4、じゃあ投影してみなさいよ


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1: Hyperion (2004/02/20 01:14:00)


4、じゃあ投影してみなさいよ


玄関から居間に向かう、ライダーもいることだし、特にチャイムを鳴らす必要も無いだろう。
桜と士郎がちょうどお昼でも作っているのだろうか、いや、顔色を見るに二人とも私と同じで
先ほど起きたところらしい。

「よぉ、遠坂。休みの日はいつもこんなに寝ぼけなのか?」

「あら、衛宮くん達こそ、今起きたんじゃないかしら?昨日の夜同じ席にいたのなら
私とおなじ境遇だと思ったのだけれど」

「む。まぁ、そうだから否定はしない。だけど桜は別だぞ。
俺は桜に起こしてもらったんだし、それより遠坂も飯食うのか?」

「ええ、頂くわ。私も朝から何も食べていないし」

すぐに始めたいところだけれど、腹が減っては戦はできぬ、っていうし。
躊躇区を済ませてからにしよう、ライダーもそう思っているだろうから。

「サクラ、昨夜はすみません。リンに用事があったものですから。
本当ならば、タイガを鎮めてから向かうべきだったんでしょうが」

「ライダーが謝ること無いです。それよりも私はライダーがあんなにもお酒に強いことに
びっくりしちゃいました。それに、藤村先生もいつのまにか倒れちゃってたみたいだから」

「しかし、皆、酒には弱いのですね。タイガは中々のものでしたが
私にとって、あの程度では嗜みの内にしか入りませんね。
士郎も男性ならば、もう少し強くて然るべきでしょう」

ライダーは考え込むようなポーズを取って、席に着く。
そうだ、昨夜ただ一人、あの超が付く強烈な酒を飲んで平静を保っていられたのは、ライダーらしかった。
私の曖昧な記憶の中に、一人猛然と藤村先生と張り合う姿が浮かんでいたし。
昔の女性はこんな人ばかりなのだろうか。
それに酒に強い女神って……なんでかさっきのイメージが崩壊していく気がした。



そんなことで昼食を終えた私達は食後のお茶を啜っていた。
本当は紅茶がいいんだけれど、今はそんな気分じゃなかった。

「さてと、衛宮くん。ちょっと話があるんだけど。私の部屋まで来てくれない?」

「ん。魔術の鍛錬の成果でも見るのか?爺さんには教えてもらってるけど
それほど、変わっているわけでもないぞ」

それもそうだろう。こいつは2年間のほとんどを寝て過ごしていたし、
違う体での魔術行使もそう、簡単に慣れるものでもないのだろう。

「ええ、ちょーっと用事があって、まぁ趣旨は似たようなものよ
ほら、早く。今すぐ行くんだから」

ライダーに目線を向けてから、士郎と離れにある私の部屋に向かった。


ベッドに座って、目の前に緊張したような面持ちで立っているやつに
なんの情けもかけずに話をきりだした。

「率直に言うわ、衛宮くん。」

「うん、こっちの準備はいいぞ。遠坂が俺を苗字で呼ぶときは何か良くないことが起こる前触れだし。」

「あら、わかってるんなら話は早いわ。そうね、いきなりで悪いけど、明日イギリスに行くことになるわ。」

「そうか、分かった。準備大変そうだな__________って!おい!今なんて言った、遠坂!?
お前、イギリスに行くってどういうことだよ!?まさか協会に俺の事がばれたとか言うんじゃないんだろうな!?」

「そんなことないわよ!!私がどれだけ苦労して、衛宮くんのこと隠し通したと思ってるわけ!?」

「じゃあ、なんでいきなり俺がイギリスに行かなくちゃなら……」




「そ、そんなこと、許しませんからねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」





いいかけたところで、居間のほうから怒号が降り注ぐ。
今のは桜の声だろう。ライダー、あんなに余裕だったのにいったいどんな伝え方したんだろうか……。

「キャーーーーーー!!何!?今の誰の声!??」
ドドドドドドドドドド
「さ、桜ちゃん……?うわぁぁーーーーぁん、桜ちゃんが壊れちゃったぁーーーーーーーーーー!!!」


バッターン……ゴン!


間髪入れずに藤村先生のものらしき叫び声と、何かが倒れて角にぶつかった様な音が響いた。

「……と、ともかく、なんでそんなことになるんだよ……?」

「……な、なんでって、チャンスが舞い込んできたからよ。これを見ればわかるわ。」

招待状の入った封筒をベッドから士郎に投げる。
そうだ、藤村先生も昨日の夜の状況からすればこの屋敷にいたはずだ。
ああ、もう。桜があんな声を上げるなんて計算外だった。
「もう、ライダー……」

一方、士郎の方はどうかというと。

あぁーやっぱり固まってる。


「私がそうだったんだし、驚くのも当たり前か」

「遠坂、いくら金が欲しいからといってもだな……」

「何よ。その言い方、私が衛宮くんの体を協会から売って貰うために、使わないとはいえ
家財をどれだけ売り払ったと思っているのかしら?そりゃ、間桐の物も入ってるけれど、
ちょっと足りなかったから、衛宮くんのために手放したのよ?
それに前に少し話をしなかったかしら?遠坂の魔術はすごくお金が掛かる____だからお金はいくらあっても足りないって」

「……いや、確かにそれは俺が悪かった、ごめん遠坂。
だけど5000万£だったとしてもこんな危なそうなことには賛成できないよ。
このルールを見る限り、遠坂は桜とライダーも連れて行く気なんだろう?だったらなおさら、
桜がこんなことを了承するはずが無いじゃないか。
金なら俺が一生を以ってなんとか弁償する。遠坂の宝石の分もあるしそれは前から思ってたことだ」

「そういうわけにも行かないのよ士郎。私があっちで魔術を追い続けているのはわかってるわよね。
____正直に言うと____お金が足りないのよ……」

「お金が足りないって遠坂。お前の家、あんなに金持ちなのにか……?」

これは本当に本当のことだ。
なんといっても遠坂の転換の魔術で使用する宝石には、莫大な資金が必要だからだ。
代々遠坂の家は、知る魔術師こそ知るが、資金繰りに酷く悩まされてきた。

「そうよ!半端な宝石じゃあ、魔弾としての力も半端なのよ!
それに何でか分からないけどエーデルフェルトのお嬢様は私を目の敵にしてるし。
『あら、ミストオサカ、お金にお困りのようですわね』なんて言われて私がどんな思いかわかるっていうの!?
この魔術大会で優勝して、それこそ浮浪犬のようにギャフンと言わせてやるんだから!!
それとも何?ここまで言っても、衛宮くんは参加しないっていうわけ?
そういうのなら、いますぐにお金を投影しなさいよ!もちろん、すぐ消えない奴よ。
投影できたなら後のことは私がやるから、さぁ、さっさと投影しなさいよ」

我ながら迫真の演技だったのではなかろうか。
まぁ演技じゃないところもあるけど、細かいことは気にしないでおこう。
ここまで言って衛宮士郎が首を縦に振らなければ、その首ごと特大のガンドで吹っ飛ばす気満々だ。
うん、本当にやりかねない。

「____わかったよ、遠坂。元は俺が悪いんだし、だけど、桜が……」

「先輩、私なら大賛成ですよ。さぁ早速用意を始めましょう!行くのなら早いほうがいいでしょうし」

なんて、けろっとした顔で桜が入室してきた。

「桜!?本当にいいのか?だって殺し合いだぞ?魔術戦だぞ、時計塔だぞ?英語なんだぞ?
人外だぞ?飛行機乗るんだぞーーーー?!」

なんだか、士郎は混乱しながら、自分でも何を言っているのか分からない、といった語調で
桜に疑問を一方的に投げつけている。
人のことをいいながら私だって口をぽかんと開けて呆然としているのだけれど。
そんな異常なことを言い出す桜の後ろで、声を抑えて口元を歪めるライダーの姿があった。
いったい、どんな言い訳をしたら、桜が自ら参加するなんていいだすのか、
私には全く想像もつかない。

「ちょっと、ライダー。いったいどんな口添えをしたら、こうなるわけ?!」

ライダーの耳元で囁く、と

「何ですかリンまで、私を信用しているのではなかったのですか?
それに私は、ただ一つだけサクラに助言をしただけですよ」

またまた、口元を歪めながら震えた声でライダーは答える。
聞いても尚、この使い魔はその手口を口外したくはないようだった。
私としては、本当に興味があるのだけれど。





「作者の駄文 その3」
長くなるだろうから、とこの投稿掲示板を紹介していただいたのはいいものの
書くにつれて、自慰的な文章になっているのではないか。という思いが
強くなってきています。期待してる人もいないだろうし。
どうしようか、迷っている次第です。
やはり最初に俺さんに突っ込まれたときに、やめるべきだったのか……
とはいえ、一度やると言った事ですし、最後までといかずとも
一区切りまでは書くべきだと思っておりますので、
どうかお付き合いのほどをよろしくお願いします。


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