聖杯はきみへの・・・2
現在、我が家の居間は混沌と化していた。
遠坂の口撃を皮肉混じりでのらりくらりとかわすアーチャー。
ひたすらラーメンを食っているランサー、すでに三杯目だ。
電話の後、人とは思えない速度で我が家に到着した遠坂は
「アーチャー・・・」
と一言だけ漏らして固まってしまった。
「久しいな凛。元気そうでなによりだ。」
そんな遠坂に奴は軽い挨拶を返した。
感動の再会とは程遠く、なにやらそのまま言い争いを続けている。
俺は、遠坂の後ろですっかり忘れられていたランサーに声をかけられた。
「よう、また会うとは思わなかったぜ。」
「ああ、俺も会うとは思いもしなかった。なんでランサーが遠坂に召喚されたんだ?」
電話の直後から気になっていたことを口にする。
「さてな、俺にもよくわからん。まあ嬢ちゃんに不満はねえから問題なしだな。」
えらく機嫌よさそうにランサーは答えた。
俺はランサーの前回のマスターが言峰だったのを思い出し、頷いた。
あれに比べれば大概のマスターはマシって事になるだろう。
それに遠坂だし。
「なんか食わせろ、ただし麻婆豆腐以外で。」
突然ランサーが言い出した。不審には思ったが
特に断る理由もないので残っていた食材で
ラーメンを作った。
それからずっとこの状況な訳である。
ラーメンを食い始めてからランサーは言葉を一言も発していない。
「なんでそんなに必死になって食ってるんだ?」
製作者の疑問を口にする。中華は最近、遠坂に教わり始めたばかりなので
それほど美味いものをつくれる訳でもない。いたって普通なレベルだ。
「・・・・・三食、奴が作ったマーボーだったからな。」
思い出すのも嫌だったのか、
顔をしかめてそう言ったあと、また食べ始めた。
詳しく聞きたかったが、触れてはいけない事のような気がしたので何も言わなかった。
遠坂とアーチャーの方が一段落ついたみたいなので
話を進めることにした。
「じゃあ、士郎は聖杯をセイバーとの再会に使うのね。」
アヴァロンを解き放てるだけの魔力を集める方法は他に存在しない。
迷うことなく遠坂の言葉にうなずく。
「それなら協力してあげてもいいわ、聖杯使うような願い事もないし。」
「私たちに必要なのは敵だけよ、違うかしらランサー?」
「違いねぇな、俺に必要なのは戦いだけだ。」
ランサーは遠坂の言葉に満足げに頷いた。
この二人は案外気が合うのかもしれない。
「それなら問題あるまい、聖杯獲得のために戦力は多いほうがいい。」
「よろしくな、遠坂、ランサー。」
ここに協力関係が成立した。
倒すべきサーヴァントは残り五体。
俺たちの二回目の聖杯戦争はここに始まった。
なんとしても勝たねばならない、セイバー・・・
「明日、キャスターを襲撃するぞ」
「魔力を蓄えられる前に一気に決着をつけたほうがいい。
時間を置くと一番厄介なのはキャスターだからな。」
相手だってそのくらいわかっている、
意表をついて真昼に襲撃することになった。
今日は体を休めなければならない、が。
「今日から泊まるからね、士郎。」
遠坂は突然そう言い出した。周りを見ても驚いているのは俺だけのようだ。
一度、深呼吸してから返事をする。落ち着け、俺。
「わかった、客室を好きに使ってくれていい。」
屋敷に宿泊道具を取りに行くように言われたランサーは、
ぼやきながらも取りに行ったようだった。
俺とアーチャーしかいなくなった居間で俺は
「お前の望みは何だ、アーチャー。」
一番聞いておかなければならないことを聞いた。
「・・・この身に望むものなどない、どのみちアヴァロン破壊
を叶えた後の聖杯にたいした力は残るまい。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
なにも言えない、望みがないと言われてしまえば
それ以外に聞くべきこともない。
「お前は、私とは違う道をすでに歩み始めている。それに
セイバーには、まだまだ返さなきゃならない借りがあってな。」
だからセイバーには幸せになって欲しい。
最後にそんな一言をアーチャーが呟いた気がした。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
気合入れて書きました第二話。いつまでたってもバトルシーンに突入できません。
どうしたもんでしょう。ほんとにシリアスなのか微妙ですね。
今気づいたんですけどこの設定じゃセイバーと士郎のラブラブシーンどころか
セイバー、話に登場すらしてねぇ!!やっちまいました。自称セイバー派