こちらで連載させていただいている「式神の謳う死」は本日は休ませていただきます。
読んでくださっている方々、真に申し訳ないです。
代わりに、こちらのfate二次創作をお楽しみください。
では、めくるめくる阿鼻叫喚の世界、存分に堪能してください。
――夢を見ていた。
滅多に見ない夢だった。
というか、ぶっちゃけあまり見たくない夢だった。
俺は、なぜか土蔵に居て、別になにをすることなく立っていた。
唐突に、庭でまるで馬が怒涛疾風のごとく駆けるような音を聞いた。
「そこ! そこで、右! いいですよ! イリヤスフィール! これならば、来週のレースでも優勝を狙えます!」
「ほんと!? わ〜い!!」
なにやらおかしげなことを言う聞きなれた声に俺は土蔵を出た。
そこには――
庭をドタドタとまるでバターになった虎のように四つんばいで駆け回る(かなり早い)首輪を着けられたバーサーカー(顔はいつものように厳つく、真剣そのものだが心持ち泣きそうに見える)と背中にのって首輪から伸びた鎖を片手に、巧みに彼を操る競馬騎手のキャップをかぶったイリヤがまず目に入った。
「はっ、はあああ!?」
あまりの状況に思わず目を丸くして、俺は絶叫する。
さすがにそれで気づいたのか、意味不明、理解不能の凶行をしていた彼らははたと止まり、俺を注視する。
「あ、シロウだ。お〜い」
嬉しげに俺に手をふるイリヤ。バーサーカーの首を引っ張り(かわいそうに)、俺の元に向かわせる。彼女はなんだかとても楽しそうだ。近くまで寄ってきたごっつい首輪(トゲ付き)をつけられたバーサーカーの顔をできるだけ見ないようにしながら、イリヤに呼びかける。
「な、イリヤ、そのなにを、やっていらっしゃるのですかな?」
「うん、調教」
俺の若干怖気ついた感のある時代錯誤な丁寧語も意に介さずに、そこはかとなく猟奇的な言葉をさらりと吐く彼女に、俺は彼女がやってきたことを反芻し、思わず納得して
「そうか、調教か――――っておい!」
思わずノリツッコミをしてしまった。そんなおれの元へ彼女はゆっくりとやってきた
「シロウ、邪魔をしないでください。私たちは来週に迫ったホーリーカップ(G2、芝、冬木町商店街)への調整で忙しいのです」
可憐ともいえる小柄な金髪の少女、セイバー、彼女もなんだか意味不明のことを口にしている。
「あのな、セイバー、おまえもなんでこんなことをしてるんだ。だいたい……」
腰に手をあてて説教しようとした俺を、セイバーは笑みを浮かべて手で遮り、
「仕方ありません、どうやら、納得してくれないようなので……」
というと、軽々と四つんばいになったままのバーサーカーの背中に飛び乗り、俺を見下ろして、
「私が、調教師として優れているところをお見せしましょう! だてに騎乗スキルを有しているわけではありません!」
すさまじく見当違いのことを口走る。
違う、違うんだ……それは、激しく間違っているぞ、セイバー。
がっくりとうなだれた俺を無視して、彼女は。
「では、行きます! イリヤスフィール、しっかりつかまっていなさい! ハイヨー!!」
というと、なぜか女性騎手姿に変身し(正直かなり似合ってる)、同じくどこから取り出したのか鞭をバーサーカーの背中にうって(すごく痛そうだ)、哀れなバーサーカーを走らせる。途端、旋風のような爆風が俺の顔を叩きまくる。
「だから、違うんだって」
おれは、爆風に飛ばされないように、四股を踏ん張り、説得をするために一歩踏み出し、
「「シロウっ!!??」」
暴風と化したバーサーカーに突っ込んで、宙に舞った。
くるくると舞いながら、俺は……
「ああ、シロウ……」
と、まるで某RPGで勇者が死んだときの王様のような声を上げるセイバーと
「コーボーも筆の誤りよね」
ポンとセイバーの肩に手を置いて、気楽に言うイリヤの声を聞いた気がした。
次の瞬間、俺はなぜか町にいて、別になにをするということもなく、ただ立ち尽くしていた。
唐突に前方の広場で喧騒が起きて、人だかりができているのを見た。
「?」
興味をそそられて、見にいくとそこには――
「てめっ、マジ殺す、超殺す!」
「それはこっちの台詞じゃっ、コラ!!立てや、コラァ!!」
藤ねえのところに出入りしている人達みたいな感じで激しく罵り合って殴り合っている青と赤の男がいた。
人間離れした技を持っているのに、ガチで殴り合っている二人に呆気をとられながら、俺は思わず二人に駆け寄り、
「やめろよ!二人とも!!」
と叫んでいた。
二人は一瞬、止まり、俺をジロリと見て、
「ぜってーブッ殺す、タマとったらあああ!!」
「やってみいや、コラァ!!わしのタマァとってみいや!!ああ!?」
何事もなかったかのように殴り合いを再開する。
「ちょ、まじでやめろって! ほら、人も見てるし、な、な」
二人の間に強引に割り込んで(殺されるかと思った)、なんとか諌めることに成功した俺は二人を人目のつかないところに引っ張っていって事に至ったわけを聞く。
「こいつがさ、マジありえないんだって」
なぜか、青いだぼだぼのバスケ服をきた青の男、ランサーは、ややこしい職業の人が着るような派手な赤いスーツを纏った男、アーチャーを親指で指しながらむっすりとした感じで言うと、一方のアーチャーは、
「わしのことバカにしよったおまえが悪いんちゃうんかい!」
眉根を目一杯寄せながら、恫喝する。
「ん〜だと、てめえ!てめえだっておれの言ったことバカにしたんじゃねーかよ」
同じく眉に力を込めて、アーチャーを睨みつける。
一触即発。額がくっつきそうなぐらい近寄った二人を見ながら、俺はため息をつく。
「で、お互いなんて言ったんだよ?」
相変わらず、にらみ合いながら、先にランサーが
「こいつがな、俺が女を口説くときの決め台詞を馬鹿にしたんだよ」
「なんて決め台詞?」
「君のハートをゲイ・ボルク」
してやったりとしたランサーの表情とあいまって、俺は笑い死ぬかと思ったが、それこそ死ぬことになるので死ぬ気で堪えて、
「で、アーチャーのほうはどうしたんだよ?」
とまだ若干震える声で言った。アーチャーはさっきから妙に威圧するような口調で(任侠映画でも見て影響されたのか?)厳かに言う。
「こいつがのぅ、わしが女に振られたらどんな言葉をかけられるか、と言い出してのう」
「んで?」
「……『あなたの気持ちをローアイアス』と抜かしやがったんじゃコラァ!」
思い出しただけで一瞬で沸点に達したらしく、ランサーに殴りかかった。
「うっせー!てめえもだろーが!俺の会心の決め台詞を馬鹿にしやがって!くぬくぬ!!」
「やかましいわコラァ!いてこますぞワレ!!オラオラ、無駄ぁ!!」
そう言ってまた再開したやり取りを今度は止める気にもならなかった。
俺は、町をぶらぶらと歩く。
すると、目の前を知った顔が二人、通り過ぎた気がして振り返った。
「ん?」
見ると、黒髪のすらりとした少女、遠坂と金髪の背の高い男、ギルガメッシュだった。
二人は仲良さげに何故か腹が立つことに腕を組んで宝石店の前で立ち止まった。
遠阪は腕を組んだギルガッシュを見上げて、甘えた声を出して
「ねえ、あの宝石欲しいな〜、買って買って〜」
頭の悪そうな女みたいな声でおねだりする(援助交際?)。
ギルガメッシュはしばし黙考して(即座に止めろよ、お前も)
「買うのか?」
遠板を見下ろして聞いた。
遠坂は、頬を膨らまして、ここだけはいつもの遠坂らしく少し皮肉っぽい顔で
「これ高いもんねえ、お金足らないの?」
と言う。それを挑戦と受け取ったらしくギルガメッシュは
「ふん、我に手に入らんものなどない!」
断言して、鍵のようなものをポケットから取り出し
「ゲート・オブ・バビロン」
と凄まじく間違った宝具の使い方をする。そうして空間からじゃらじゃらと大小様々な宝石が出てくるのを遠坂は満足げに見て、
「さっすが大金持ち、すってき〜」
頭痛がするような声を出した。
ああ、なんてこった……。
がらがらと俺の中でなにかが崩れていく。
目の前の遠坂とギルガメッシュのこともそうだが、さっきからのあんまりな展開に俺の脳は限界を超えて……
これで終わりにしてくれと思いつつ、倒れた。
しかし同時に、まだこの狂乱は収まりそうもないとどこかで確信していた。
――続く!?
予告(CV:藤ねえ)
ガイキチじみた夢の果てで主人公が見たものとは!?割といじりにくい他のキャラ達を作者はどう扱うのか!!構想0分、製作30分の世界は果たしてどこへ行くのか!?
次回!「仁義なき裸足の衛宮士郎:英霊戦争」
「士郎よ、剣じゃ、投影しても、折れない剣を作るんじゃ」(CV:衛宮切嗣)
乞うご期待!!(しないでください)
・・・・後書き・・・・
いかがでしたか?連載している長編がなまじシリアスで頭を使うので、無性にしょうもない話を書きたくなって書きました。
個人的には、チンピラなアーチャーとランサーと次回予告のために書いたのですが。
まあ、ご愛嬌ということで・・・
では、また、長編の方でお会いできましたら、幸いです。それでは失礼します。