聖杯はきみへの・・・4
「ゲイボルク!」
ランサーが真名と共に放った槍は、一直線にアサシンへ向かう。
自己の持てる最大でなければ防ぎきれないと悟ったアサシンは、
「燕返し」
三つの円の剣線でその魔槍を迎撃した。
一撃目で、槍に弾かれ
二撃目で、剣が曲がり
三撃目で、剣が折れた。
槍は、アサシンの心臓を確実にとらえていた。
「見事な一撃だった、まさか我が秘剣をもってしても捉えきれぬとはな・・・」
心臓に槍を貫かれながらも、アサシンは言った。
敗れながらも、その顔は満足そうだった。
あの槍を投影した後だからわかる。
因果が逆転している以上、あの槍はあらゆる要因を覆し対象者を襲う。
単なる追尾機能じゃない。
セイバーがあの槍をかわすことができたのは、かなりの幸運と
セイバー自身の実力だったってことだろう。
アサシンの剣技も達人の域を超えるものではあったが
因果を覆すには、到らなかったってことか。
「お前もなかなかだった、今度、正規のサーヴァント同士で戦ってみたいもんだな。」
門に括られているアサシンは正式なサーヴァントとして
召喚されていないために宝具を持っていなかった。
初めから持っていない可能性もあるが、それは少ないだろう。
「ランサー、よくやったわ。」
俺の後ろにいた遠坂がランサーに声をかける。
既に消えたアサシンがいた辺りに、ゲイボルクを取りにいっていた
ランサーがその声に答える。
「初戦から宝具を使うはめになるとはな、今回はずいぶん楽しめそうだ。」
やけに楽しそうにランサーが言った。
なんかそれ少し違っている気もするがわざわざ言うこともないだろう。
問題はキャスターだ、正面からこれだけ派手に戦いをしかけていれば誰だって気がつく
だろう。できるだけ被害を出さないようにしなければならない。
前回はたしかギルガメッシュに串刺しにされて死んだはずだ。
「士郎、なにぼーっとしてるの?」
立ち止まっていたら遠坂に頭を小突かれた。
「ああ、何でもない。」
そうだ、俺はセイバーに再会することを決めた以上
もう立ち止まってはいられない、ただ前に進んでいくだけだ。
でも彼女に再会するために彼女が悲しむようなことは出来ない。
それは俺のもう一つの誓いだった。
あたりを静寂が支配している。
寺の中は無人だった。
「やられたわ、たぶん転移魔術か何かを使ったのよ。」
遠坂が悔しそうに言う。
魔術が十分たまるまで、どこかに身を隠すつもりだろう、
これではまた関係ない犠牲者を出してしまう。
俺にもう少し覚悟ができていればこんなことには・・・
「少し落ち着きなさい士郎、すぐに死人が出る訳じゃないわ。」
「魔力の吸い上げを行えば場所は丸わかりになる、
アサシンを失った以上キャスターも慎重になるだろう。」
大量に吸い上げられる前に倒せば被害者の数を抑えられるってことか。
それにアーチャーとランサーの索敵ならそう日数もかからず敵を見つけることが
出来るだろう。
とりあえず家に帰る事になった、敵がいない以上むやみに出歩くのも危険がある。
真昼から襲ってくる奴がいないとも限らない。
俺は帰り道を歩きながら、アサシンの剣を思い出していた。
技術だけで他のサーヴァントに並ぶ奇跡、あの剣は宝具でないにもかかわらず
最速であるはずのランサーの槍をこともなげに防いで見せた。
予想に反して帰り道にサーヴァントの襲撃を受けることはなかった。
途中、ランサーが遠坂に何か耳打ちして分かれたのが気になったが。
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忘れ去られない内に、第四話でございます。
昨日、初めてウイルスメールが来ました。
そのメールを激励だと信じて、これからもがんばります!!