※ まずは〜その1〜をお読み下さい。
※ 〜その2〜からは作者の予想に反し、壊れ始めました。ご注意ください。
※ 特にあの御方の凛・桜ルートでの扱いに
不満がある方は細心の注意が必要です。
※これは ア ン リ モ エ のお話です。
“ こ の 世 全 て の 萌 ”
・
・
・
礼拝堂の奥にある小部屋。
そこはこの教会の神父の私室である。
今、そこへと向かう二人の人物がいた。
一人は衛宮士郎。
忙しい最中、呼び出され、
教会へやってきた彼は困惑していた。
何故、俺がここにいるんだろう?、と。
礼拝堂にやたらと一杯あった見た事の無い漫画は何なのだろう?、と。
そして、俺の目の前を歩いている奴は、
「さ〜て、衛宮の“萌え”はなぁっにかな〜?♪なんだろっなぁ♪」
何であんなにキャラが変わってんの!?、と。
・
・
・
言峰綺礼の私室。
今、そこにいるのは衛宮士郎、一人。
ここへ来るまでの事を思い返す。
やたらと嬉しそうな、
この後の事にモノスゴイ期待をしていた言峰。
ヤバイ、さっきの言峰はヤバすぎる。
絶対、もう究極にヤバイ。
商店街の中華飯店・泰山。 <オモイダス>
謎のちびっこ中国人・魃さんが経営する店。 <アノヒアノトキ>
商店街の人外魔境。 <アレヲ>
そこのほぼ全ての料理の辛さは地獄的。 <オレモクッタ・・・>
そこで俺が見た言峰綺礼という漢。 <カライカライ>
普段の言峰とはまったく違う言峰。 <ヤバイヤバイ>
修羅の如き気迫で、 <シンデシマウ>
ラー油と唐辛子を <ミズヲクダサイ>
百年間ぐらい <ナントカ・・・>
煮込んで合体事故のあげく <タベキッタ!>
オレ外道マーボー今後トモヨロシク <カンベン・シテクレ!!>
って感じのマーボー豆腐を食っていた、喰らっていた言峰。
あの言峰よりも何かがヤバイ。
さっきの言峰はあの時の言峰よりヤバイ。
その言峰は部屋へ着くと、
「必要な物があるのでな。衛宮はここで待っていてくれ。」
などと言い、部屋を後にした。
俺は言峰に言われた通り、部屋のソファに腰掛けて
奴が帰ってくるのを待った。
十分ほど過ぎ、言峰が部屋へ戻ってきた。
その手には一冊の本が握られている。
「ふむ。待たせたな、衛宮。探すのに手間取ってしまってな。」
・・・
・・・・・・
・・・よかった、マトモだ。
言峰が持っている本が何かは知らないし、
何だか邪悪な魔力を感じる気もするけど・・・
うん、さっきの言峰と違い、今の言峰はそこそこマトモだった。
言峰は持ってきた本を開き、俺に尋ねた。
「それでだ、衛宮。お前は萌えに関しての知識は僅かでもあるか?」
ねえよ。
んな言葉、聞いた事もねえよ。
前言撤回。神父は全然マトモじゃなかった。
「ふむ。まぁ、予想通りだな。ならば、まず萌えに関しての説明から
するとしよう。衛宮士郎の間違いを暴き、
お前個人の萌えを、救いを探すのはその後だな。」
いや、探さなくていい。
つーか、そんなのいらねえ。
それだけは直感で分かるぞ。
しかし、神父は構わず続ける。
「いいか。そもそも我ら、ヒトという種が神から与えられた物の中で
最も高貴で価値がある物は<理性・知性・感性>、
そういった精神、つまりは第三要素だ。
こと肉体・魂という要素でヒトより優れた種が存在しても、第三要素で
ヒトに勝る種など、この今の世の中には存在しておらん。
その中でも善悪を求める心・友情・愛情などの価値は言うまでもないだろう?」
ああ、それは納得できる。
人間が他の生き物と決定的に違う所は確かにそこだろう。
「そして、近年、人間社会に新たに芽生え、ここ10年ほどで
世に定着した第三要素、それが“萌え”なのだ。
“萌え”、この素晴らしさが理解できるか、衛宮?」
・・・ああ、納得した。
オレとお前が決定的に違う所は多分そこだって事を。
「理解できないといった顔だな。しかし、考えてもみろ。
ヒトと呼べる種が誕生したのが、およそ300万年前。
ヒトはそこから進化し続けた。
肉体を、寿命を、延ばし、
知性を、文明を、発展させた。
他の生物など比べようも無いほど進化したのだ。
その進化は現在も止まっておらん。
このままなら、いずれは魔法などと呼ばれる事象は無くなるのかもしれんぞ?」
ああ、そうだな。
確かに文明がこのまま進化していけば、
魔法なんて無くなるのかもな。
「そして、この数世紀、
確かにヒトの、技術や社会制度などは驚くべき進化を遂げ、
次々と新しい物が生まれている。しかしだ、こと精神面に関しては、
第三要素そのものに関しては新たな発見は生まれていない。せいぜい、
ようやく近年になって、元々あった精神を、
ないがしろにしていた精神性を尊重するようになったに過ぎん。
分かるか、衛宮。
ヒトの心の進化はもう数十年、数百年、
いや数千年も前に停まっていたのだ。
だがな、ヒトの心はついに新たな局地を切り開いた。
これまでのヒトにあった好意・愛情とは似て非なるモノ。
それが “萌え” と呼ばれるモノ。
この世に現れた新たな第三要素の一つなのだ。」
はっ!?
マジで!?
何だ、それ、萌えってのはそんなに凄いのか。
「その新たな第三要素がどれほどのモノかは、
お前も見ただろう、あの聖敗戦争で。
私のさ〜ばぁんと、ギルガメッシュを。」
ああ・・・。
いたなぁ、そんな奴も。
で、金ピカがどうかしたのか?
「奴を前回の性敗戦争(誤字にあらず)から
10年もこの世に留めていたのが、
他でもない“萌え”という第三要素なのだ。
奴は前回の戦いが終わった後、私にこう言った。
『おのれ、セイバーは何故、我に萌えないのだ!
やはり、もっと間の抜けた所を見せねば、油断して見せなければ
萌えてはくれないのかっ!?
うぬぅ、我は負けぬ、諦めぬぞ!
言峰! 我を協会から匿え!
我は次の戦いまでこの世に留まり、セイバーを我に萌えさせてみせる!!
そして、セイバーに
お茶目で油断しまくるギルたん、モエーーー♪ ハァハァ。
と悶えさせてみせようぞ!
赤く火照った顔で
我に甘えてくるセイバー・・・燃える!萌えるぞ!!
一度目の人生で我は王として全ての物を手に入れたと思ったが、
我がまだ手に入れていないモノがこの世にあろうとはな!』
そういって奴は10年間、セイバーに萌え続ける事で現界を成し遂げたのだ。
奴の気持ちが分かるか、衛宮?」
「分からねえよ。」
俺が理解できない世界がそこにはあった。
っていうか、そんなハァハァ言い続けてる奴を匿おうと
考えた神父が理解できなかった。
「ふむ、ここまで説明しても、理解できぬか。まあいいだろう、
そのために今日、ここにお前を呼んだのだからな・・・。
衛宮、お前と私は同じだ。自身の“萌え”を持たぬ者同士。
そんなお前を救うためにコレを用意したのだ。」
そう言い、奴は持っていた本を揚げた。
いや、オレとお前が同じだなんて認めないけど。
質問はしよう。早く帰りたいし。
「うん、まぁ、さっきから気にはなってたけど、それは何なんだ?」
やたらと邪悪な魔力を感じるが・・・。
「うむ、これはな<聖杯>の一つだ。」
「それが<聖杯>? 外見はただの本だぞ、
それに<聖杯>はもう無いはずだろ?」
「衛宮、私は以前にも言っただろう<聖杯>の器になる物など
どこにでもある、と。ただその中身を満たす物が必要なだけだ。
いや、無論、これはオリジナルの<聖杯>とは
違うがな。本当の<聖杯>はあらゆる願いを叶える
無色の力を宿した純粋な願望器であり、[万能の釜]だが、これは違う。
いいか、衛宮、これはな・・・<同人誌>と呼ばれるモノだ。」
そう誇らしげにそれの名を呼ぶ言峰。
なんかヤバそうだな。今更だけど。
「で、そのドージンシってのは何なんだ?」
仕方なしに質問する俺。
「うむ、これはな、元の<聖杯>にこそ及ばないが、
こと“萌え”に関する願いなら少量の魔力で叶えてくれる、という
ドス黒い色の力を宿した汚れた願望器であり、[欲望のカマ]だ。
今日はこれを使って、お前を救ってやろうと思ってな、ここに呼んだのだ。」
そうか・・。
とりあえず、俺を呼んだ訳はようやく分かったが、
言峰・・・。
一ついいか?
それを使うのか!?
そんな怪しげなモノを!?
そんなモノを使わなきゃならないほど俺は駄目なのか!?
衛宮士郎にはそれを使われる、納得のいく理由があるのか!?
駄目元で聞いてみる事にする。
「なあ、言峰。どうーしてもソレを使わなきゃ駄目なのか?」
「ああ、駄目だな。」
駄目だった。
しかも、即答だった。
つーか、何でだよ。あ、軽く涙が・・・。
「いいか、衛宮。お前は自身の境遇を。
自分を取り巻く環境を全く理解していない。
お前の一日をよく振り返ってみろ。」
俺の一日?
え〜と、
朝6時:イリヤに起こされる。何故かイリヤが履いているのは常にブルマだった。
朝6時15分:桜に挨拶をし、一緒に朝食を作る。
しかし、何故、桜は裸にエプロンをしているんだ? 寒くないのか?
朝7時45分:桜と一緒に家を出る。途中、登校時間が合わない筈の
遠坂にいつも会う。なので毎朝、三人で登校する。
桜と周りの学生の視線がいつも鋭い気がする。
昼:四人で弁当を屋上で食べる。何故かセイバーもいる。
きっと一人で食べるご飯は寂しいからだろう。
((いえ、店屋物よりもシロウの料理が一番ですから。))
放課後:一成に週末、柳同寺へ遊びに来ないか?、と誘われる。
休みの日は食事の準備で忙しいので遠慮した。
断られた一成はとても残念そうだった。
夕方:商店街に買い物に行く。帰り道、魃さんに会う。
「シロウ君、また私の料理、食べに来てアル♪」とよく言われるが遠慮する。
死にたくない。断る度、魃さんは凄く残念そうだった。
夜:イリヤに「シロウ、一緒にお風呂に入ろう♪」と言われたが、断る。
俺がイリヤくらいの年齢の時はもう一人で入っていたし、
イリヤも早く一人で入れるようになろうな。
・
・
・
「・・・って感じだけど、何か問題あるのか?」
「ああ、充分過ぎるほどにな。」
そう断言する神父。
しかし、俺には目の前のこいつの頭の方が問題あると思う。
「いいか、衛宮。
ようやくこの世に現れた新たな第三要素。
その“萌え”を手に入れたヒトはそれほど多くない。
なぜか分かるか?
それを手に入れた者には新たな世界が切り開ける事が約束されている。
人類は新しい種へと進化でき、理想郷へと逝けるというのに
多くのヒトはまだそれに目覚めていないし、その存在すら知らん。
最近では英語の単語帳や公共的な物にも“萌え”への目覚めを促す物も
あるが、まだまだ少数だ。
それは何故だと思う?
答えは簡単だ。
なぜなら我らの身近には“萌え”に属する状況などそう転がってはおらん。
普通の者が“萌え”に目覚めるには、一人で夜な夜な仮想の物に対して
ハァハァ、ハァハァする事でしか覚醒する方法が無いのだ。
衛宮、これは悲しい事だと、救われない事だと思わないか?」
ああ、心の底からそう思う。
そいつらは悲しくて救われないなって。
「しかしだ、衛宮士郎。お前を取り巻く環境は常軌を逸している。
幼女にブルマ。えろえろな後輩は裸にエプロン。
一見完璧に見える優等生は学校でお前を見る度に、
『何よ、士郎の奴、澄ましちゃって・・・頭にくるわね。
からかってやろうかしら・・ううん、違う、違うの・・・! 士郎。
何でアンタはそんなに平気そうなの? 何でそんなに私の事を無視できるの・・・、
私は今直ぐにでも士郎に、士郎と!!』
と顔を赤くしながら、自分を抑えて悶えている。
そして、清楚で非の打ち所の無い金髪の美少女を飼い殺し。
このような状況に身を置いている衛宮士郎が今まで一度も“萌え”に目覚めた事が
無いなどと許される事ではないのだ。故に・・・」
<同人誌>から魔力が放たれ始める。
「今日はお前の身近にない“萌え”を用意する。
あれだけの“萌え”に囲まれている衛宮士郎。しかし、“萌え”とは多種多様。
貴様が出会っていない“萌え”をここに呼ぼう。」
そう言って、奴は魔力を籠め、願いを口にする。
奴が何を呼ぼうとしているのかは分からない。
だけど、分かっている事がある。
俺は、
衛宮士郎は、
正義の味方を目指している男は、
こんな事をしている場合じゃないだろ!?
まだ続く
※あとがき
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
とりあえず、二話まで終わりましたが・・・
未だにさ〜ばぁんとが二人しか出ていないこの状況。
これが私にとってのSS、二作目ですが・・・
ギャグや壊れは難しいです(^^;
おそらく、この先しばらくはギャグを書く事はないです。
あはは・・・。
そうそう、この場を借りて一言。
前作『過去のキリツグ、今のシロウ』を読んで
SSリンクにて推薦文を書いて下さった方々、ありがとうございました。
特に初めて書いて下さった方の
<こ、これは幻のイリヤルート!?>
というコメントには本当に救われました。
生まれて初めてのSS。
〜その1〜から〜その3〜まで書いて全くどのような反応も無く、
〜その4〜まで書いて何も反応が無かったら、心と一緒に筆も折れるだろう、
と考え、怯えてましたが、貴殿のレスで救われました、あんがとでした(^^)
もし、今回の作品を読んで下さった方の中で
前作を読んでいない方が居られましたら、
そちらも是非読んで頂きたいと思います。
今回の作品と違って、完全シリアスで舞台はセイバーED後。
士郎とイリヤが、切嗣の墓参りに行くお話です。全4話で構成されています。
しかし、〜その1〜があまりにもゴチャゴチャしていて読み辛い、
という続き物としてはあまりにも致命的欠陥を持った作品だったりもします(^^;
ちなみに〜その1〜は当サイト様の558番に置かせて頂いています。
尚、<あんな読み辛いモノ、読んでられるかっ!>という方は
〜その2〜又は〜その3〜から読んで頂けたら、と願っています。
ここだけの話、各話のあらすじさえ読んで頂ければ
〜その1・その2〜は読む必要があったりなかったりする作品です。
うん、まぁ、本当に書きたい内容が
〜その3・その4〜だったので当然なのかもしれません。
さて、本文に続き、あとがきでも
迷走している今作も次回で終わりです。
っていうか、いい加減さ〜ばぁんとを出して終わりましょう。
尚、次回は今回の3倍の壊れ模様でお送りする予定です。
・・・ああ、シリアスがまた書きたい(爆