衛宮家の某蔵の前。
「なあアーチャーよ」
とくに仲が良くもなく、寧ろ嫌悪感を抱いてる者同士のはずなのだが。
「どうした衛宮士郎?まさか、お前が私を呼び出すとは思わなかったぞ」
「ちょっと聴きたい事があってな」
この衛宮士郎、過去の私が私に質問なんてよほどの事だろう。
まあ凛が姉妹の共同作業、昼食の準備に追われ。
特にやる事がないので来てやったわけだが。
「ふむ。お前が私に質問なぞめずらしいな。お前は私の事が嫌いなのだろう?」
「ああ、嫌いだ。しかしこれはアーチャーじゃないと答えられない」
私にしか答えられない事。そして衛宮士郎が聞きたい事。
これだけでだいたい聞きたい事はしぼられるが、
「私が素直にお前なんぞに答えると思うか?」
「ああ、だろうな。呼び出して悪かったな」
こうも素直に引かれると面白くない。
「聞くだけ聞いてみろ。答えるかどうかはその後決める」
そういって引き止めると衛宮士郎はちょっと意外そうな顔をした後、
真面目な顔に戻った。
「じゃあ、聞くが。固有結界についてなんだけど」
「固有結界そのものについては凛から説明を受けてたとおもうが」
「いや、お前の…俺たちの固有結界についてなんだ」
固有結界Unlimited Blade Works。
見た武器をほぼ完璧に投影し貯蓄する。
現実を侵食する剣の結界それがオレ達の固有結界。
「得に聞きたいことがあるとは思えないが・・・」
「いや。あの世界はありとあらうる武器があるんだろ?」
「私とお前が見た武器にかぎるだろうがな」
英雄王がもっていたエアなどは論外だが。
「じゃあ・・・」
いままでにないほど真剣な顔になる衛宮士郎。
「・・・女の武器って投影できるのか?」
地獄に堕ちろ昔のオレ。
「・・・女の武器って投影できるのか?」
あ。固まった。
そこまでおかしな事きいただろうか?
藤ねぇしかり、桜しかり、もちろん遠坂やセイバーしかり。
下手な宝具やサーヴェントより女のほうが怖いとおもう。←断言
「遠坂の『あの』笑顔なんて下手な宝具より強力だとおもうんだけどな」
本人にきかれたらどうなるかわからないが、おそらくどうにもならないだろうな。
「・・・衛宮士郎。例えもしそれが投影できたとしてお前はいったいなにがしたい?」
「いや、できるかなぁっと気になってな」←考えなし
「お前に再び殺意が芽生えたよ」←本気
まあ、おっしゃりたい事は判るけど気になるもんは仕方がない。
「他には相手の弱み(武器)とか投影するとか」
「お前は本当に正義の味方を目指しているのか?」
こんなのが過去のオレとは…と結構失礼なコメントも付け加えてくれる未来の俺(予定)。
おそらくあの表情からして皮肉でもなんでもなく、本当に呆れているのだろう。
「固有結界の中で見ても無理なのか?」
「ああ・・・無理だな。考えてもみろ衛宮士郎。お前は強化の訓練の時、漠然と浮かぶイメージに剣があったはずだ」
そういわれてみたらそうだ。
「それが凛の笑顔やらセイバーの冷たい視線やら桜の誘惑やら浮かんだら集中できないだろう」
と口の端を吊り上げながらおっしゃるアーチャー。
しかしおっしゃる通りなので反論はできない。
「・・・しかしアイディアとしては面白いな」
と考えこむ英雄エミヤ。
「と、いう訳で皆に集まってもらった訳だが」
とおっしゃるアーチャーに。
「なんだ嬢ちゃんはいないのか」
蒼い騎士やら。
「…」
えらい無口な教師やら。
「たまには男同士で語るという事も必要だろう」
似非神父やら。
「■■■■■■■」
狂戦士さんまでいらっしゃります。
IN 我らが固有結界。
「…てか、何がどうしてこの面子でしかも固有結界の中で数多の剣に囲まれてお茶してるんだ?」
「数ある平行世界の中にはこういう世界もあるということだな」
黙れ似非神父。
「皆に集まってもらったのは他でもない。私の固有結界の限界に挑戦しようとおもってな」
つまりあれだ。
「投影できるかどうかわからんがアイディアあるならだしてくれ」
「…女の武器はどうなったんだ?」
俺もアイツも壊れた世界に紛れ込んだのは理解した。
こうなりゃなるようになるだけだ。←士郎ヤケクソ
「まあそれは後で方法があるからかまわん」
あるのか。
「ふむ。英霊エミヤよ。黒鍵は投影可能なのだろう?」
「是非もない。しかし私がやりたいのはそういう物ではないのだ」
「と、いうと?」
「固有結界の限界に挑戦といっただろう?武器といえるものなら何でもかまわん。出せアイディア」←アーチャー壊れ気味
「なるほど、ではこれを投影してもらおうか」
と神父様が袖下からだしたのは…
「げ」
瞬時に顔が真っ青になるランサー。
そうかあれを食べたのか。←心底同情
そう。言峰がだしたのは赤く煮えたぎった麻婆豆腐。
通称赤い悪魔。
あ、これだと遠坂とかぶるか。
…あー納得。←なにを
「…ふむ。やってみよう。」
そう言って麻婆豆腐に手をかざすアーチャー。
止めた方がいいと思うけどな。←でも止めない。
エミヤシロウに魔術の才能なんてまったくなかった。
その代わりといってはなんだが、物の構造だけは連想するのが上手かった。
そして同一であるはずのアーチャーも同じはずだ。
つまりあのヤヴァイ麻婆豆腐の構造、性質だけではなく。
投影するために作り方、材料、味まで同調してしまったわけで。
「……」
食べてもいないのに赤い泡を吹いて倒れたアーチャーがいたり。
「バーサーカーよ。お前も食べてみてはどうだ?」
ここぞとばかりに赤い信者をふやそうとする似非神父とか。
「…悪くはないな」
無表情で普通に平らげてる一番まともだと信じてた教師とか。
「…赤…こわい…嫌い・・・くるな」
固有結界の隅っこで体育座りをしてうずくまってるランサーとか。
「…オチはあるのか?」
壊れてたと思ってた自分が一番まともなんじゃないかなと思った今日この頃だった。
「酷い目にあったな」
「お前はな」
二刻後、ようやく落ち着いたようだ。
ちなみにバーサーカーは赤いマーボー一口で8回くらいは殺された。
収まりが着かなくなったので皆様方には帰還してもらったわけだが。
髪を言峰にひっぱられ、引きずられるように去ったランサーも衝撃的だったが。
そのまま某中華料理店に向かった我らが教師のほうがもっと衝撃的だったのは言うまでもない。
「さて話をもどすと女の武器は投影できるかどうかだったな」
「それよりあのマーボーを投影できようになったか知りたいぞ」
「…まかせろ」
ちょっと青ざめた顔をして見事に右手にマーボー左手にレンゲを投影するアーチャー。
「…最強の武器を手にいれたな」←士郎なみだぐいながら
「…バーサーカーもイチコロだ」←アーチャー遠い目
一部の味覚のおかしい輩以外にはかなり有効な武器(?)だろうな。
「さて次はお前の番だな」←アーチャーかなりいい笑顔
「・・・っ」←士郎身震い
「1の経験は100の知識に勝るという。実際やってもらった方が早いだろうな」
「まて」
瞬時に理解した。つまりこいつは・・・。
「なによアーチャー。急によびだしたりして」
「シロウ?どうしました?顔色があまりよくないようですが」
「先輩呼びました?あれこの人・・・」
ヒロイン三人娘が現れた。
「い、いや。なんでもない。あるはずがない」
士郎は逃げ出した。
「…と、いう訳なのだ。凛、彼にとって君の笑顔は千の刃にも勝るそうだ」
「…衛宮君?」
しかし回りこまれた。
笑ってる。笑顔の遠坂が一番怖いといった人、あんたはただしい。
「シロウは私の事をそういう風に感じてましたか。でわ遠慮なく午後の訓練は実践を想定して真剣で交えましょう」
「先輩…」
御ふた方も怒ってらっしゃるようだ。
やばい。
魔力で編んだ鎧装着は当たり前で、宝具の真名までだすいきおいのセイバーもやばいが、
なんやら影が枝分かれしてでっかい影の巨人になってる桜もかなりヤバイ。
そして遠坂は・・・。
「・・・」←微笑
うわ本当に怖っ。
「さて衛宮士郎よ。さっさと固有結界をはって彼女らの武器を投影し相殺しなければ死ぬぞ」←アーチャーED並のいい笑顔
「……」←士郎泣きそう
「…衛宮君」←遠坂微笑
「・・・シロウ」←セイバー本気
「…先輩」←桜アンリモード
おやじ…俺は正義の味方になれないかもしれないよ…
衛宮士郎気合でエクスカリバーを投影するもの影に飲まれる。
そのさいに固有結界からマーボーを投影、影に大打撃。
吐き出されたところを遠坂凛の6番、7番魔弾さくれつ。
最後にセイバーにエクスカリバーの横っ腹でぶっ飛ばされる。
鞘の力あれど全治2ヶ月&影による精神汚染は哀れであるかもしれないが自業自得である。
まあ結局、どこの世界、時代でも女性は怖いということである。
そんなよくある昼下がりであった。合掌
追伸
マーボーの投影だけ自己暗示とも言える呪文が変わる。
というか剣でもないので変えなければいけない。
− 体は辛味でできている。
血潮は辛子で 心は豆腐。
幾たびの味付けを加えて腐敗。
ただの一度も注文はなく、
ただの一度も完食されない。
食い手はここにいたなり。
真っ赤な丘でレンゲをうごかす。
ならば、食が生涯に意味は不要ず。
この体は、無限の辛味でできていた。
(unlimited spicy works)
新しい固有結界!?(おわる