その身は、剣で出来た聖剣の鞘 第一部その2 M士郎


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1: kouji (2004/02/26 22:05:00)[atlg2625dcmvzk84 at ezweb.ne.jp]

3士郎視点
追いすがる一成を振り払い、家へと全力疾走する
今のセイバーは無力だ、襲われればひとたまりもない
遠坂とアーチャーが居る筈だが、セイバーを護りながら他のサーバントと戦えるとは思えない
……と言うより、アーチャーのヤツ、下手すると平気でセイバーを楯にしかねない
上手くいえないし、あいつのことは良く知らないが、
そういうことをしでかしてもおかしくないヤツの様な気がする
……遠坂がどう反応するかは兎も角

「エミヤシロウ」

「?!!」

声をかけられて、いや、その声に驚いて俺はたたらを踏んだ
その声には聞き覚えがある、
だが、それはあってはならない、
それを認めるということは、
今、こうしている間も、
苦しんでいるセイバーの、
彼女のあの苦しみが、
何の意味もなかったのだと、
身をなげうって俺のためにしてくれたことが、無意味だったと認めることになる
だと言うのに、
現実は随分と残酷なようだ
目の前には、紫の髪をした長身の女が立っていた
長い髪、目を覆う枷、額に刻まれた刻印
サーバント ライダー
それを見て、その身に傷一つないことを確認して
一気に体が熱くなった

ナンデオマエガヘイゼントココニイル

にらみつける俺へ向け、鎖のついた短剣を放つライダー
それは怒りに我を忘れた俺を…………
通り過ぎ、後ろに迫る一成を「拘束」した

「えっ?」

「サーバントも連れずに出歩くなど無防備にもほどがある!!
これではセイバーのみならずサクラが危惧するのも当然ですね」

そういうと憮然とした顔でライダーは俺を見た、
と言っても、目は見えないんで解らないんだけど
……うん?

「ちょっとまて、桜は無関係じゃなかったのか?」

「いえ、私のマスターは最初からサクラです、シンジには「疑臣の書」で従っていたに過ぎない」

「なっ……?! おい、それはどういうことだ!!?」

魔術師の家系は一子相伝じゃなかったのか?
俺のその疑問にライダーは嘆息しながら答えた

「アーチャーのマスターから聞いていませんか?
『シンジには魔術回路がない、マトウから魔術師は生まれない』と
もともとサクラはマトウの人間ではないのです、
本来の名はトオサカサクラ
マトウ―いえ、マキリの実験のために彼女はすべてを奪われたのです」

その声には、桜に対する気遣いと、マキリとか言うものに対する怒りがある

(あぁ、こいつは本気で桜のことを心配してくれてるんだ)

その顔を見て思わず安心してしまった

「って、それどころじゃないだろう!!」

叫んで走り出す

「どうしました? エミヤシロウ」

「どうもこうもない、一成は足止めだったんだ、
だとしたらもう、敵はセイバーたちを襲っているはず」

「相手は恐らくキャスターでしょう、セイバーが遅れを取るとは思えませんが?」

余裕で俺に並走しながらライダーは当然の疑問を口にした

「あぁ、そうだよ! 悪かったな、どうせ俺は遠坂や桜と違って
自分のサーバントに満足に魔力も供給できない半端者だよ!!」

あ、なんか今まずいこと言っちまった

「む、では今セイバーは?」

「あぁ、お前相手に宝具を使って今にも消えそうだよ」

隠し立てしてもしょうがない、やけっぱちで正直に言ってやった

「それで貴方はどうするつもりですか、エミヤシロウ?」

「どうもこうもない、セイバーは俺が護るって決めたんだ!!
だったらそのキャスターってヤツと戦うだけだ」

俺の答えに、ライダーは大仰にため息をつくと

「……無謀ですね、…………仕方ありません、サクラの命令もありますし、
セイバーに代わり私が貴方を護りましょう、
よろしいですね?」

「は?」

いや、申し出はありがたいんだが……

「手を貸してくれるのか?」

「はい、私がここに居るのはサクラからエミヤシロウを護るよう命じられたからです、
それに、貴方にはサクラの保護をお願いしたい、
マキリから連れ出しましたが、アレらはサクラを放置することはないでしょう、
交換条件としても、私が貴方に協力するのは当然だと思いますが?」

立ち止まってライダーの顔を見る
目隠しが邪魔で表情はよく分からないが
サクラを気づかう気持ちを信じてみても良いんじゃないだろうか
そう思った


4アーチャー視点
34体目の竜牙兵を始末し、庭へ降りると黒い影が立っていた
一瞬『アレ』を思い出しだが、どうやらキャスターのようだ

「無粋だな、家主に断りもないとは」

愛用の双剣を手に身構える
ヤツとの間に見える範囲で、まだ10体以上の竜牙兵がいる
面倒なことだ、庭ごと焼いてしまおうか?

「あら、貴方には用はないんだけれど」

影の中からローブを纏った女が現れる

「ふん、弱ったものの寝首しかかけん割には大口を叩く、
これなら、最初からそれしか出来んアサシンの方がマシと言うものだ」

踏み込みざま竜牙兵を1体砕く、
また数が増えているようだ、人海戦術は面倒なんだが
それだけに効果的か

「なっ! たかが弓兵が大口を」

激昂するキャスターに向けてさらに踏み込む
単純なヤツだ、プライドなど持つならそれに見合うやり方をすべきだろうに
貴様の狙いは読めている
アレを貴様に渡せるものか

「生憎だが貴様に目的は果たさせん、ここで消えてもらうぞ神代の魔女」

言いざま両手の剣を投擲、直線上の竜牙兵をどけると一気に踏み込む
無手での突進に意表を突かれながらも迎撃を試みるキャスター
ランクAの魔術弾をかわしつつ『それ』を呼び出す

「刺し穿つ死棘の槍」

魔槍ゲイ・ボルグ
一撃で心臓を穿つ呪いの槍
その昔、我身を刺し貫いた魔槍を解き放つ
だが、必殺の一撃は虚しく空を切った
ちっ、囮か

「アーチャー!!」

玄関の方から家主が大慌てで駆け込んできた
後ろにライダーを伴っているのが気にかかるが追求している暇はない

「出し抜かれた、急げ!!」

「解ってる!!」

私に怒鳴り返すと、衛宮士郎は自室へと飛び込んだ

あとがき
さ〜てどうなるかな、え〜っとこのアーチャーは
普通にセイバールートを通った士郎ですが、
悲劇はその後に起きたって感じです
ではでは、縁があったらまた合いましょう


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