(凛GoodEnd後のお話です)
「ねえ。士郎のお父さんってどんな人だったの?」
「「え?」」
「あ、士郎じゃないわよ。セイバーに訊いているの」
間
「「えええ?」」
食後のお茶をすすりながら
デンジャラスレッドデビル凛さまがのたまった言葉はなんとも意外なものだった。
Fate 〜Last Night〜
・・・・ずずずずず〜〜〜
ことん
しばし静寂のあと、お茶をおいしくすする音がきこえ
「なぜ私なのですか?凛」
セイバーが自分のマスターである凛に問いかえした。
セイバーの質問はもっともだ。
遠坂が切嗣のことに興味を示したのも意外だが
その矛先が息子である衛宮士郎ではなくて
セイバーにいくことは、もっと意外だった
「だって十年前の聖杯戦争で、セイバーは士郎のお父さんのサーヴァントだったんでしょ?」
「ええ。確かに私はキリツグのサーヴァントでした。ですが凛。私はマスターとしての彼しか知らなく・・・」
セイバーの回答をさえぎるように
「ええ。だから。
私は魔術師としての衛宮切嗣が知りたいのよ」
あかいあくまは、ずっぱりさっぱり言い切った。
衛宮切嗣
魔術師
前回の聖杯戦争において
セイバーのマスターであり、戦いの勝利者
セイバー曰く、目的のためなら手段を選ばない
でもそれは、魔術師として正しいあり方であり
なんら恥じる必要はない
聖杯戦争を生き残った魔術師
だがそれ以上に、凛には
衛宮士郎に魔術をかじらせた男がどの程度の術師だったかに興味があった。
生兵法は怪我のもとということわざがあるが
こと魔術に関しては、それはあてはまらない。
怪我ですめば御の字
下手な魔術はあっさりと命を失う危険性を孕んでいるのだ。
士郎にあった魔術も見極められない
スイッチのON/OFFもまともに教えない
よく言っても・・・・・・
訂正。
よく言う言葉が見つからない
悪く言えば士郎を殺すつもりだったのかと
問い詰めたい。問い詰めたい。
もし目の前に切嗣が現れたなら、お白洲に罪人のごとく正座させて
小一時間ほど問い詰めたかった。
だがそれでいて
アインツベルンに認められ
セイバーを召還し
聖杯戦争を勝ち抜いた
なんて矛盾
魔術師としては三流でも
魔術使いとしてならA+の実力
士郎への教え方を見れば、魔術師としてはC−くらいだと思う。
だが、聖杯戦争を勝ち抜いたその「魔術使い」としての実力。
おそらくは一流
それを知りたい
それは士郎も同じだった
聖杯戦争を生き残った切嗣
世界各国を渡り歩いた切嗣
正義の味方であり続けた切嗣
それを可能にしたのはどんな魔術だったのだろうか
士郎とて無関心だったわけではない
だが、切嗣がどんな多彩な魔術師であろうと
士郎自身がそれを使えないであろうということと
士郎にとって大切なのは切嗣の魔術ではなく
そのあり方だったということ。
正義の味方として
だから今まで、積極的に知ろうとは思わなかったのだ。
大切なのは手段ではなく、その志だったから。
「聞いたところだと士郎は魔術師としてのお父さんは知らないらしいのよね」
「ある程度は知っているぞ。切嗣がどの程度の魔術を使っていたかまでは詳しく知らないけど」
「それを世間一般では知らないっていうのよ。
でもセイバー。彼のサーヴァントだった貴女なら知っているでしょう?」
「・・・ええ。ですが」
セイバーは、「ちら」と困ったような顔を俺に向けてくる
俺の前では、しづらい話しなのだろうか
それとも、目の前のあかいあくまに戸惑っているのだろうか
困っている。戸惑っているかわからない。そんな視線だった
「話してくれセイバー。俺も・・・・・・切嗣の事ききたい」
「・・・・・」
士郎がそういうと
セイバーは藤ねぇ作のお好み焼き丼を食べたときのような苦渋の表情でしばしうつむいて
「・・・・わかりました。士郎がいいというなら話しましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マスター=キリツグ・エミヤについて」
「ちょっとまってセイバー。と、その前に」
半ばうつむきながら、硬い表情で話しはじめたセイバーをさえぎって
「ねえ、衛宮くん。さっきから、ものすごーく失礼なこと考えていなかった?」
と、遠坂さんが、ぎぎぎぃっと音をたてながら、あくまのほほえみをうかべて、こちらを見やがりました。
「・・・・え?」
「あかいあくまとか、でんじゃらすれっどでびるって、いったい誰のことかしら?」
・・・その瞬間。
衛宮士郎は
その微笑みから
あかいあくまから
生きとし生けるもののすべてを否定するような
絶望的な
ナニカヲ
感じた
「って・・・また!すごーく失礼なこと考えてるでしょ?」
「ええええっ?とと・・遠坂!じつはお前俺の心に盗聴器仕掛けてないか!?」
「んなわけないでしょ!顔にでているのよ!口にだしているのよ!このトウヘンボク!」
「んえぇえええぇぇぇぇっっ!?」
つづく