「あの」アーチャーvsランサー  傾:バトル、ギャグ


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1: (2004/02/24 20:57:00)

注意:凛ルートのネタばれアリです
   前作もありますが。続きものではないです?
   固有結界の限界ぃや vsバーサーカー、シエルを見たほうが
   たのしめるかもしれません

――――交差する二つの凶器。

レンゲと長槍、両者の獲物はお互いの首を討とうと繰り出される。
いや…。
片方は明らかに首ではなく口を狙っている。

そこに間断はなく、容赦はない。
放つ一撃は全て、必食の意思によるもの。

それはランサーとて例外ではない。
協力者である遠坂凛に 手を抜く と言っても、いざ戦いが始まればそんなものは二の次だ。
ぶっちゃけすでにランサーの思考は、
”あんなものを食わされるくらいなら殺す”
にまで発展していた。
その後の事などランサーの知った事ではない。

「っ――――!」

朱色の魔槍が、敵の領域を侵犯する。
繰り出される槍は回を増すごとにアーチャーの守りを崩す。
ランサーに令呪が働いてない、故に前回と同じであるはずがない。
アーチャーはここにきて、サーヴァント中最速の英霊と戦う事になった。

勝敗は明らかだ。
白兵戦ではアーチャーに勝ち目はない。
否、そんな事は分かりきっていた事だ。
だが、それを防いだ。
とうに劣勢、あと数合は保つまいが、それでも本気になった自分の槍を受けきった。
―――レンゲで。

―――アレが固いのか、それともオレが手を抜いているのか。

ふん、と鼻で笑う。
アーチャーがどこか得体の知れないサーヴァントだという事は気づいている。
その点において、ヤツはおかしい、というのは認めるべきだ。
なんせヤツは、自分の宝具にたいして。

―――レンゲと麻婆豆腐で戦っていた―――

だが―――自分が手を抜いている、というのは心外だ。

一合目はヤツの顔ごと吹き飛ばすつもりで首を狙った。
手を抜いている筈はない。
筈はないが―――たしかに殺すつもりではなかったかもしれない。
このような戦闘で本気になったところで何がある。
サーヴァントの戦いは、つまるところ宝具の戦いだ。
必殺であるソレを出さずに追い詰める事こそ手を抜いている証拠。
その理由。
その原因は、あの先ほどから目にしている、グツグツと煮えたぎっている赤いマーボーらしい。
”―――チッ。まったく、オレは本気か―――!”

「くっ――――!」
「づっ――――!」

ひときわ高い音が鳴り響き。
舞い散るアカイモノと共に、両者の体が後退する。
離れた距離は五メートル弱。
ランサーならば一息もかけずに攻め込めるその間合いで、

「―――解せんな」
ぽつりと、青い槍兵が呟いた。
「貴様、これだけの腕を持っていながらなぜそんなモノで戦う」
キャスターに就いたとかはどうでもいいのか。
それを前にして、アーチャーは口元をわずかに歪めた。
「――驚いたな。何を言い出すかと思えば、まだそんな事を口にするのか。
ランサー、私は少しで勝算の高い武器をとっただけだ。お前がどう思おうと、
私はこれ以外の手段はないと判断した」

自信に満ちた声に悲痛感などない。
赤い騎士は真実、その自分が赤い纏いよりもどす赤いソレを選んだことを悔いてはいなかった。

「そうかよ。訪ねたオレが馬鹿だったぜ」
まったくだ、とアーチャーは同意する。
「たしかにそのマーボーはおかしい。そのオマエがとった武器ならば、せいぜい上手く立ち回るだろう。
――――だが、それは王道ではない。貴様の剣には、決定的に誇りが欠けている」
立ち上がる闘気。
それを前にした、赤い弓兵はなお愉快げに笑っていた。
「ああ、あいにく剣ではないからな。どちらにせよ、そんな余分なプライドはな、
そこいらの狗にでもくわしてしまえ」
「―――――」

瞬間。
わずかに弛緩していた空気が一変した。

「狗と言ったな、アーチャー」
狗も食わないようなものを武器として使っているくせに、と青い槍兵は言い放った。
「事実だ。英雄の誇りなんぞ持っているのなら、今のうちに捨てておけ」
「―――よく言った。ならば、オマエが先に逝け」

大きく後退し、獣のように大地に四ひら肢をつく。
「―――オレの槍の能力は聞いているな、アーチャー」
「―――」
アーチャーに答える余裕などない。
赤い騎士は両手にもったマーボーとレンゲに魔力を込めはじめる。
ランサーのあの姿勢。
彼の魔槍が伝説をなぞるなら、防ぐ宝具は生半可な物では済まされない。

「―――行くぞ。この一撃、手向けとして受け取るがいい…!」
青い豹が走る。
両者の距離は100メートル。
それほどの助走を以ってランサーは槍を突き出すのだはない。
青い姿がしずむ。
50メートルもの距離を一息で走りぬけた槍兵は、あろうことか、
そのまま大きく跳躍した。

宙に舞う体。
大きく振りかぶった腕には”放てば必ず心臓を貫く”魔槍。
ぎしり、と空間が軋みをあげる。

―――伝説に曰く。
その槍は、敵に放てば無数の鏃を撒き散らしたという。
つまり、それは。


「―――ゲイ」

紡がれる言葉に因果の槍が呼応する。
青い傭兵は弓を引き絞るように上体を反らし

「ボルク――――!!!」

怒号と共に、その一撃を叩き下ろした―――

それは、もとより投擲する為の宝具だった。
かわす事など出来ず、かわし続ける度に再度標的を襲う呪いの宝具。
それがゲイボルグ、生涯一度たりとも敗北しなかった英雄の持つ破滅の槍。
ランサーの全魔力で打ち出されたそれは防ぐ事さえ許されまい。
かわす事も出来ずに、防ぐ事もできない。

―――故に必殺。
この魔槍に狙われた者に、生きる術などあり得ない…!!

魔弾が迫る。
一秒にも満たぬその間、赤い騎士は死を受け入れるように目蓋を閉じ、

「――――I am the bone of spice」
衝突する光の棘。
天空より飛来した破滅の一刺が、赤い騎士へ直撃する刹那、

「”紅州宴歳館、泰山の麻婆豆腐”―――!」
  ――マーボー・ショウテンガイノソウクツ――
大気を震わせ、真名が展開された。







衝突する槍とマーボー。
あらゆる回避、あやゆる防壁を突破する死の槍。













それが。








カキンといい音をたて。






マーボーを撒き散らしながら。






それが器にあっさり弾かれた。


「―――んな、あほな〜〜!!!」
驚愕するランサー。
それはそうだ。

しかし誰が知ろう。
この器こそ地獄じゃ閻魔が舌抜くといわれているほどの、地獄料理を出すみせ。
商店街の巣窟、紅州宴歳館でもっともヤバイといわれている、麻婆豆腐、
煮え立った釜みたいなマーボーを唯一受け入れられる器だという事を。

この器の前には、投槍などマーボー10gにも及ばず敗退するのは必須である。
少なくても使用者であるアーチャーが知る限り、このマーボーよりヤヴァイのはこの世に存在しないし、
受け入れる事ができる器も存在してない。



「―――」
地に降りたランサーは、ただ、目前のサーヴァントを凝視する。

…アーチャーは満身創痍だ。
槍とマーボーの衝突の際ぶちまけられたマーボー。
それを被ってしまったのだから…。
突きだしていた腕は灼熱のマーボーをかぶった上辛味で追い討ちされている。
苦痛に歪む顔は腕の痛みだけではなく、とびちったマーボーが顔のそこらに付着してるせいだろう。
おそらくは想像に絶する痛みと刺激に耐えてるはずだった。

「驚いたな、顔に少量付着しただけでこの威力か」
アーチャーは涙目だった。

「―――」
しかしランサーに気づかれる筈もない。
最強の一撃。
自らを英雄たらしめていた一撃を防がれたのだ。
それもそこらの商店街の中華料理店が使っているような器で。
その憤怒たるや、を通り越してランサーも涙目だった。
刺激臭が辺りを立ち込めてるのも一役買っていることは言うまでもない。

この戦いに勝者はいなかった。
結局二人共、キャスターの監視が解けるまで。
その場を動くことがなかったという。











それが原因かはしらないが。


「アーチャーとセイバーが消えればいい加減頃合いだ。
いらぬ抵抗をされ、魔力を落とされても困る。事は、迅速に済ませてしまおう」
言って、神父は少女から離れた。
倒れた遠坂凛の前には、槍を手にしたランサーがいる。
「言峰、貴様」
「そのゴミを始末しろランサー。器に心臓は要らん」
神父に情けなどない。
それに、
「お断りだ。今回のは従えねえ。オレにやらせたかったら、その令呪でも使うんだな」
敵をにらむ目で、ランサーは返答した。
「…そうか。仕方あるまい、自分で出来る事に令呪を消費する訳にはいかんのだが・・・」

左手を揚げる。

神父は、その腕にある令呪を発動させ、



「では絶対従わなそうなことに使おう。―――紅州宴歳館の麻婆豆…」
口から血が溢れる。
ランサーは自らの胸を槍によって貫いた。
「…ぜってぇ嫌だ」
「…そうか」
心なしか凄く残念そうな言峰と、
すっかり忘れられた慎二と、
死にそうなランサーがいて。

現状の理解ができていない凛だけが。
「…これは夢よ」
普通に現実逃避にあけくれいた。

ランサー令呪で無理やりマーボーを食わされる前に自害。
最終的に、ランサーにそこまで恐怖を植え付けた、
アーチャーの勝ちだったのかもしれない。










再現が長いのはそれだけマーボー全体の凄さを表現する方法が
ほかに思いつかなかったからです(ぉ
次回はおそらく キャスターとセイバーを同時にやるかと

やるのか?;


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