〜お昼の時間、闘将ハングリーハート〜
「シロウ、昼食にしましょう」
などとセイバーらしからぬことを言ってきた。
「昼食にするってもうそんな時間か?」
時計は12時少し前だ。昼飯時には違いないけど、セイバーがそんな提案してくるなんて初めてだ。
「ふむ---------------」
「だめでござる。今日は断食するでござる。」
「シロウ……?その、今のはどういう意味なのでしょう…?」
「分かりにくかったか。今のは、今日は昼飯抜きだって意思表示。そんなわけで試合を続けよう。ほら、竹刀かまえてくれセイバー」
「ま、待ってくださいシロウ、話はまったく、一手たりとも進んでいません!」
「え、うわ……!なにすんだよセイバー!竹刀返せ!」
「返せませんっ。もう時間がない。私はサーヴァントとして、マスターに速やかな食事の準備を要求します……!」
「………セイバー、時間がないって何か予定でもあるのか?」
「特にありません。ですから昼食にしましょう、と言っているのです」
「いや、だから昼食は抜きにするって」
「バカな、これだけ言ってもわからないのですかっ……!これが最後ですシロウ、今すぐ昼食にしてください!」
「う、っ---------?」
掴みかからんばかりの迫力で講義するセイバー。
その、あまりにも不自然な言動に思わず頷きそうになった時。
ポンッ!!
いきなりセイバーを煙が包み込んだ。
「うわっ、なんだ!?」
煙が晴れると中からでてきたのは、ボロをまとって髪を下ろしているセイバー。
「ああ、あんなに言ったのに。ごめんなさい、シロウ。12時を過ぎると魔法が解けてしまうのです。
私の正体は薄汚いシンデレラだったのです。今までだましてごめんなさい。すぐに出て行きますから」
その時士郎の目がキュピーンと光った。
「いや、いいんだよ、セイバー、いや、シンデレラ。どんなになっても君は君さ。
それにボロをまとって気弱そうにしているセイバーってのもなんかイイ…」
「シロウ……!!」
「セイバー……!!」
ひしっ、と抱き合う二人。
「なんでやねん」
一部始終をみていたイリヤは思わずつぶやいた。
〜対決、決着〜
「あ---------無事ですか、マスター」
葛木の声に変化はない。ああ、と短く答えるだけで見向きもしない。
「よかった、貴方に死なれては、困ります」
「でも、残念です。やっと望みが見つかったのに」
頬をなぞる指が落ちる。
キャスターの体が足元から消えていく。
「悲嘆することはない。お前の望みは私が代わりに果たすだけだ」
あまりに朴訥な言葉に、くすりと。
儚い夢を見るように笑って、
「それは、駄目でしょうね。だって私の望みは」
------------めそ…
稀代の魔女は、眠るように崩れ落ちた。
「ホントに駄目だ」
〜聖杯に飲まれながらシロウに天の鎖をまきつけるギルガメッシュ〜
「っ……、はっ----------」
目眩がする。体はもう踏ん張っていられない。
……死ぬ。最後の最後で、耐えられなかった…。
「-----って、舐めるな……!こんなところで道連れになんてされてたまるか!」
萎えかけた手足を奮い立たせる。この腕がちぎれるのが先が、やつの鎖がちぎれうのが先か、それとも奴が這い出してくるのが先か。
どっちだっていい。こうなったら最後の最後まで全力で抗って派手に散ってやろうじゃないか…!
”……ふん。お前の勝手だが、その前に右に避けろ”
「え?」
咄嗟に振り向く。視線は遠く、荒野になった境内に向けられる。
----------すれ違うように、何かが通り過ぎた。
「メルセデス・ベンツゥゥゥゥ!!!」
柳洞寺の住職だ。何故か裸で走っていた。俺の右側を通り抜けてそのままどこかに走っていった。
「………」
「………」
…鎖が外れる。
ヤツは、最後に。意外なものを見たような顔で、天の鎖を放していた。
〜凛グッドエンド〜
「シロウ。私が残ることに何か反対があるのですか?」
「----------------」
「セイバー。この町にもう聖杯はない。ここにいても、おまえの望みが叶うことはないんだ。
……セイバーはそれでいいのか?………」
「はい、私は私の意思でこの時代にとどまります。
……私は貴方を最後まで見届けたい。
彼は私が間違えていると言った。……その答えを、いつか、貴方が私に教えてください」
「ん?そうだな、セイバーは自分の生き方が正しかったと信じているにも関わらす、その結末だけを受け入れようとしなかったのが良くないんじゃないかな?やり直しを求める心、ってのが間違いなんだろうな。今までの自分が間違っていなかったと信じているのなら、結果がどうであろうと誇るべきことだろ。人生、失敗したこといちいちリセットしてたらキリないって」
「なんだかいやにライトですね…」
「そうね…」
「凛、朝食にしましょう」
「そうね。いい加減お腹減ったし」
そう言って二人は道場を出て行った。
それを呆然と見送ること十秒。一人でぽつんと道場に残される。
「あれーーーー?」
〜セイバールート、学校でのライダーとの戦い〜
それは血で描かれた魔法陣だった。
見たこともない模様。
例えようもなく禍々しい、生き物のような図形。
「シロウ、離れて…!ライダーは宝具を使う気です、そこにいては巻き込まれる……!」
言って、セイバーは俺を強引に引っ張った。
彼女は俺を庇いながら、ライダーの魔方陣と対峙する。
「-------逃げるつもりか、ライダー。
自身のマスターをも巻き込むというのなら、ここで引導を渡すだけだ。そのような宝具をつかわせはしない」
「ふふ、まさか。マスターを守るのがサーヴァントの役割でしょう。私はマスターを連れて逃げるだけよ。それが気に食わないなら追ってきなさいセイバー」
「もっとも-----これを見た後でも追ってくる希薄が残っていればの話ですが」
「………っ!」
「シロウ、屈んで……!」
そして、どこかで聞いたことがあるような声がひびいた。
”ペガサス流星拳!!!”
セイバーに手を引かれ、地面に倒れこむ。
轟音の閃光。
その混乱の中、慎二をかかえてしゅたしゅた走って逃げていくライダーが見えた。