突っ込んでくるランサー。そして俺に駆け寄るセイバー。
そこに、三人を狙う得体の知れない攻撃が放たれ、俺はそれを防ぐ盾を創り出した。
◇
――運命の輪――
◇
――Interlude 3-0―― 遠坂視点
急ぎ、彼の家の傍まで来る。彼の家の方に閃光が見え、そして剣戟の音が聞こえ始める。
既に戦闘が始まっている。門の傍にまで来ると、何故かアーチャーは怪訝そうな顔をしていた。
中の様子を見るように頼む。アーチャーは塀の上に音も無く上り――目を見開いた。
声を掛けようとするがその前に大きく跳躍し、アーチャーは何処かにいなくなる。
慌てて門に駆け寄るが、閂が掛けられていたので魔術で身体能力を高め、跳躍。
先程のアーチャーのように塀に登り、中で行われている戦闘を眺め、絶句する。
――それは、先程の校庭の戦いの再演かと思われた。
否。再演ではない。槍兵が突き、少年が双剣で受け踏み込む。それによって槍兵は後退する。
攻めているのは少年。槍兵は十合の内に一度の反撃しかしていない。
その構え、剣筋は弓兵と同じ。しかし、少年は自分の弓兵を上回る技量を持っている。
だが、サーヴァントと人間が互角に打ち合うなんて、有る筈が無い。
双剣にも見覚えがある。自分の弓兵が何処からか取り出していた武器。
何故。何で。頭に浮かぶのはそんな言葉ばかりで、焦りを隠せないでいる――
頭の中でグルグルと思考が回転する。
思考のエアポケットに入っていた意識を、現実に呼び戻す。
戦闘は終盤に差し掛かっているようで、槍兵が大きく飛び退いた。
校庭の時のように、奇妙な構えを取る槍兵。体が沈み、大気のマナが凍結する。
「宝具!!」
声は蔵のような所から聞こえた。見ると、そこには時代錯誤な鎧を纏う少女。
何故だか、彼女が自分の求めたセイバーだと解った。見えない何か、恐らく剣を構えて駆ける少女。
向かう先は少年。彼を、襲い来る一撃から助け出そうとする。しかし、間に合わない
「”刺し穿つ死棘の(ゲイ・ボル)…”」
必殺の一撃を放つため、一瞬で少年に接近しその槍を放とうとする槍兵。
しかし、それは第三者の横槍によって止められた。
「――”偽・螺旋剣(カラドボルグ)”」
突撃する槍兵とその先に居る少年、駆け寄る少女。その三人に向かって放たれた”剣”によって。
槍兵は、宝具の発動を中断する。しかし、勢いは止まらない。
放たれたのは、この家の屋根から。そこには――居なくなっていた赤き外套の弓兵が。
「何やってんの、あの馬鹿!」
と小声で自らのサーヴァントに激怒する。
あれは少年を助けるための攻撃ではない。むしろ殺そうとするものだ。
せっかく大師父が残した宝石を使って助けたのに、自分で殺せば大損だ。しかし、
「――”熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”!!」
少年は盾を展開した。七枚の赤い花弁が広がり、弓兵の『矢』を止める。
何の魔術だろう。止められた『矢』は一枚の花弁も貫くことが出来ない。
力なくそれは地に落ちて
「――”偽・螺旋剣(カラドボルグ)”」
同じ武器を少年が放つ。唖然とした。その威力、速さ、全てがこちらの方が上。
家の屋根。庭を見渡せる位置に居た弓兵に、真っ直ぐそれは飛んでいく。
「!?――”熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”」
今度は弓兵が少年と同じ盾を展開する。これも驚きだ。何故あの二人は同じモノを使えるのだろう?
思考の海に溺れている間も、結末は刻一刻と近づく。
『矢』は彼の『矢』とは違い、盾を易々と貫通していく。
「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」
最後の一枚に全ての魔力が注がれる。レイラインの繋がる私からも魔力が引き出される。
アーチャーは全力でその攻撃を防ごうとするが、最後の花弁は徐々に壊され、
――そして砕け散った。
令呪を使いアーチャーを霊体に戻そうとするが、僅かな差で間に合わない。
貫通した『矢』は弓兵を掠めて空へと消え去り、少し遅れて弓兵の姿も消えた――
◇
槍兵は、塀を飛び越えて逃げ去った。私もすぐに塀から飛び降り、駆け出す。
魔術による身体強化で速度が速まる。
アーチャーは消滅してはいない、ただ腕に重傷を負っただけ。
すでに弓兵はそこに向かっており、自身の傷を癒し始めるはずである。
向かうは自宅。自分の城であり工房。そこならば敵は侵入しては来ないだろう。
僅かな希望に賭けて疾走する。
――そして、急に景色が反転した。
――Interlude out―― 士郎視点へ
戦いは中断され、その原因となったアーチャーは深手を負った。
遠坂をセイバーが捕まえてきた。話を聞くと、遠坂は塀の外で転んでいたらしい。
ドジ体質な遠坂らしいと思ってしまう。
話を聞くと、アーチャーは勝手に飛び出して乱入したそうだった。
一つ、アーチャーは俺を殺したがっている。
一つ、あの場面は邪魔者を一気に始末できる絶好の機会だった。
ああ、非常に有りうる。少し考えただけで、それが真実だと分かった。
遠坂にはそれだけ聞いて、家に帰そうかと思ったのだが、
「殺さないの?」
と本人が言ってきたので
「殺して欲しいか?」
と笑いながら答えた。
ちなみにその後は、怒れるあかいあくまに教会に連れて行かれた。
遠坂から、聖杯戦争の説明を受ける必要は無い。
俺は既に聖杯戦争が何のか理解している。説明は省いてもらったが強制的に連れて行かれた。
必要以上に警戒してくるのに、妙に世話を焼く遠坂が、非常に嬉しかった。
to be Continued
あとがき
前回が、てぃしさんの『いぬみみせいばー』に参照数を抜かれました。しかも六百人も!?
三十分差の投稿でこれは、流石としか言いようがありません。
期待されている作品と、いない作品の差を実感いたしました、鴉です。
↓以下壊れ(自分の未熟さを恥じて狂いました)
今回、宝具を大量投入ー♪そして正体不明の攻撃はアーチャーの乱入だったー!
やはり長くなってしまいますー。
どうせ長編になるんだったら、一日を朝昼夜に分けて投稿しようかな〜?
(単純計算で四十五話以上かかります)
次回予告
次の話も三日目だー(泣)
なのに、書いてる時間が有りません。哀れな私に救いの手を〜。