interlude 4-1 愛するということ H(H描写 M:桜、ライダー


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1: Hyperion (2004/02/22 10:44:00)

interlude 4-1  愛するということ


二人は私とサクラを残して去っていった。
サクラはやはり浮かない顔つきをしている。

「姉さん、先輩がまだ体に慣れて無くて魔力の通りが悪いって知っているのに、
どうして、魔術のことなんて言い出すんだろう。ライダーだってそう思うでしょう?」

マスターは心配そうな趣でお茶とを飲み、少年がお茶請けとして
買っておいた、タイヤキをほおばっている。
私も何度か、食したことがあるので、これの美味しさは分かっているのだけれど、
マスターは、それこそ鬼のような速さでタイヤキを食べている。
やはり、先程は士郎の前だからと遠慮していたのだろう。
変わりにリンがほとんど食べてしまったのだが、それも気に入っていない様子だった。
そして、そのタイヤキもとうとう残り一つになろうとしている。

「あ……ねぇ、ライダーやっぱりこんなに食べてあったら先輩にはしたないって思われかな?」

「大丈夫ですサクラ。私が食べたということにしておけばいい。」

「本当に?ありがとう、ライダー」

「ですがサクラ、その代わりにその最後の一つは私に……先程からサクラが3つ、私は一つしか
食べていませんから、見ていて無性に美味しそうになってしまって……いいですか?」

「あーごめんね。ライダーだってお腹空くものね、どうぞ、でもお願いね」

その栄養はやはり胸にいっているのだろうか、マスターはやはり4つめも自分で食そうとしていたらしい。
さて、そろそろ本題に移らなければならないだろう。けれど、私には絶対の確信がある。
リンは今頃、話し始めたところだろうか。

「サクラ実は少し、話があるのです。ええ、これからどうするかということですので、真剣に聞いて欲しい」

「どうしたの?ライダー。それに姉さんもまだこっちにいるって言うし、しばらくはゆっくり過ごすのが
姉さんの疲れをとるにも、私達にとっても一番いいんじゃないかな」

「いえ、それは叶いません。五日後にリンと士郎とサクラと3人にはイギリスに渡ってもらう予定ですから、
それに、もちろん私も同行します。リンの策を伺う限り、私がいることが優勝の前提でもあるようなので」

「え……?優勝?イギリス?」

サクラはまだ私の言っていることが飲み込めていないらしい、それは尤もなことだけれど、
今はそれを気にする必要がない。そう思ったので、目を白黒させているサクラに、非道ながらも
追い討ちをかけることにした。

「はい。リンが帰ってくる前、リンの洋館の掃除をしたことは覚えていますね。
あのときに、訪問者が来たでしょう。あの時は私が出て、そして、サクラと士郎には
ただのセールスだったので、丁重にお断りしましたよ、と伝えたのですが、あれは真実ではありません。
実は、あのとき来たのはユウビンヤさんで、そしてその郵便物がリン宛の魔術大会?とかいうモノの
招待状でした。だから、昨夜リンを送っていった後にサクラに洋館に泊まるのでお願いします。
と、連絡したのですが、サクラは気付かなかったみたいですね。
そして、今朝。私はリンにコトを伝えて、そして、これに参加することが決まったのです。
後でリンに聞けば分かると思いますが、その競技は3人で戦うものらしく、士郎、そしてサクラも
出場をさせる。と、リンが決めたのです。そして、私もそれに同意しました。
今頃、士郎もリンとこの事について話し合っていることでしょう。
使い魔がマスターの意向を確かめぬまま、了承したことを許していただきたい。
ですが、私はサクラにもこれを了承してもらうつもりです。
要点をまとめた説明でしたがわかっていただけたでしょうか」

一気に畳み掛ける。この後の反応も既に予想が付いている。
恐らくサクラは茫然とした後に大声で私に怒号を浴びせるだろう。しかしこれが適当だ。
ゆっくり説明をしていたら、聞いてすら貰えなくなるだろう。
マスターはそういう人だ。彼のことが絡んでくると簡単には、うんと言わない。
だからこれが最善、これいじょうの方法は思いつかなかった。
その後のことは容易だ、一声あげて落ち着いたサクラを説得し、
そして、最後にただ一つ助言すればいい。
リンには申し訳ないと思うが、サクラに通じる最後の手段だろう。
サクラならば、うんとしかいえないはずだ。

「_______そ、そんなこと……そ、そんなこと、
許しませんからねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

やはりそうだった、耳に両手を当てておいて正解のようだった。

「だって、せっかく先輩が戻ってきてくれて、それで、私と一緒にいてくれて
『桜、もう怖いことなんておきないんだよ』って言ってくれたのに、それなのにどうして?
なんで、どうしてそんなことをしなくちゃいけないの……?」

少女は頑なに反発をした。無理も無い、彼女が見てきた今までの世界は地獄で。
私も彼女の記憶を視た事がある。
この私でさえ視たくなかった、サクラが今までどんなことをされて生きてきたのか。
それだけは盗み視たくなかった。あれは、分かるといって片付けられるモノじゃなかったし。
私にも分かります。と言って励ましたところで逆効果なのは解っていた……。
暗い、暗い部屋の中、ただ蟲と戯れなければならなかった恐怖、ただの一片の希望も見出せずに
幼い躯を父に陵辱される寂しさ、悔しさ、どうして私だけこんな目に逢わなければならないんだろう。
なんで私だけがこの家の娘にならなくちゃいけないの?なんで?何で?ナンデ?
それでも逆らえない、逆らえばまたアソコに放り込まれる、
アソコはいやだ、いやだ、いやだぁ_______暗い、怖い、寒い……そうか、そんなに嫌なら、
_______この世からキエテナクナレバいいんだ。
彼女は毎夜そう思って台所から包丁を持ち出した。誰にも止められなかった。
気付いていなかったワケではないのだろう。知っていた、あいつらは私がこうやって
苦しんでいるのをみて、ただ愉悦そうな顔を闇に潜めていた。
それでもお前は死ねないんだよ、お前は死ぬのが恐いんだ。
だから無駄だ無駄だ、そんなことはやめておけ、痛いだけだぞ。
イタイ、コワイ……シニタクナイ、死にたくない。
そんな言葉は聞こえてこないはずなのに、部屋の片隅にある
掛け時計が、ただ……ただ、そんな言葉を私に発していた。
うるさい、うるさいうるさいウルサイ。
手首に冷たい刃を当てる。
でもそれまで、いくら力を込めようとしたって、
脳がその命令を拒否する。
一人、男が部屋に音を潜めて入ってきた、
この家で唯一、私がどんな目に逢っているのか知らない人。
その人は血相を変えて私を止めに入る。
馬鹿、なんでこんなことするんだよ、って。
本当に私のことを思っている風で私を止めてくれた。
でも、それは私を知らないからだ。
この兄も、私がどんな淫乱女か知ったら、きっとあいつらと同じように私を虐めるんだ。
だから、この人には知って欲しくなかった。知られたらもっと辛くなるから。
あれはいつからだったのでしょう、私が視たとき、既にその兄すら彼女の恐れるべき対象に
なっていたのは……。
彼女はその兄にも体を要求され、辱められて、罵られて、そうやって今まで生きてきた。
しかし、いつからだったのだろうか、
彼女に、唯一つだけ、安らぎを与えてくれる場所ができたのは。
それが、彼だった。この屋敷だった。
サクラはここに居る時だけは、家でただ苦しむ女ではなかった。
あの戦いが始まった時も、私を使役することを拒否して兄にそれを委ねた。
しかし、ひとつだけ私に言った。先輩を守ってあげて。と、それが、
彼女が戦いを兄に任せるときに言った、ただ一つの約束だった。

「落ち着いてください、サクラ」

「落ち着いていられるわけないじゃない」

「サクラ、士郎に聞こえます、どうか落ち着いてください」

自分が嫌になる。今いったことはサクラの弱みにつけこんだことだ。
でも、言わなければならない、そうすることが、サクラの為でもあると、
思ったからだ。リンにはこのことは伝えていない。
私がリンの提案を了承したのには二つワケがあった。
一つは自分の勝手。そして、重きを置くこの二つ目がサクラのためだった。

「サクラ、あなたは解っていない様だから言います。
士郎は決してサクラ一人のものではないのですよ。
確かに、彼はサクラを守ると言った。サクラを離さないといった。
彼のことですから本心なんでしょうが、それに託けて、あなたが
彼を縛っていてはいけないのではないですか?」

「そんな、私、先輩を縛ってなんかいない。
先輩が私の傍にいてくれるってそういったんだから」

「そうです。確かに士郎はそういった。
けれどね、サクラ、人を愛するっていうのはそれだけが全てじゃないんですよ。
その人を本当に愛するのなら、時には羽ばたかせてやる事も必要なんです。
今の士郎はサクラという檻に入れられた美しい鷹。
彼にはもっと可能性がある。それはあなただって解っているのではないですか?」

「________でも、それでも私は先輩に傍にいて欲しい。
我侭だってわかっているけど、先輩を苦しめることになるかもしれないって
分かってるけど……」

「いえ、これからは貴女が決めることです。私が言えることは此処までです。
マスター、私はあなたのコトを信じていますから」

そういって、居間を後にする、暇つぶしにちょっと新都に行って来よう。
逢いたい人がいるし。
後のことはサクラが決めること、けれど私は、
サクラは絶対正しい答えを出してくれると信じている。
この助言こそが私の絶対の自信。サクラを信じるということ。
今のサクラなら、きっと。
しかし、最後に一言いっておこう。ちょっとした足しにはなるかも知れない。

「そうそう、サクラ。あんまり士郎を檻に入れておくと、悪魔が檻から連れ出してしまいますよ。
士郎も満更ではないようでしたし」




この一言が何よりもの助言になったことは言うまでも無いだろう。



「作者の駄文 その4」

一応、陵辱とかいう単語が出てくるのでH描写ありにしたほうがいいかな。
と思い足しました。
桜が嫌いな方が多いようですが、今回はライダーが桜を説得する過程を
書かせていただきました。また、慎二はマテリアルにある、
いい奴振りをちょっと入れておきました。
一つ、新しい複線を張りましたが、回収できるか不安です。
今後とも書き続けていきたい、と思っていますので
よろしくお願いします。


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