昨日と同様に彼女は道場で正座をしている。
そこに乱れなどというものはない。凛と背筋を伸ばして勝利の女神なんてものが実際にいたとしたら、こういう風なのではないかという見事さがある。
だが、彼女は神ではない。
(お腹空いた・・・)
強さ云々の事は無視して人間であるセイバーはそんな事を考えていた。
昨日、彼女はアーチャー、バーサーカー、ランサーとの四人で居間を使って大騒ぎをして後片付けをしなかった罪に問われて、断食の刑に服されていた。
「今日は断食でござる」、士郎は昨日そう言っていた。それ故にセイバーは今日一日、つまりその日の夕食がないものと考えていた。
しかし、その考えは甘かった。
今朝、お腹を空かせながらセイバーは居間に向った。
あれからすぐに片付けをやったのでもうすっかりキレイになっている。
そこにはテーブルの脇に座ってテレビを見ている彼の姿があった。
「あの、士郎の準備はどうしたのですか?」
時刻は六時十五分、いつもならば彼は朝食を作っているかもう既に作り終えているはずなのに、どこにもそれはなかった。
セイバーの頭の中に大量の疑問符が浮かぶ。
「ないよ」
セイバーの疑問を彼は一蹴した。
朝食が目の前にないならばそれは存在しないと考える事が当然である。
しかし、セイバーがそれで納得出来るはずがなかった。
「なぜ!なぜ!?ないのですか!?士郎、材料がないのですか!?ならば私がひとっ飛びして揃えてきます!!」
セイバーは彼の首を摑みブンブンと揺らしながら訴える。
「昨日の罰が続いているんだよ」
だが、セイバーの訴えなどなんのその彼はあっさりとそう口に出した。
「昨日の罰・・・?」
セイバーは彼の首を摑んだままそう呟いた。
だって、昨日の罰は昨日だけ限定のもので今日まで続くのはおかしい。
「それはおかしい、昨日の罰は昨日限定のもので今日までその効力が続くとは思えない」
セイバーは当然の疑問を口にした。
「あぁそうか、セイバーは知らないのか・・・」
だけど、彼はゆっくりと呟いた後に・・・
「実はなセイバー、若者言葉の中に今日中という意味を二十四時間と訳す時があるんだ、つまり、今日は断食っていうのは二十四時間断食って意味なんだ」
平然とそう口に出した。
若者言葉では今日=二十四時間。という意味で今日は断食という言葉は二十四時間断食。
そんな事を今更言われてもセイバーが納得出来るはずがなかった。
「士郎、それは間違っている、そんな間違った言葉を使っているとロクな大人になりませんよ、ですから、あなたはその間違いを正すために朝食を作るべきです」
セイバーはやはり首を摑んだまま彼に言った。
「そうは言われても、もう学校に行く時間だから無理、桜も待っているし、もういってくるよ、じゃあな、セイバー」
セイバーの腕を軽々と引き離して士郎はさっさと学校に行ってしまった。
(こんな士郎、士郎じゃない・・・)
と、取り残された彼女は思ったが、だからといって彼を恨むわけにはいかない。
実は士郎もセイバーと同様に昨晩の夕食と朝食を抜いているのである。
彼曰く「セイバーの苦しみは俺の苦しみ」らしい。
それならばこんな苦しみはさっさと終わらせて欲しいと思うのだが、頑固な彼は聞き入れてくれない。
「恨むなら君のお父上を恨むが良い」
と、わけのわからない事を言うだけである。
だから、彼女も自分だけが一人で朝食を食べる事が出来るはずがなかった。
そういう理由でセイバーはお昼時だというのに、正座をして二十四時間という時が過ぎるのを待っていた。
頑固な彼は間違いなく昼食も抜いているのだろう。
ならば騎士の誇りに賭けても自分だけが食べるわけにはいかない。
幸いこれくらいの空腹ならば彼女の美貌はなんら損なわれないし、行動に制限を受ける事もない。
(でもお腹空いたなー)
しかし、問題はなくても不快にはなる。
さしずめ今のセイバーはRPGで毒の状態になったといったところであろう。たぶん。
ピンポーン、そんな毒の状態のセイバーはそんな音を聞いた。
これは来客を告げる音である。
渋々とセイバーは立ち上がり、玄関に向う。
「なぜ、あなたまでここにいるのです?」
そして目の前にいる人物に向けてそう言い放った。
「ハハハハ、我が居る事がそんなに不思議か、セイバーよ」
目の前にいる人物、金ぴかの男、百式、もといギルガメッシュは高笑いしながら言った。
「別に、今更、あなたが出てきてももう驚きません」
そんなギルガメッシュに対してセイバーは冷徹に言った。
慣れというのは恐ろしい。
昨日の体験のおかげでセイバーは自分達がここに居る事を気にしてはいけない、と感じるようになったのである。なんだか本編の感動をなかった事にしてしまっているような気もするが仕方ないというものだろう。
「そうか、まぁなんにしても久方振りに我に会ったのだ、その事を光栄に思うが良い」
と、ギルガメッシュは言った。
「ハイハイ、そうですね、で、あなたはなにをしに来たのですか?用がないのならば即刻お引取り願いたいのですが」
ギルガメッシュの言った事を軽くあしらってセイバーは彼に用件だけを聞き出す。
「うむ、現世に居る事が出来たのはいいのだがいささか暇になってな、そなたと食事をしに来たのだ」
食事と聞いてセイバーの心は動いた。
(食べたい・・・)
「私はこの家の留守を任されています、それ故にあなたと食事に行く事は出来ません、お引取り下さい」
しかし、心とはまったく違う事を言ってセイバーはギルガメッシュの誘いを断った。
今日は断食、そういう約束を彼と交わした以上セイバーは騎士としていや人間としてここで食事をするわけにはいかない。それに食事の相手はあのギルガメッシュである。食事と称してなにをするのかわかったものではなかった。
「ハハハハ、そう言うと思ってだな、我がこのみずぼらしい家の中に設備を整えた、この心遣いを感謝するが良いぞ、ハハハハハハハ」
笑いながらギルガメッシュはセイバーの横を抜けて家の中に入って行った。
「ええぃ、待ちなさいギルガメッシュ!私は食事をする気などありません‼」
セイバーは勝手に家内に入っていくギルガメッシュの事を走って追いかけた。
「ふむ、ここで良いか」
セイバーはギルガメッシュの事を追いかけたが彼は既に居間にいた。
「待ちなさい、ギルガメッシュ、私はあなたと食事をする気はありません!帰りなさい‼」
セイバーは力強く忠告する。
「照れるな、見ていろ。最高の料理を見せてやる、やれバーサーカー」
「わかったよぉ、ジャイアン」
だが、ギルガメッシュはセイバーの忠告など聞く耳持たずでいつのまにか現われていたドラえもん、もといバーサーカーにそう命令した。
「最高の御寿司屋さん(かっ○寿○)これはね、どんな最高のネタを最高の鮮度で捌いてくれる秘密宝具だよぉ」
誰に言われるまでもなくバーサーカーはそう説明した。
「そんな事より一体いつのまに家に入ったのです、バーサーカー」
セイバーはバーサーカーの説明を聞かずに尋ねる。
「セイバーさん、気にす・・・」
「もういい、聞いた私が馬鹿でした」
そう言ってセイバーはバーサーカーに発言の機会を与えなかった。
同じネタはそう何度も使えないのである。
「ふん、ご苦労だったな、バーサーカー、役目は済んだ、もう良い、去れ」
秘密宝具を出し終えたバーサーカーに対してギルガメッシュは冷徹に言った。
「ハ、それはどういう意味」
「バカヤロー、我とセイバーが二人にきりになるのだ、気ぐらいつかえぇ‼」
そう言ってギルガメッシュはバーサーカーの事を殴りつけた。
「バイバイキィィィィィィィィィィィィィィン」
すると、バーサーカーは断末魔の声を上げながら飛んでいってしまった。
「凄い・・・いつの間にあなたはこのような力を・・・」
バーサーカーが星になった一部始終を見届けたセイバーは素直に感嘆の声をあげた。
しかし、その声の中には僅かながらの戦慄も混じっている。
一体彼の真の力は如何程のものか、それはセイバーですら予測出来なかった。
「ふん、愛の力だ、さぁそんな事より食事の時間だ、入るぞ」
そう言って彼は悠々とバーサーカーが出した扉のような秘密宝具の中に入っていく。
「仕方ない、行きますか」
そう言ってセイバーも中に秘密法具の中に入った。
無論彼女はこの中で食事をする気などない。しかし、ここで彼に付いて行かないで駄々をこねられて戦闘をするわけにはいかない。先程の力を見ても負けるとは思わないが、ここで戦闘をすれば居間が確実に消し飛ぶ。そうなったらまた彼に怒られて断食をさせられてしまう。そんなわけにはいかない。
それに興味もあった。ギルガメッシュが言う最高の料理とは何なのか・・・
扉の中に入るとそこは別世界だった。
大量の椅子が置いてあり、その前方にはケースがありその中には魚が入っている。
ケースの中に入っている魚がセイバーにはどれも光り輝いているように見える。
「食べてぇ僕達を食べてぇ」
と、魚達が言っているような気さえする。それほど、ケースの中に入っている魚は見事だった。
そしてケースの奥には割烹着を着た男が居る、彼が料理を作るのだろう。
「セイバー、ここだ、ここに座れ」
そうギルガメッシュがそう指示したのでセイバーはそこではない所に座る。
「ふん、まったく、うい奴よ」
そう言いながらギルガメッシュは席を立ちセイバーの隣に座った。
(これ以上は移動しても無駄ですね)
また別の所に移動してもまた付いてくるから移動しても無駄、そう悟ったセイバーはそこに席を落ち着ける。
「よし、ではセイバー好きな物を食すが良い、我はそうだな、とりあえず鯖と鰯を頼むぞ、オヤジ」
「へい」
ギルガメッシュに命令されてオッサンは寿司を握り始める。
数秒後、ギルガメッシュの前に差し出されたそれを見てセイバーは訝った。
この料理のどの辺りが最高なのかが彼女にはわからないのである。
だが、それも仕方ないというものであろう。寿司は見た目だけ見たら握ったご飯の上に魚がのっているだけのものである。それを作り上げるために何十年という修行の時間が必要でも、見ただけでは誰もその苦労がわからないのである。
「美味なり、流石だな、オヤジ」
ギルガメッシュはそう言ってこの料理を褒めた。彼がなにかを素直に褒めるなど前代未聞である
(た、食べたい・・・)
セイバーの心の中がぐらぐらと揺れる。
ギルガメッシュが素直に褒める寿司という料理を食べてみたい。
そう彼女の中の欲求が言っている。
しかし、欲求などにセイバーの心は負けない。
彼女は眼を閉じ、心を研ぎ澄ませ、自分の中の欲求を消し去った。
だが、体の方はそうはいかなかった様である。
「どうしたのだ?セイバー、涎が出ているぞ」
ギルガメッシュに言われてセイバーは慌てて口元を抑えた。
すると、確かにだらしなく涎が流れている。
「な、なんでもありません!」
セイバーは慌てて口から流れる涎を拭いながら言う。
「食したいならさっさとそうすれば良いのになぜそうせぬ?どうせ無料だ、なんら遠慮する事はない」
セイバーの内心など米粒一つ分もわからないギルガメッシュは言った。
「いえ、実はもう既に昼食は食べてしまったのです、あなたこそ私に遠慮せずに食べてください」
セイバーはどうにかそう嘘をついて誤魔化す。
「左様か、それは残念だな・・・まぁ良い、では我が食すのをそこで見ているが良い、オヤジ、イカと海老をくれ」
最高の料理、寿司を食べていて機嫌が良いのかギルガメッシュは穏やかな顔をして言う。
その顔を見るセイバーの心は決して穏やかではなかった。
それから約三十分、ギルガメッシュはここで食事を続け、セイバーはそれに耐えた。
空腹なのに食べる事が出来るのに食べない。それは人間の流れに反する。しかも、食べる事が出来る料理は最高と称されている料理である。これを口にしないセイバーの心はとてつもなく強いのである。
「ふぅぅ満腹だ、流石に旨いな、オヤジ」
ギルガメッシュはそう言いながら腹を摩り、それを聞いたセイバーは安堵した。
満腹という事はもう食べる事が出来ないという事、つまりギルガメッシュはもう食べないという事である。
(ようやく、終わる)
セイバーはギルガメッシュが食べ終わった事を素直に喜んだ。
「では最後に大トロを二巻、頼む」
だが、ギルガメッシュはそう言ってセイバーの心を打ち砕いた。
「ギ、ギルガメッシュ、先程あなたは満腹と言っておりませんでしたか?」
「確かに言った、だがこれだけは別腹だ、否、例え満腹でもう何も食す事が出来ないとしても食する価値がある、特にここのものはな」
「へへへ、ギルちゃん、嬉しい事を言ってくれるねぇ」
そう言いながらオッサンはギルガメッシュの前にそれを置いた。
(う、美しい・・・)
それを見たセイバーは確かにそう感じた。
脂ののった大トロがシャリの上で光り輝いている。その光景はまるで富士山。ダイナミックな自然の美しさを感じる事が出来る光景である。
(だ、駄目だ・・・ここで心を動かされたら今までの努力はなにになる!私よ、耐えるのだ!)
セイバーは食べたいという欲求を己の心で強引に押さえつけた。
「さっき言った通り、これはどのような料理よりも食す価値がある一品だ、どうだ、そなたも食わぬか?」
そう言ってギルガメッシュは彼の目の前に置かれている寿司を、セイバーの目の前に付き付けた。これは彼が見せた初めての優しさかもしれない。人を優しくさせる魔力を本マグロは秘めているのだ。
だが、それはセイバーにとって拷問だった。
(食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい)
セイバーの心で何度もその言葉だけが連呼される。
「い、いえ、お気遣いはありがたいのですが・・・本当に食べれないのです・・・勘弁して下さい」
だが、彼女が口に出した言葉はそれと違うものだった。
「そうか・・・」
本当に残念そうに言ってギルガメッシュは本マグロを二巻ともペロリと食べてしまった。
「では出るぞ、オヤジ、本当に美味だったぞ」
「へい、またのお越しをお待ちしておりやす」
そう言ってギルガメッシュは席を立ち、オッサンはそう言って一礼する。
(永かった・・・)
そう思いながらセイバーは先に店を出たギルガッメッシュに続いて店を出た。
その途端に最高の御寿司屋さんは消えていた。持ち主であるバーサーカーの所に帰ったのである。
「しかし、本当に良かったのか?」
店が消えた後にギルガメッシュはそうセイバーに尋ねた。
「はい、私には一片の悔いもありません」
セイバーは心にもない事を言った。本当は食べたくて仕方なかったのである。
しかし、それを口にする事は騎士としての誇りに関る。言う訳にはいかない。
だというのに、グーと彼女の腹の虫が鳴ってしまった。
「ム、今のはなんだ、セイバー」
ギルガメッシュは不思議そうに尋ねた。
「い、今のはそその・・・」
セイバーはどうにか誤魔化そうとする。
「もしや今のはそなたの腹の音か?セイバー」
だが、流石に無理だった。
ギルガメッシュの言った事をセイバーは否定する事が出来なかった。
恥ずかしくて出来ないのである。
「ハハハ、どうしたのだ、セイバー、そなたは腹が空いたのか!?それでそのような音を出したのかフハハハハハハハハハこれは傑作だぁ‼」
ギルガメッシュは自分の顔を抑えながら本当に楽しそうに笑っている。
「ギ、ギルガメッシュ、それ以上は失礼です‼笑うのを止めなさい‼」
セイバーはギルガメッシュがなんの遠慮もなく笑うので強く彼の事を諌める。
「これがバカにせずにいられるか!あの騎士王が!我を打ち倒したそなたが!王として常に完璧だったそなたが!腹の音ォォォォォォォォォォォォォォ‼これが笑わずにいられるかぁ‼」
セイバーが諌めたのは逆効果だったようでギルガメッシュはより高らかに笑っている。
だが、セイバーは彼の一言である事を思い出した。
自分が完璧な王であるために何をしてきたのかを・・・
「ギルガメッシュ、あなた、私の料理を食べてみませんか?」
セイバーは見る者が見たら戦慄を帯びてしまう様な笑顔で言う。
「なに、そなたの料理だと!?」
しかし、セイバーの隠れた殺気にギルガメッシュは気が付く事が出来なかった。
「えぇ私の料理です、きっとあなたを満足させる事が出来ると思いますよ」
セイバーは光悦したような顔を見せながら言った。
「う、うむ、そなたがどうしてもと言うのならば食そう」
ギルガメッシュは少しだけ照れた素振りを見せながら言う。
「えぇ腕によりをかけて調理しますよ」
先程と同じような表情でセイバーは言った。
「してなにをつくるのだ?」
流石にセイバーの様子がおかしいと感じたのかギルガメッシュは僅かに訝りながら言う。
「金目鯛の三枚卸」
セイバーは正常な男ならば興奮するが、彼女の事を知っている者ならば逃げ出してしまうような、まるで天使のようで悪魔な声を出した。
「よ、よし早速調理せよ」
その声を聞いて興奮してしまったギルガメッシュはそう言ってしまった。
「わかりました」
ギルガメッシュの許しを得たセイバーはそう言いながら頷く。そして、調理は開始される。
「エクス・・・」
セイバーがそう呟いた瞬間、彼女の周囲を凄まじい明るさの光が覆う。
「へ?」
間抜けそうにギルガメッシュは口を開けている。
「カリバァアァァァァァ‼」
それはそこに炸裂した。
「ひでぶぅうううううううう!?
断末魔の声をあげながらギルガメッシュはセイバーの一撃によって吹っ飛んでいった。
ギルガメッシュに言われて思い出した事、それは完璧な王である自分のイメージを崩してしまうような邪魔者は消してしまえ!という固い決意である。え、違うだろうって?そんな事をいう人は嫌いです。嘘です。そう思った人が正しいのです。ちなみに彼の事を斬り刻まなかったのはセイバーの優しさである。
「ギルガメッシュ、あなたは本当の強敵だった・・・」
セイバーはギルガメッシュが飛んでいった先を見据えながら言う。
「セ、セイバー、私服でエクスかリバー持ってなにをしているんだ?」
すると、本当にタイミング良く家に帰って来た士郎が言った。
「なんでもありません、お帰りなさい、士郎」
セイバーは先程ギルガメッシュに浮かべていたものとは違う、本当の笑顔を彼に見せる。
「そ、そうか・・・なんでもないならいいんだ、ただ今、セイバー、今日も留守番ご苦労様」
すると、彼はセイバーと同じように満面に笑みを見せながら言ったその後で・・・
「で、こんなに居間が跡形もなくなっているのはなぜなのかな?」
と、同じ表情で言った。
そう言われてセイバーは居間の様子を見てハッとした。
居間がエクスカリバーを使った余波で跡形もなくなってしまっている。
「これはその・・・ギルガメッシュと戦ってそれで・・・」
セイバーはモジモジと指を絡ませながら言う。
アーチャー、ランサー、バーサーカーを庇ったのにギルガメッシュの事を庇わないのはあれが純然とした戦闘の結果だからである。
「ギルガメッシュ?なんであいつがいるんだよ、あいつは前にちゃんとセイバーが倒したんだろう!?いい加減な事ばかり言うと本当に怒るぞ」
ランサー、アーチャー、バーサーカーの三人が現世に留まったというのにギルガメッシュが留まった事は信じなかった。
(そんななんて理不尽・・・やはり、この士郎はおかしい)
セイバーはそう感じたが、だからといってギルガメッシュのように彼を斬る勇気はない。
それに裏を返せばおかしくなるほど、彼が怒っているという事である。
「すいません、士郎、全ての責は私にあります、なんなりと罰を与えてください」
下手な言い訳は無用、そう感じたセイバーは素直に頭を下げる。
「いや別にそんな罰だなんて別にいい、そんな事をされても仕方ないし」
「う・・・それはなにをやっても怒りが収まらないという事ですか?」
戸惑いながらセイバーは言った。すると、彼は言葉を発しなかった。
どうやら肯定のようである。
(ま、まずい・・・)
本気でそう感じたセイバーは必死で考えを巡らせる。すると、彼女の直感がある答えを導き出した。
「し、士郎・・・」
戸惑いながらセイバーは声をかける。自分の直感に自信がないのである。
しかしもう後には引けない。
「笑って許して、ワン」
セイバーは自分の直感通りに行動した。
彼女の直感が導き出した答え、それは犬真似をすれば生き残れるというものであった。
「セ、セイバー・・・」
声を震わしながら士郎は言った。
(駄目か・・・)
セイバーは僅かに思った。
「もっとやってくれぇええええええええええええ‼」
だが、そう怒号する彼を見て自分の行動が正しかった事を彼女は確信した。
「え、えっと・・・ワン」
リクエスト通りにセイバーはもう一度犬真似をする。
「うおおおおおおおおおお最高だみゃ!」
すると、彼は白目を向きながら卒倒した。
(た、助かった・・・)
彼が卒倒したのを見届けたセイバーはとりあえず自分が助かった事に安堵する。
(しかし、これでいいのだろうか・・・?)
しかし、そう彼女は疑問視もするのだった。
大丈夫、士郎が変でも地球は回る。これでめでたしめでたし。
後書き(ダワのUH!MYアヴァロン)
ダワ「どうもダワのUH!MYアヴァロン司会のダワです」
セイバー「同じくアシのセイバーです、よろしくお願いします」
ダ「この度は私の長いだけの作品を読んでくれてどうもありがとうございました、一作品での後書きを書くのを忘れてしまったので一作品を読んでくれた方にもここでお礼を言わせてもらいます、ありがとうございました」
セ「このノミの心臓を持つ男が初投稿という事で舞い上がり後書きを書くのを忘れていたのです、笑って見逃してやって下さい」
ダ「はい、そういうわけです、否定はしません、しかし振り返ってみるとセイバーさんの扱い酷いっすよね、自分が言うのもなんですけれど」
セ「まったくです、死んで詫びろといった感じでしょうか」
ダ「すいません、でも歌は良かったでしょ?あれは個人的にそれぞれの俺的テーマ曲なんだけどそのへんどうよ」
セ「限曲を知らないので判断出来ません、そんな事よりも二作目はなんです?キャラが壊れているでは済まない者がいるのですが・・・」
ダ「・・・許して、ワン」
セ「・・・あなたはもう死んだ方が良い」
ダ「なんだよぉ、アシさん、なんだからもっと優しい事言ってくれよぉ」
セ「うるさい、そもそも、なぜ私がこのような所にまで出てあなたと話しをしなくてはならないのですか!汚らわしい」
ダ「そんなの俺の自己満足のために決まっているじゃん、こうやって話している気分を味わって、俺が実際に話している気分になる、これ以上の目的などいるか!?」
セ「・・・虚しい男いやそれを通り越して哀れですらある、いっそ死んだ方が良くないですか?スッキリしますよ」
ダ「・・・すいません、今後は気をつけません、さてこんなつたない後書きまでお読み頂いて本当にどうもありがとうございます、またなにか思いついたら投稿しようと思うのでその時はよろしくお願いします」
セ「します」