未来の世界の弓兵型英霊 Ph1(傾ギャグ


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1: 惰眠中 (2004/02/28 01:53:00)

615の続き、かな?
ネタバレ含みます、たぶん
キャラは壊れかけです、きっと
基本は凛GOOD後。でも無意味です、おそらく



―――唐突に声が聞こえた。
「衛宮士郎、今日の貴様の予定だ。
 8時30分。絞殺」
「…は?」
「12時07分、毒殺」
「…な…なんだんだよこの声…」
「16時49分、病死」
「……しかもどこかで聞いたことが……」
「21時22分、出血死」

その声は、窓の方からする。
そして、赤い外套を纏ったそいつは

一つだけ色が違う机の引き出しの中から

うにょ〜〜、と

「今日も碌なことがないな。衛宮士郎」
いつかみたいな皮肉と共に現われた。



未来の世界のアーチャー型サーヴァント
Phase1.0



「――――まぁ、いいけどさ」
「…順応性高いな」
「いや、まぁ、慣れてるし」
何に慣らされているかはこの際おいといて、
男は一瞬だけ複雑な表情をした。同情かもしれない。
「ふむ、では、本題に入ろうか。
 衛宮士郎、今日は外に出ないほうがいい。
 4つの大厄が貴様を待ち受けている」
いきなり何を言い出すんだコイツは。

「えーと、4つってさっき言ったやつ?」
「そうだ。外出すればたちまち絞殺毒殺病死出血死だ」
いや、そんなこと言われても、これから学校だし。
「ってゆーか、なんでそんなことになるって言えるのさ」
「くくく、貴様の未来を知っているからに決まっている」
その人を食ったような台詞につい冷静さを失う。何度会っても、コイツだけは素直に受け入れられない。
「ふん、そんなこといきなり言われて信じられっか」
「信じる信じないは勝手だがな、
 ふむ、もうこんな時間か。よいのか、そろそろ下りて仕度をせねば、誰かが騒ぎ出すぞ?」
お腹がくーくー鳴っている金髪の騎士殿がいとも易く思い浮かぶ。
彼女が俺を呼んでからの時間を鑑みるに、やばい、かなり機嫌が右肩下がりだ。
「っ――――」
「くくく、この場は消えてやるさ。まぁ、夜になればまた会うだろうよ」
「二度と来んじゃねぇっ!」
「やれやれ」
そう言ってヤツは引き出しの中に消えていった。

一応、引き出しを調べてみるが、勿論ただの引き出しだった。


――08時28分――穂群原学園廊下
「まったく、なにが絞殺だ。そんなもん学園内で起こるわきゃないだろう」
「いつになく荒れてるね衛宮」
美綴か。
こいつか? こいつが首しめるんか?
…そんなわけないか。
「あぁ、朝ちょっとね」
「ふーん、会いたくないヤツに会っちゃったとか?」
たまに鋭いぞ、コイツ。
「そんな感じにしといてくれ」
廊下でうろうろしているより教室に入るが上策と、早々に階段を上った、ところに。
とってもハイテンションな藤ねぇが現れた。

「やっほーしろー、おねぇちゃんはご機嫌だよぅ」
「いつになく浮かれてるね、藤村先生」
「春の陽気にあてられたんだろ?」
「む、ちょっと気に障ったぞ。でも今日は許しちゃうのだ」
む、変だ。朝っぱらからこのテンション。なにが原因だ。
「お昼のお弁当楽しみにしてるからね〜」

ぴきーん
俺の心が凍りつく。

「士郎のお弁当久しぶりだからねー」
そういや昨日、作ってやるとか言ったような……まずいな……
「……あ〜藤ねぇ……」
「なに?」
「大変言いにくいんだが……忘れた」
さぁ、覚悟はできている。
熾天覆う七つの円環を投影したいまの俺なら、どんな理不尽な一撃でも耐え切ってみせる!
「ふ〜ん、あ、そろそろHRだから教室入んなさい」
あれ、それだけ?
そう言って藤ねぇは廊下を歩き始めたところで、


…?
…??
…!!!

がおー

「ぬ、ぬ、ぬ、ぬわんですっっってぇぇぇえ!」

がし、がし、ぎゅ〜

チョークスリーパーが極まる。遅延攻撃に俺は対応できない。
「く、くるひ……」
「なんで? ひどいよ、士郎わたしを餓死させる気〜!?」
 おねぇちゃんはあんたをそんな子に育てた覚えはな〜〜〜い」
「い、いき、でき…ない……」
「すごいね、見事に極まってるわ」
「ぶくぶくぶく……」
―――ヤツの言葉が脳裏に浮かぶ。『8時30分、絞殺』―――
 はっ、まさかね
おちた。

「昼までにつくってね〜、大丈夫、家庭科室なら材料も道具も全部そろってるから。
 授業? そんなもんより大事なことやんなさい。
 あ、もしできてなかったら、士郎のもらうからね」
そんな無理難題を押し付けてばか虎は去っていきました。
家庭科室使えって、それでも教師か、アンタ。
「ごほ、げほ」
「大丈夫かい衛宮。顔色かなり土色だけど」
「心配ない。ちょっとだけ河の向こうの親父が見えただけだ」
「はぁ、それにしても、藤村先生って格闘もやってたのか? するするっと極めたよねー」
「美綴、ありゃただのプロレス技だ」
「で、どうすんの。真逆、本当にあそこで作るん?」
「美綴、作らないと、俺は、後が無いんだ」
「……まぁ、がんばってな……」
昼前の授業はサボり決定だ。
あ、でも4時限目って、たしか……


――4時限目――家庭科室
「……」
なにしてんのアンタ。
というガンドな視線が、さっきからグサグサ刺さってる。
「……」
誰が食べる?
という飢えた視線は、そいつ以外のクラス全員。

藤ねぇ、無事に届けられることを、願っていてくれ。


――12時05分――生徒会室
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「どうやら無事に届けられたようだな、ご苦労なことだ。学校で作るとは流石と言うか何と言うか」
「皆まで言うな、一成。ともかく、これで平穏無事な昼飯タイムなんだから」
今日は俺が作ったものではない。誰も何にも言わないけど、遠坂か桜が作ってくれたんだろう。
そのおかげで、藤ねぇの分を忘れてしまったのだが。
それはともかく、今は飯だ飯だ。
そして、いやに丁寧に包んである弁当を開けて、

俺の身体が凍りつく。

「ほう、今日は一段とプ□ジェクトX挑戦者達な感じだな」
「……」
「だが、見栄えがどうであれ、おまえが作ったものだ、どのように美味いか楽しみではあるが」
……ダレダ。
異様に白いご飯。
洗っただけの生葉っぱ(多分、ホウレンソウ)。
ひじきの代わりに木耳が入ってる和え物。
よくわからない唐揚げみたいなモノ。
どこかの工程をすっ飛ばしたとしか思えないハンバーグモドキ。

一成がひょいと唐揚げみたいなモノを掻っ攫っていく。
負けじと、いや、食べたくないけど、つい拍子でハンバーグモドキを食べて――――
悶絶。
一成は直撃らしく、痙攣が止まらない。
考えよう。
とりあえず俺ではない。
桜は…ありえない。間違ってもこんなんつくる女の子じゃない。たまに黒いけど。
藤ねぇ…今日だけはありえない。あれだけ弁当楽しみにしてたんだから。
となると……
屍と化した一成をほっといて、ぴくぴくする胃袋を庇いながら、ヤツの元へ走っていく。
おそらく、屋上。

そこに向かう踊り場で―――
「遠坂、俺に恨みでもあるのか」
「桜、アンタやっぱりわたしを殺そうと」
「先輩、この前和食で負けたからってひどすぎ」

「「「 え? 」」」

3人ばったりと遭遇しましたとさ。

「えと、状況を整理するわね」
「わたしは違いますよ?」
「俺だって」
「わたしだってそうよ。つまり3人ともお弁当は異次元だったわけね
 そして3人ともこれを作ってないと自供している。
 まず、一番最初にお弁当とったのは?」
桜が挙手する。
「わたしです」
「そのときにはすでに4つ並んでたのよね。私と、桜と、セイバーと、士郎の」
「はい、先輩はまだ寝ていましたけど、昨日のうちに作ってくれたのかなと
 あと、セイバーさんが見送りしてくれたので、彼女が証人です」
「セイバーが嘘付くとは思えないわね。いいわ、桜はシロ。
 その次は私と士郎ね。確かにあのときは残り3つになってたわ」
じと〜
桜の視線がちょっとイタイ。
「ふ〜ん、2人で登校したんですね……」
「となると、朝に桜が登校した時間からの犯行ではない」
さらりと無視できるあたり、流石だ遠坂。
「つまり、私でも士郎でも桜でも夜早くて朝遅い藤村先生でもない、って―――」
一人の少女が思い浮かぶ。
「まさか―――」
「そんな―――」

「「「 セイバー? 」」」

「そう言えば昨日、妙に遅くまで起きていたような」
「わたし、料理の方法教えてくれって」
「それじゃ、犯人は彼女?」
沈黙が降りる。
そう、俺や遠坂や藤ねぇが犯人だったら、遠慮なくうだうだ言える。(桜にはちょっと甘く)
だが、彼女はいつだって真剣だ。
これも、わざと異次元空間にしたとは『絶対』思えない。
「はぁ〜、セイバーが作ったんじゃあねぇ」
「一所懸命つくってくれたんだろうしなぁ」
「ひょっとしたら徹夜だったのかもしれませんね。朝来たら、目が赤かったですから……」

要するに、怒るに怒れない。

「で、結局どうするの、コレ」
「すて……られないですよ、セイバーさんに申し訳たちません」
「じゃあ士郎」
「いやだ」
「まだ何も言ってないわよ」
「言わんでもわかるわ! なんだってそうなるんだよ。だいたい今のマスターは遠坂だろ?」
「そんなもんかんけーないわー、喰えったら喰うのよ!」
「んな横暴なー、桜たす…おまえ、まさか裏切るのか」
「ごめんなさい先輩。でもセイバーさんが一番食べてもらいたい人は先輩だと思います、ヨ?」
「疑問符付けるなーーー!」
―――ヤツの言葉が脳裏に浮かぶ。『12時07分、毒殺』―――
 ははっ、まさかね
薄れゆく意識のなか、そう思うことにした。


――12時11分――衛宮邸
「ふふっ、シロウ達、喜んでるでしょうか?」
留守居役のセイバーも、昼食の時間だ。
内緒でつくった自信作のお弁当を広げている。
「びっくりしてるかも――――

その味にびっくり。

「――――く、こ、こんな物を3人に渡してしまったのですか私は?
 なんてことを、こんな事ではサーヴァントとして失格です!
 これは、これは修行をしなければ――――」
セイバーの目がきらーんと光る。
だが、その前に味見をしろ。

セイバーが修行先に選んだのが中華料理屋(店長ヒマだったから)というのはまた別の話。


――16時48分――穂群原学園廊下
「ご苦労、衛宮。今日は終いにしよう」
「これでいいのか、もう少し時間はあるけど」
「いや、十分だ。この季節はあまり機械を酷使しないからな。
 しかし、疲れているのではないか?」
昼抜きだから仕方がない。
「それより一成。おまえからだの調子平気か?」
「? 何とも無いぞ。寧ろ朝より調子が良いくらいだ。
 なぜそんなことを聞く?」
怪訝な表情で訊ねてくる。どうやら記憶を失ってるらしい。なんて便利な。
「いや、ちょっとね……」
「ふむ、どこか悪そうだぞ衛宮」
実際悪い。いまも胃袋の出力1/4、筋力1/2と絶不調だ。
「こんな足元おぼつかない調子では、
 何かに躓いてバランス崩した拍子に前から歩いてきた女生徒に激突して平手打ち喰らうぞ」
「んなばかな。だいたいそんな危ない物が校内に落ちているわけ―――
つるり。
そんなばなな。
「あら、衛宮くん」
「なんでこんなところにバナナが――――
むにょ
 むにょ?」

足元及び前方不注意、事故のもと。
ご期待にそれず、
バナナに滑ってバランス崩して立て直そうと前に伸ばした俺の手は、
遠坂の胸に必中していた。

「……」
「……」
「……」
3人とも動かない、いや、動けない。
そんな中、やはり直接の当事者でない一成が、最初に沈黙を破る。
「う、うぉっほん、友人を見捨てるのは心苦しいが、生憎こういうことに関しては素人なのでな。
 一応俺の意見としては。衛宮、おまえは許しを乞うたほうがよい。
 それでも故意にやったのではないことは確かだ、女狐もあまり、衛宮を責めるでない。
 では、俺は修行の身故、これにて失礼する。色欲断つべし。精進精進」
フォローしたのか逃げたのか。
で、俺はどうしようか。

遠坂はまだ硬直状態だ。
とりあえず、ゆっくりと後退しよう。
で、遠坂の間合いから外したら即座に謝って速攻ダッシュ。
家に入れば、いじめられても殺されることはあるまい。
今は、この人気のまったくなくなった校舎から離脱するのが先決だ。
けども、
考えるより早く、条件反射のように口から言葉が出てしまった。
「ごめん遠坂―――あ?」
この声に呪縛が解けたのか。
がし、と俺の腕を遠坂が掴む。
しかもその腕光ってるし。なによりその笑顔恐いし。
あぁ、なんかとても、ガンドな予感。

「衛宮くん、何か言い残すことがあれば聞いておくけど?」

「死なない程度でお願いします」
こんなときでも何言ってんだ俺。
案の定遠坂は
ぎり、と睨み付けて、

「―――そう、それじゃあ――
 士郎のバカー――――――――――!!!」

どぶどぶどぶどぶ、と全身に何十発ものゼリーが命中する。
とたん、鳥肌とか関節痛とか吐き気とかが一気に身体を駆け巡り、
自分では動けないぐらいの重い熱病にかかってしまう。
「加減なしかよ、とおさ、か」
―――ヤツの言葉が脳裏に浮かぶ。『16時49分、病死』―――
 はははっ、まさかね――――
ショートしたように意識が落ちた。


――21時20分――衛宮邸玄関
流石に3つも当たると慎重にならざるを得ない。4つめのアレは出血ときた。
森羅万象のあらゆるケガを想定して、その予防を心掛ける。
その点、今夜の夕食は特に注意した。
この家には食べ物の恨みが俺の生死に関ってしまう人が2人もいるから。
セイバーが「シロウ、少し味が薄いのでは?」
なんてこと言ったときはびびったけど。
結局は夕食と後片付けを何事も無く終えることが出来た。

これで完璧。この後俺を出血させるような現象はない。
せいぜい、2階に行く階段くらいか?
「ととっ」
夕飯つくれの声に後押しされて、ガンドから回復したのが1時間半。
いわゆる病み上がり状態、シャツもじとじと濡れているし、立ちくらみくらいおきるだろう。
こんな時はとっとと風呂入って寝るのが吉。
あと1分でヤツの言うことを覆せる、それでこの物語はおしまいだ。

洗面所に入る。
あ、石鹸には注意しよう。滑ってタイルに激突なんてことも―――

「――――――」

瞬間。
今日一日起きたことを、ぜんぶ忘れた。

「せ、せっ、せせせ」
何か言ってる。
目の前のヤツが、なんが言ってる。
「せんぱい、なんで、ここに」
こっちの台詞だ。
そこには、まぁ、湯上りで、着替えをしようとしてる桜が、いた。

なまじ着替え中だけに裸よりも色っぽい、じゃなくて。
やっぱり胸大きいんだな、じゃなくて。
半乾きの髪ってきれいだな、じゃなくて
あー裸Yシャツ萌え〜。

つー
ぶぉはっ
「せ、先輩っ、はなぢ! もったいないです」
あー、出血ってこの事、だったのか。
っていうか、桜、もったいないってなんだ。
―――ヤツの言葉が脳裏に浮かぶ。『21時22分、出血死』―――
 ちくしょう、ヤツの言ったこと全部あたっちまった――――
盛大に血を撒き散らして、意識が沈んでいった。


「―――はっ」
「気付いたか。ほれ見たことか、碌なことがなかっただろう」
明かりの消えた俺の部屋で、優雅にカップを運んでるヤツがいた。
「……もう一回聞くが、何しに来た」
「―――知れたこと、この呪われた運命を変えるためだ」
ずいと、引き出しから一歩、ヤツは踏み出した。
「貴様、まだ、諦めてなかったのか―――」
「あ? くくく、それもいいが、凛をまた裏切るわけにはいかんのでな、もう殺すことはない。
 それより確実かもしれない方法があることに気付いたのさ」
「なんだよ、方法って」
「衛宮士郎、知っているとは思うが、貴様の人生は報われない」
うわぁ、いたいなぁ
「オレは確かに英雄になった。衛宮士郎という男が望んでいたように、正義の味方になったんだ」
(以下略『VS』参照)
同じ事を長々とまぁ。

「……それがこのオレ、英雄エミヤの正体だ。
 セイバーから毎日3回食事の催促をされ、
 遠坂凛には常日頃からいじられ続け、
 間宮桜は偶に黒くなって襲いかかり、
 藤村大河から無理難題を言い渡され、
 イリヤは生ける人形にしようとする。
 ほら、こんな人生、送りたくはなくなってきただろう」
おい。
いや、いつもと同だが。
っていうか、おまえ、辛かったのか?

「というわけでだ、この運命を変えるためにオレは来た」
―――はい?
「今はそれでいいと思っているだろう。
 だが、わかっているのか? なにもしなかった結末はオレ自身だ」
「それは困る」
即答してやった。
ヤツは一瞬だけ、む、としたが、
「このオレがつきっきりで、めんどう見てやるさ」
それはありがたい、かとても微妙だ。それよりも―――

「おまえさ、なんか便利な道具でも出せるのか?」
「何を言う。オレにできる魔術は一つだけだが」
固有結界。術者の心象世界を具現化する最大の禁呪。
だがたとえそこでも、どこ○もドアは、投影できまい。
それで頼りになるのか、おまえ。

「紹介が遅れたな。オレは未来から来たアーチャー型サーヴァントだ。
 好きに呼んでくれ」
いろいろとツッコミ入れたいところがあるけれど。
好きにって言われても……あぁ、なんか脳裏に浮かんだ。

『アチャえもん』

それでもいいのか、アーチャー?



――――

Ph2.0に続く?

この話中、セイバーは料理ベタです。萌えのかたにはすみません。

3日ぶりのだらだら更新です。
まだ道具すらできこないアチャえもん。
次こそはなんか出そう。
だぶん3日後に…(爆)


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