セイバーEND後のIF話になります。
全ルートクリア&サイマテ必読?です。
◇
衛宮士郎は荒野の上に立っていた
聖杯を壊した後、僅かに目が眩む朝日のなかで風と共にセイバーは去った。
しばらく立ち尽くし別れの余韻に浸る。
そして朝日の全貌がはっきり見えるようになった頃にその場所に背を向けた。
少し眩暈がしてたたらを踏む。耐え切れずに地面に倒れる。
体が落下する感覚と共に彼の意識は闇に包まれた
そして、運命の輪は回り始める――
◇
――運命の輪――
◇
初めは『騎士王』を救った。王であった騎士を『彼女』として信頼した。
彼の剣であり、彼の愛した少女。彼と彼女は剣と鞘。
自らの間違いに気付き、汚れた聖杯を自分の意思で破壊することで、世界との契約を破棄した彼女。
黄金の荒野で「愛している」と言って消えた。
彼の者はアルトリア=ペンドラゴン。かつて、アーサー王と呼ばれた者。
次は未来の自分を救った。正義の味方を目指し、絶望した、彼の未来の姿。
男は英雄の一部、影だ。男を救っても英雄となっている『彼自身』は救えない。
それでも、その男は答えを出した。「この世界の自分なら」と、主であった少女に過去の自分を託した。
黄金の荒野で優しく微笑み、男は消えた。
彼の者は英雄エミヤ。かつて、衛宮士郎と呼ばれた者。
彼は救った。しかし、その救いには意味が無い。
聖杯を壊し、荒野の上で彼は眩暈に襲われ、気を失う。
目蓋を開ければそこは過去。彼が巻き込まれた聖杯戦争の二日前。
彼は一月三十一日から聖杯を壊すまでの期間を、無限に逆行(ループ)し続けた。
彼だけ、結末までの全てを知っている。結末を知りながら、彼は前回と同じ行動をする。
無限の逆行は、終わる気配を見せなかった。
◇
何年分の同じ期間を過ごしただろう。
同じ一日、耳に入るのは同じ言葉ばかり。
――何度も同じことが起こった。
何度も同じ人間を救った。
――しかし、それに意味は無い。
同じ結末を見てきた。
――経験のみが残る。
未来を知っているのは辛い。
――死ぬと解っているから助けれない。
幾度も同じ戦いをする。
――何度も殺し、殺され、何度も死んだ。
しかし、ふと思う。
「同じ行動をしなければならないと誰が決めた?」
間違いに気付いた。
「未来は変えられないと誰が言った?」
彼は気付いた。
「変わらないなら変えればいい」
◇
毎回、違う遠坂に魔術の知識を教わった。
その知識でこの逆行は何故起こるのか仮定する。
――結論は聖杯の干渉による、魂のみの逆行。
精神的なものは、全て魂に付随しているため成長するが、肉体的な成長は無い。
逆行は聖杯を破壊した後に起こる。このことから原因は聖杯だと考えている。
やっと必要な知識が集まり、この結論にたどり着いた。
固有結界、戦闘技術、アイツのモノとなった数々の武具。
アイツから流れてくる情報は既に俺のものとしている。
既に俺はアイツよりも強力な存在だろう。
俺は決意する。その決意は未来の俺の決意と似通っている。
「この運命の輪を止めてやる」
その決意は逆行の終焉であり、始まりの場所、荒野に吹く風に飲み込まれた。
to be Continued
あとがき
「運命と螺旋と逆行と」のリメイクです。
前回、序・中盤として書こうと思っていた部分を削りました。
セイバールートと凛ルートが交互に何度も攻略されて行った後の話で、
これ自体は桜ルートになります(ほとんどオリジナルになってしまいますが)
補足
・士郎の逆行について
あれは桜GoodEnd後で「魂に魔術回路とかが記憶されている」みたいなのがあったので、
「魂が逆行して過去の自分の体に入り込んだら、経験などを受け継がせることが出来るかも?」
と思いまして、それをコンセプトに某C†C風に改良を加えたものです。
(同じ考えを持っていてSSに使っていられる方を見つけたら、これは削除しますので、
感想掲示板に書き込んでおいてください。)