着せ替え同盟


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1: もっくす (2004/02/20 00:32:00)[bacgh700 at jttk.zaq.ne.jp]


 ――そこは、亜空間だった。

「ふむ……どうやら、全員そろったようだな」

 そこは教会の奥まった一室。
 そっけない白い壁紙が張りめぐらされただけの四角い部屋には、学校の会議室で見るような長机が四角く組まれている。
 上手には移動式のホワイトボードを背に、机の上に組んだ両の手で口元を隠すように座る言峰。
 何処からともなくゲンドウポーズと言う単語を受信したが、この際気にしないようにしよう。

「ええ。今日この時間が、私たちにとって有意義なものである事を願いますわ」

 左手にはあんた誰だよ、と思わず突っ込みを入れたくなる素顔のキャスター。その横にちょこん、という感じに鎮座ましまして芋羊羹を貪る性別不詳の精霊。性別不詳なのにゴスロリ衣装なのは気にしてはいけない。

「…………………………(どうやら同意しているようだ)」

 右手には黒い影。いや、黒い影というかイコール桜の影か。どうやら今回はアンリ・マユの影ではないらしい。なんか後ろにこっそりと桜本人も居るし。

「……なんでさ」

 下手には俺、衛宮士郎。……いや、ホントになんで俺がこの異次元空間に紛れ込んだのだろうか。
 ふと、気が付けばこの席に座っていた。
 そして目に入ったのがこのメンツ。統一性も何も無い。
 そして正面に座る言峰、その背後に見えるホワイトボードにでかでかと記された『本日の議題』。

 そこには―――「第一回☆セイバー着せ替え同盟総合会議」と書かれていた。



 ――――ワカラナイ。



「会議の開始を宣言する前に、乾杯を執り行いたいと思う」

 す、っと。まるで投影魔術か何かのように、先ほどまで何も無かった机の上に人数分の杯が現れる。
 それを三人(?)は当然のように手にとる。

「では諸君。ひとまずは本編オールクリアならびに、セイバーイベント画&立ち絵コンプを祝い……乾杯!」
「乾杯!」
「…………………………(触手の一本が杯を掲げる)」

 ああ、もう。何がなんなんだか。
 ちなみに、性別不詳のゴスロリ精霊は未だにどこからか出てくる芋羊羹を貪り続けているし、影の陰に隠れた桜は影から手渡された(?)杯を傾けている。

「では諸君。ここに第一回☆セイバー着せ替え同盟総合会議を開催を宣言する」

「それではまず、Fate各章でのセイバーの衣装について纏めてみましょうか」

「…………………………(同意しているようだ)」

「うむ。そうだな。まずはセイバールートか。ここでの初見は鎧姿、雨合羽、私服姿、湯上りセイバー、竹刀私服、竹刀完全武装、鎧下衣装といったところか」

 そう言ってホワイトボードに箇条書きに書いていく言峰。
 箇条書きに――デフォルメイラストを手早くホワイトボードに書き込んでいく言峰。

 だが言峰。鎧姿は正確には、プロローグで既に出ているんだぞ。

「次が凛ルート。ほとんど立ち絵は出尽くしてはいるけど、湯上りセイバーが初見。そしてイベント画では、ドレス姿のセイバーがありましたわね」

 キャスターが二枚のピンナップを机の上を滑らせて言峰に渡し、言峰がそれをホワイトボードに磁石で留める。
 それは――1枚は明らかに盗撮したとおぼしきアングルから撮られた、髪を解いた湯上りのセイバー。
 そしてもう1枚は、恐らくは何十枚と撮った中から選びぬかれた一品なのだろう。
 角度、光量からくる陰影、そのどれをとっても最高の出来で取られた、セイバーのドレス姿だった。ひらたく言うと聖女陵辱のイベントCG。

「…………………………(影の表面から人形が出てきて、机の上に転がった)」
「えっと、私のルートで出てきた黒化セイバーの鎧姿で最後でしょうか」

 なるほど。影自身のジャスチャーだけでは会議に参加するのは事実上不可能。桜はその通訳と言うワケか。触手を使って手渡された(?)、そのやたらと精巧な1/10スケールの黒化セイバーのフィギアを言峰がホワイトボードの、ペン置きのスペースに立てる。
 どうでもいいが、ブラックセイバーと書くとすごく卑怯なキャラと言うか可変リアウイングの四駆に思えて仕方ないので黒化セイバーと書き直したのは作者だけの秘密だ。



 ――――ヨク、ワカラナイ。



「以上の衣装が、セイバーが本編中に見せた全てだ。個人的には、私服姿が一番良いと思うのだがどうだろう?」
「何を言うのかと思えば。ドレス姿こそが彼女に最も相応しい衣装ではなくて?」
「…………………………(影の表面からあとからあとから人形が出てくる)」
「えっと、やっぱり黒の鎧姿が一番良いのではないかと思います」

 ―――瞬間。世界が軋みを上げた。
 三人(四人?)の間には不可視のはずなのに、見ようと思えばすぐに見えそうな程の勢いで火花が飛び交っている。
 先ほどまでの和やかなムードとは一転、今度は互いに互いを牽制しあい、隙あらば喉元掻ききろうと言う様な殺気がこの空間を満たす。
 その中で、キャスターの横に座った性別不詳ゴスロリ精霊は番茶を飲んで和んでいる。

「Fateヒロインリボン率100%は伊達ではない。彼女の私服はその中でも前後にリボンを装備し、隙が無い。武内氏の趣味全開ではないか」
「清楚な白いドレスこそが、高貴なる彼女には最も相応しい衣装でしょう。本編中、女らしい色香に満ちた衣装はこの他には無くてよ?」
「…………………………(影の表面から等身大の黒化セイバー人形がゆっくりと迫り出してくる)」
「ええっと、ええっと……ほら、やっぱり黒い鎧って一種のロマンだと思いませんか?」

「何よりも。本編中に衛宮士郎がその姿こそが一番と褒めていたではないか(※言ってません)。これを置いて他になにがあると言うのか」
「聖女陵辱はFate最高のエロエロシーンと評判じゃないですか。何よりも製作スタッフからの『キャスターもっとやれ』との熱い声が!」
「…………………………(等身大セイバー人形がゴトリと音をたてて床に落ちた)」
「ほら、白セイバーに比べて顔の方も護ってますし、威嚇的で強そうじゃないですか?」

「ふむ。お前たちにはこの良さが分からんと見える」
「ふふふ。何も分かっていないのね、貴方達は」
「…………………………(触手を振り上げてゆらゆらとさせている)」
「ええと、その……先輩、助けて〜(ノ<。)」


 ――――カレラガナニヲイッテイルノカ、ヨク、ワカラナイ


 目の前では壮絶な戦いが始まっている。

 桜は黒セイバーの鎧を着て隅で震え、

 影は等身大セイバー人形を依り代にギクショクと動き、

 キャスターは自ら白のドレスを纏って大魔術を連発し、

 性別不詳のゴスロリ精霊は早々に黒鍵の餌食となってノックダウンしている。

 ……とりあえず。
















 言峰のゴツイ体躯に、セイバーの私服と言う組み合わせだけはやめて欲しかった。



<後書き>
 初のFateSSがこんなので良いのか、自分。
 もーね、なんていうか電波です。言峰がセイバーの私服を押すのは、元は彼が凛に贈った服だから。つまり言峰の趣味=セイバーの私服、と(笑)。
 ちなみにこの場に士郎が居るのは、衣装無しの姿を唯一知っているキャラだから(笑)


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