「あの」アーチャーvsシエル 傾:ギャグ


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1: (2004/02/24 06:44:00)

注意:前作とのつながりは多少ありますので読んでからのほうがいいかもしれません
   凛ルートをクリアーしてからの方がお勧めです
   月姫とのクロスです





体は辛味でできている。
 
 血潮は辛子で 心は豆腐。
 幾たびの味付けを加えて腐敗。
 ただの一度も注文はなく、
 ただの一度も完食されない。

 食い手はここにいたなり。
 真っ赤な丘でレンゲをうごかす。

 ならば、食が生涯に意味は不要ず。
 この体は、無限の辛味でできていた。
   (unlimited spicy works)

例え体が辛味で出来ていようが辛いものは辛い。
投影するたびに脳内に浮かびあがる辛味。
対するは沸沸と煮えたぎった黄金色の物体。
敵の武器(?)は投影する事は可能。
しかしそれでその敵を圧倒できるとは限らない。
水人形に水をぶつけたところで意味はない。
ならば自分が持てる最高の投影で、この敵を全力で屠るしかない。
「降参するなら今のうちですよ」
「ただの一度も敗走はない」
オレはヤツの作ったモノを喰らい。
ヤツはオレの投影したものを喰らい。
すでにお互い死に体。
自らの体を支えるのは気力のみ。
しかしそれは…。
「〜〜っ!!」
「・・・っ」
二人のただの我慢比べだった。

始まりはなんだったろうか。
辛さで頭が麻痺し、ほんの数刻前の出来事さえ思い出せない。
ただお互いみただけでわかったのだろう。
「「同じ匂いがする」」
かたや何の因果か麻婆豆腐、通称マーボーを投影するようになったサーヴァントに。
かたやカレー狂の代行者。
二人は当然の如く出会い。
そして戦いになった。
目の前には一杯の水。
これに手をつけるわけにはいかない。
一滴でもこの水を口に含めば、もう戦うことはできないだろう。
「じゅ、十四杯目、クリアーしました…」
「こ、こっちもだ」
お互い譲れないものがある。
認めるわけにはいかない。
マーボーがカレーに劣るなど!
そして15杯目。
分はこちらにある。
いくらスパイスを効かせてるといってもカレーは食べ物だ。
マーボーは食べ物じゃない。
いくらオレが辛さに慣れてないといっても。
こちらが50の耐辛味にたいしてカレーの辛さは70。
向こうがいくら100の耐辛味をもっていようが、
マーボーは200の攻撃力をもっている。
「……っはぁ」
「…っっ!」
聞き取れない声。
瀕死のソレは、一心に目前の障害へと立ち向かう。
――――その姿を。
オレは初めて、己が瞳で直視した。
震える手で、レンゲを動かし続ける。
あるのはただ、全力で絞り上げる気力だけ。
「…、いかない…!」
食べながらしゃべるはどうかと思うが。
「…定する、いかない…!」
その風な事を気にしないのか眼前の敵はマーボーを食いつくす。
しかしそれはこっちも同じ事。
そして16杯目。
「…私は…いかないんです!」
この敵は止まらない。
決して自分からは止まらない。
「私は…カレーを否定するわけにはいかないんです!」
気が付いた。
彼女の数少ない自己主張。
それに気が付いて、知らぬうちに忌々しげに歯を噛んだ。
イエローと言われると知っていて、お祭りディスクでえらい扱いをうけようと、
なお挑み続けるその姿。
同じ匂いがする。
ベクトル自体はかなり違うか彼女はオレと同じなのかもしれない。
ならばやはり認めるわけにはいかない。
「…っ!」
限界はとっくに超えているはず。
なのになお彼女の手は止まらない。
一口水を口に含むだけで楽になるというのに。
理解できない。
―――なのに、何故。
それがどこまで続くのか、見届けようなどと思ったのか。
「っ……! そこまでだ!」
17杯目の投影。
敵の勢いはもはや手を抜けるものではない。
辛味で精神がいかれるのも構わず会心のマーボーを投影する。
カレーの辛さとマーボーの辛さが脳内で混じるような感覚。
だか其処までして投影したマーボー、必殺のはずのマーボー。
「……はぁっ!」
それでも彼女のレンゲは止まらない。
――――まっすぐなその視線。
過ちも偽りも、
色んなモノを捨ててまで、
立ち止まることなく走りつづけたモノが持つ視線―――
「―――決して、なんちゃってなんかじゃないんだから……!」
行動と年齢と主食と会話がかみ合わない。
お互いの歯車がかみあわないまま、あっけなく、この戦いに終わりを告げた。
「――――」
ごくん、と。
水が喉を通る音を、オレは聞いた。
驚きはオレだけのもの。
気が付いたらコップを掴み、その水を飲んでいた。
代行者は倒れそうになる体を、ゆっくりと立ち上げ、
「私の勝ちです、アーチャー」
そう宣言した。
負けたか…、すうっと息を吸い込み目蓋を閉じ、
「―――ああ。そして、私の敗北だ代行者」
遠くを見つめたまま。
そう、己に言い聞かせるように呟いた。
勢いに負けたのか…。
いや、おそらくソレに懸けてたものの違いだろうな。
「私にはシエルという名前があります」
「私にもエミヤという名前があるぞ」
その瞬間、オレはシエルと親友…いや戦友になった。



「で、何故こういう勝負になったのかだが」
「貴方がマーボーの方が良いと言ったからでしょう」
それはそうだが。
「武器として強力、という意味で使ったのだが」
「へ、つまりこの勝負は・・・」
私はため息をかるくつき、言いたくはなかったのだが。
「無意味だな」
言ってやった。
「ガラムサーラ!」


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