【萌えよっ!シロウ】
※ ほぼ全てのキャラがハッちゃけます。
※ ですので原作のキャラのイメージ。話の美しさを守りたい方は
読まない方が無難です。
※ ちなみに作者はハッチャケもシリアスも、壊れた話も綺麗な話も、
短い話も長い話も楽しめます、どちらも大好きです。つーか、物語は全部好きです。
※ 細かい設定は改竄し、無視し、蹂躙します。モンクは受け付けますが、
バーサーカーはいりません。
※ 約一名、月姫からのゲストが登場しますので
『Fateのキャラならハッチャケてもいいけど月姫のキャラでは止めて!』
という方もご注意下さい。
※これは ア ン リ モ エ のお話です。
“ こ の 世 全 て の 萌 ”
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「全く。折角の日曜だってのに何で教会なんかに行かなきゃならないんだ俺が。
言峰の奴、何の用だよ。」
冬が過ぎ、春が過ぎ、季節は間もなく夏。学生にとっての至福の時。
サマーバケーション。それが近づいていたある日曜日の朝。
衛宮士郎は教会に向かっていた。
呼び出し人はその教会の神父・言峰綺礼なのであった・・・。
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第5回聖敗戦争(誤字にあらず)は
急遽なぜかマスターになった衛宮士郎が
あんな事やそんな事を
はたまたア〜ンナ事をしている内に事態は次々と
あっちや 遠くや
そっちや こっちや 近くや
向こうや タッチや 吉野や
に動いていき、気付いた時には終わりを迎えた。
以上、説明終わり。
あんな戦い、真面目に説明するのはあまりにも遠慮したい。
あの戦いの記憶は
冬の雪解けと一緒にキレイサッパリ溶けちゃいましたよ・・・っと。
・・・ああ、そうだ。
あの戦いの間、命はかけなかったが、(そもそもかける必要がなかったのだが)
自分のアイデンティティをかけて俺を守ってくれた彼女は
今でも俺の家で暮らしている。
他のサーヴァントは
聖敗戦争が終わると(呆れて)、元の場所へ帰っていったが、
彼女だけはこの世に留まる事ができ、彼女はそれを選んだ。
きっとその理由は
俺が戦いの最中に彼女にしたあんな事やそんな事が原因なのだろう。
以上、説明終わり。
あんな出来事、真面目に説明するのは全身全霊で遠慮したい、いやホントに。
あんな事をした記憶は
春の桜が散るのと一緒にキレイサッパリ飛んでいきましたよ・・・っと。
ちなみに。
この半年で彼女の舌はますます肥えてきていて、
いずれ料理評論家になる日も近いのかもしれない、と思う。
その彼女のマスターである衛宮士郎。
最低限、彼女のマスターに要求されるスキルは料理B+だった。
そのスキルがどれくらいの物なのかを一般的な例えで言えば、
【料理の鉄人の挑戦者になれるレベル】もしくは
【料理の得意な美人の若妻レベル】、と言えるだろう。
・・・
・・・・・・嫌な例えだった、物凄く。
その上全然一般的ではなかったか。
まぁ、無論、衛宮士郎はそのスキルを有している。
しかしながら、まだまだ学生である衛宮士郎。
どうしても、平日は凝った料理を用意する事が難しかった。
徐々に月曜から土曜にかけて不機嫌になっていく彼女。
気のせいなのかもしれないが、
毎朝の道場の鍛錬で
目を離した所での彼女の頭身が下がっているように思う。
頭身どころか体のパーツが簡略化されている気配もあったりした。
土曜に至っては虎にまたがった彼女を感じたり、感じなかったり。
・・・まあ、そのせいと言う訳ではないのだが、
基本的に衛宮士郎の日曜日は
彼女の不満を解消するための凝った料理作りに費やされる。
これが中々大変なのだ。何しろ満足させる相手は彼女だ。
彼女を心底満足させる料理を作るにはかなりの手間と時間が必要だった。
だけど自分が作った料理をおいしそうに食べて、
「やはり、シロウの料理は格別ですね。
私は貴方(の料理)なしでは生きられない。」
なんて満面の笑顔と溢れんばかりの抱擁で
料理の感想とお礼を言われたら、そりゃあ普通の人間なら
毎週休み返上で料理を作っちゃいますよ、作っちゃいますとも。
・・・作っちゃいますよね?(そんな自分に少し不安あり
まぁ、そんな訳で
日曜なのに俺がどこかに出掛けるのは凄く珍しい事だったりする。
しっかし、言峰の奴、
わざわざ呼び出すなんて俺に何の用があるんだ?
俺、アイツは苦手だからあんまり教会には行きたくないんだけど。
まぁ、ハッキリ言えば、行かずに帰りたい。
家では彼女が俺(の昼食)を待っているんだし、
行ったとしてもとっとと帰りたいのだが。
言峰には聖敗(しつこいようだが誤字にあらず)戦争の時の
借りがいくつかあるから行かない訳にも逃げる訳にもいかない。
まぁ、早めに言峰の用件が終わる事を祈るとしよう、
一応行き先は教会だしな。
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そうこうしている内に教会の広場へ着いた。
季節は夏。天気は晴れ。
雲ひとつ無い青空。
夏の健やかな空気と清々しい日差し。
そして、目の前に佇む白色の聖なる建物。
・・・だって言うのに、
ソレは神聖なものではなく、何か不吉なものに見えた。
嫌な予感がする。
ものスゴク嫌な予感がする。
俺の中の心眼(真)C+が言っている。
ココニイテハイケナイ
アソコヘハイッテハイケナイ
モシ ハイッテシマッタラ
二度と此処へは戻ってこれない、と。
何だかよく分からない根拠のない恐怖を押さえつける。
俺は何を怯えているんだ、ただ言峰の用を聞くだけだろう?
何をそんなに怯える?
何をそんなに恐れる?
怯えるモノなんて、恐れるモノなんて、
何も無いだろ?
衛宮士郎が、
自分を救おうと思っていない男が恐怖を感じる事はない。
例え、自分のような人間が
本来、訪れる事のない、教会という懺悔の場。
そこに行くからといって何を恐れる必要がある?
ああ、そうだ・・・。
心を落ち着ける。
ゆっくりと俺は扉を開いた。
大丈夫、この中はいつもと同じ何も変わらないはずだ。
そう心に言い聞かせ、礼拝堂へと足を踏み入る。
そこで俺を待っていた人物の名を呼ぶ。
「言峰。何のよう・・・だっ!?」
「来たか。衛宮。」
いつもの様にそう答えた神父。
しかし、礼拝堂はいつもと同じじゃなかった。
異常な光景。礼拝堂の中は異常だった。
そこに立っている神父はいつもと変わらない。
俺を待っている間にでも読んでいたのであろう
本を持っている以外はいつもと変わらない。
しかし、本来、神に祈りを捧げる信者が座るべき椅子。
礼拝堂に用意されている多くの椅子。
迷える子羊が一時の救いを求めて、その身を置く場所。
だが、今、そこあるのは
漫画だった。
それも以上に多い。
百や千という数じゃ表せないほどの漫画。
それが所狭し、と椅子の上に積まれていた。
異常な光景・・・。
よく見れば、その漫画は普通の本屋に置かれているような
色鮮やかなものではなく、白黒のものが多いようだった。
あれは何だ?あの物体は何だ? <物体カラ>
異常なまでの魔力と怨念を感じるあれは何だ? <声ガスル>
本がある。 <ミテイッテ>
本がある。 <カッテ>
本がある。 <ゼンゼン>
本がある。 <ウレナイ>
前後左右あらゆる所に本がある。 <ヤッター>
何種もの絵が描かれたソレを見る。 <カンバイ♪>
「あ________________________あ」
嘘だ、と思った。
こんなものは嘘だと思いたかった。
だが、自分は騙せない。
気付いてしまった。
これほどの本があるというのに。
ここには、
俺が読んだ事のある漫画は一冊もないのだと言う事に。
おかしい、ここはおかしい。変だ。
おかしいだろ、
何でこれだけの本があって
俺が読んだ事のある漫画が一つもないんだ!
そんな俺が困惑している様を無視し、
目の前の男は、
言峰綺礼という神父は、
先程の俺の質問に対し、
一体、俺に何の用があるのか?という問いに、
奴は
厳かに、
清らかに、
神の言葉を、
この世の真理を告げるかのように、
答えた。
「うむ、今日はお前に“萌え”というモノを教えてやろうと思ってな。」
何ともいえない笑顔で微笑って
言峰はイミガワカラナイ事を俺に告げた。
・・・
・・・・・・
なあ、言峰。俺、帰ってもいいか?
続く