聖杯はきみへの・・・


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1: non (2004/02/21 20:21:00)[nonn at poppy.ocn.ne.jp]

聖杯は君への・・・ 





あの戦争からもう一年が経とうとしている。

お互いがただ信じた道を進んだ、それに間違いはない。

それでも彼女の夢を見る、きっとこれからも。



時刻は午後12時。

いつもの日課で土倉に降りる、座って精神を落ち着ける。

あの日から欠かしたことのない鍛錬。

イメージするものは常に一つ、彼女の剣だ。

言わば絆のようなものかもれない。

あの夜から変わらずに続けている。



手馴れた工程をできるだけ正確に早く組み上げる。

具現化の瞬間、左手に鋭い痛みが走る、

「痛っ!」

それと同時にドカっと何かが俺の後ろに落下した。



具現化をキャンセルして急いで後ろを振り向く、

赤い、一瞬遠坂?と思ったがそれにしては大きい、・・・。

アーチャー?見間違いでなければそれは間違いなく

元遠坂のサーヴェント、アーチャーだった。



そいつはこっちを確認するととたんに嫌そうな顔をした、

間違いない、奴だ。



「面倒なところに召喚されたものだ・・・」



やれやれとため息をこぼす。突っかかる一言だが、

そんなことはどうでもいい今一番重要なことは何で奴がここに

居るのかだ。

「何でお前が俺の前に現れる?」



お互いに、二度と再会しないことを素直に喜べる間柄だった。

間違いなく。



「聖杯戦争だ」



返答は実に明快であったが納得できる物では、なかった。





「聖杯はセイバーが破壊した!もう聖杯戦争なんて物は起きないんだ!!」



そうだ、セイバーが聖杯を破壊するところはこの目に焼きついている、

そして最後の別れの一言まで、すべて覚えている。

だから聖杯はもう存在しない、いや、してはならない。





「お前たちが破壊したのは、おそらく聖杯の器とその力の一部に過ぎなかったのだろうよ」



・・・反論できない。反論するに値するような事実を俺はまったく知らない。



「ならどうしてセイバーは消えた?」



世界との契約によってサーヴェントになっていた彼女は聖杯を破壊することで

その呪縛から逃れ得たのではないのか。

そして王として彼女の生涯を生き抜いたのではないのか。



「彼女は今、王としての責務を果たし、アヴァロンの力で眠っている。」



その瞬間、体に衝撃が走った、思い続けてきた少女に再び会える、会うことができる。

その他諸々の事情なんて頭から抜け落ちた。再会を願う気持ちを、俺は痛みをこらえながらこの一年否定してきた。

でもあとからあとから絶え間なく沸いてくる、

彼女への想いの前にはあまりにも、そんな強がりは脆すぎた。

・・・会いたい





「・・・・・・・・」



「迷っているのか?彼女は王の債務から解放されている。

お前が悩む理由などないはずでないのか?」



俺の考えている事など容易に想像できると言わんばかりの物言いでアーチャーが

問いかける。悔しいがそのとおりだ、頭にはもうそれしかない。

そうだ何を迷う必要がある、答えはこの一年変わらず持ち続けていた。



・・・何よりも彼女が愛しい、それが俺の答えだ。



「アーチャー、力を貸せ。」



聖杯でセイバーに再会する、そのための戦いだ。



その決断をしたのは正義の味方であるエミヤシロウじゃない。

ただセイバーを愛している衛宮士郎だ。それでもいいと思えた。

彼女に再会できるなら何を失っても俺は後悔なんかしない。





「いいだろう、その願い気に入った。」



あいつはやけにあっさりと俺への協力を承諾した。



「非常に不愉快ではあるが、お前をマスターとして認めてやろう、一時的にな。」



やはり奴は気に食わない。



それから居間に移動した。

アーチャーは今後の対策についての考えを話し始めた。



「今回の聖杯戦争はできるだけ前回をなぞるように行われるだろう、

大体サーヴェントの顔ぶれも同じはずだ」



現界しようと急いでいたアンリ・マユは聖杯の中で固着化しようとしていたところを器ごと破壊された、だから今回の聖杯は汚染から開放されている。そして今までの分の力も満ちているらしい。正常化した分だけ、前回の聖杯戦争を正しい形で終局させることを望んでいるのかもしれない。







「正体がわかっている以上、戦いは非常に有利に進められるだろう。」



それは固有結界、無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)の特性に関係している。

相手の苦手なものだけを大量に用意出来るなら勝負など最初から

決まったようなものだ。

故に、勝敗を決めるのは、

固有結界を発動できるか、

魔力が尽きる前に相手を粉砕することが出来るか、

の二点になってくる。



「発動は問題ない、戦いながらでも発動は容易だ。」



アーチャーのスペルは俺のスペルでもある。

だがそこに込められている意味はきっと違うものだ。



突然携帯が鳴り出す。むりやり遠坂に持たされた物だ。



「士郎、家に急にランサーが出たんだけどそっちに何かなかった?」



「ああ、アーチャーが出た。」



「・・・ちょっと待ってなさい。」



乱暴に電話が切られる。おそらくこっちに向かってきているのだろう。



「遠坂とランサーが来るぞ。」



「ほう、楽しみだな。」




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気分的セイバールート後、聖杯戦争がもう一度起きたらと脳内妄想を
書き散らしてしまいました。まったく同じ題名の作品がとあるHPに
UPされたのに衝撃をうけ、急遽題名だけ付け直した過去を持つSSです。
セイバーとの再会のためにひたすら戦う士郎を書けたらいいなぁ〜。
セイバー派っす。


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