やはり桜は遠坂の妹なんだなあ、とも実感する。
「正直、僕ってさ、一度も勝ったことがないし、一度も理解されたことがないわけ」
微妙に聞いたことあるフレーズを耳にしながら、俺は相槌を打つ。そこからしばらく俺たちは矢継ぎ早に学生らしい馬鹿な話をした。
「まあ、それは分かる気がするな」
「私は敗北が知りたいのだよ」
「意味分かんねえよ、○キ?」
「そう、今週読んだ? バ○」
「まだなんだよなあ、最近、居候が増えたせいで食費が家計を圧迫してて……それに、最近アレ展開たるくないか?」
「あ、でも今週号、割と良かったよ、久しぶりに家に見に来る?」
「ん〜、悪い、今日はパス、これからバイト」
「そっか、それは残念、久しぶりに暇だから遊んでやろうと思ったのに」
「はは、悪い、しっかし変わらないよなあ、そのへん」
「お互い様だって」
「そりゃ、そうか」
そんなヌルめの会話を交わしつつ、話は移る。
「そっちのセイバーは最近どうなんだよ?」
慎二はふと家の居候の事を聞いてきた。
「ん〜、こないだ牛丼屋に連れてったら、初っ端から『大盛りねぎだくギョク』って頼んでた。どこで覚えたんだろうなあ」
「あ、悪い、それ僕だ」
「お前かよ!?」
「別にいいじゃん」
なにが面白いのか、慎二はのんびりと笑っている。それのためか、俺は少し嬉しさを隠すようなため息をついて、
「あのな、想像してみろよ、金髪の女の子が流暢な日本語で頼むんだぞ?『大盛りねぎだくギョク』って」
ほわわ〜と想像しているのか、慎二は天をしばらく見上げて……急に親指を立てて片目を瞑る。
「グッジョブ!」
「いいのかよ!」
思わず、○ムラばりの突込みをしてしまった。まあまあと手で俺を諌めて、ふと手を止める。
「そういや、話は変わるけど、柳洞から聞いた?」
そして、なにやら含み笑いをしながら、慎二は言う。俺は怪訝な表情をする。
「なんかあったのか?」
「いや、それがさ〜、あいつの寺、キャスターいるじゃん」
「うん、いるな」
柳洞寺には、キャスターがいる。まあ、表向きは葛木の婚約者ということになっているわけなんだが、
「それで、キャスターと葛木先生がこの間喧嘩してね」
「喧嘩? なんていうか全然想像つかないな」
「いや、柳沢に聞いたところじゃ、一方的にキャスターが食って掛かっていっただけらしいんだけど」
いまいち想像できない。キャスターは葛木に対して異常に献身的だし、まあ、それはさておき、
「喧嘩の原因はなんだったんだよ」
「いや、そこは重要じゃないんだよ。まあ、怪しげな実験をしようとしてたのがどうのこうのって話らしいけど」
「ふ〜ん」
「んで、その次の日。朝飯を珍しくキャスターが作るって言い出して、昨日取り乱したお詫びにって言って」
「ほほう、なにやら雲行きが怪しくなってきましたな」
「それで、出てきた料理が、すごかったって。あ、葛木先生だけの話ね、他の住み込みの奴らのは普通の食事だったらしいよ」
「どんな料理だよ?」
何故か寒気がしてくる。くすくすと慎二は笑った。
「いや〜、それがさ、味噌汁は器に入ってるのにグツグツ煮えたぎってるわ、香の物は血の色をしているわ、米は凍って湯気が立ってるわ」
「うわ、怖いな、それ」
「それで、さらに平然と葛木先生食ってたってのが極め付き」
「……」
「……」
「あの人の事、俺、本当に尊敬するかもしれない」
「僕もそう思った」
「女は怖いなあ」
「全くだよ」
しみじみと頷く俺たち。と、交差点に差し掛かる。
ちょうどバスが来ていた。俺は駆け出して、少し振り返り
「じゃーな、慎二、今の話でもあったけどやたらめったに女に手を出すなよ」
「そりゃ、衛宮もだろ」
くっくと含み笑いをする。むう、あながち否定できないのが悔しい。
「まあ、とにかく、お互い怖い女には気をつけようぜ、また明日な」
「それじゃあね、また明日」
腰に手を当てて、手を少し挙げる慎二を見てから俺はバスに駆け込む。
俺は最後部座席に座り、ゆらゆらとバスの震動に身を預けて、バイト先に向かうまでの間、割と幸福な感じで眠りに誘われた。
――続く!?
予告(CV:藤ねえ)
飽 き た の で 止 め!(虎エフェクトとともに)
次回!「新・仁義なき裸足の衛宮士郎:神父の首」
「士郎、英霊は強いのう」(CV:衛宮切嗣)
乞うご期待!(まじっすか?)
・・・後書き・・・
なんでかよく分からないが、しんみりと終わった今回、最初に考えた慎二君ネタがかなりアホすぎてグデグデだったが故の反動でしょうか
まあ、実際、士郎は(会話の内容は茶化しちゃいましたけど)、平凡な会話を彼としたかったんじゃないかなあ、と思い直して製作。
後は、いつもどおりご愛嬌ということで・・・
もういい加減ネタ切れ気味なので、打ち止めかもしれませんが、ネタが溜まって気が向いたらまた書きます。(連載させていただいている長編も後2回で終わるし)
それではまた、長編でお会いできることを願いつつ、失礼します。