「ふぅ、・・・ここも異常なし、と。」
「そろそろ戻りましょうか、兄さん。」
もうかれこれ一時間半は見回っただろうか。
まず屋敷を見てまわる。
次に屋敷周辺を見てまわりふと気付くと日は沈んでいた。
そして見回りの組み合わせは俺と雪之、八雲さんとシエル先輩、そして草薙さんとアルクェイドという組み合わせだ。
ちなみに俺と雪之が決まったとき当然二人は不満ありまくりな様子だった。
それで二人を別々にしたのは俺の意向だ。
この二人を組み合わせたら下手したら屋敷が全壊しかねない。
「兄さん? どうかしました?」
「あ、いや、なんでもないよ。 ただボーっとしてただけ。」
「そうですか。 もっと気を引き締めてくださいね。」
「ああ、わかってるよ。」
そういって屋敷の方に歩き出した。
その刹那、こめかみにズキンと痛みが走った。
「ぐっ。」
この感覚は知っている。
自分が人間以外のものに出会ったときのそれだ。
雪之は既に戦闘体制に入っているらしく先ほどまでの雰囲気とは打って変わって殺気を纏っている。
「兄さん。」
「ああ、わかってる。」
振り向くとそこには五、六匹のヒトでないモノがいた。
ポケットから七ツ夜を取り出す。
変わりに左手で外した眼鏡をしまう。
パチンと音がして刃が飛び出た。
軽い頭痛がするがこの程度なら問題ない。
「行くぞ、雪之。」
「はい。」
その言葉を合図に走り出す。
向こうもそれに合わせてこっちに向かってくる。
後一歩で間合いに入ると思った次の瞬間相手が腕を振り下ろした。
すぐさま体を傾けてそれをかわす。
そのまま、すれちがいざまに胸にあった点を突いた。
するとソイツはたったそれだけで生命活動を停止して灰になった。
一度止まって今度は反対向きに走り出す。
だが止まるといっても実際に止まったわけではない。
足のばねを利用して一瞬で運動の方向をまったく逆方向に向ける。
それが人の目には高速の巻き戻しに見えただろう。
だが人でなくても目の前のソレは反応できていない。
ソイツの点は胸の真ん中にあった。
迷わずそこを突く。
ソイツは先ほどのヤツと同様に灰になった。
「終わりましたか? 兄さん。」
言われて雪之の方に目をやると既に片付いていたらしく電柱に寄り掛かっていた。
「さすがは兄さんね。 その程度の相手なら瞬殺しちゃうなんて。」
「それを言うなら雪之、お前はどうなんだ? 俺より二人も多く相手にしたくせに俺より早く終わってるじゃないか。」
「うっ、そ、それは・・・その・・・・・・ほら、あれよ。 慣れですよ。」
「はいはい、そういうことにしておきますか。」
「むっ、何ですか、その言い方は。」
「いや、別に。」
「む〜。 納得いきません。」
「ほら、そんなことより早く戻ろう。 もう夜も遅いんだし。」
「・・・・・・・・・・・・わかりました。」
雪之は少し拗ねた様に先を歩き出す。
「ほら、雪之。 拗ねるなよ。」
「別に拗ねてなんかいません!」
「はいはい。」
口では怒っていても俺が隣を歩くと少し上機嫌に見えた。
そして屋敷の中へと帰っていった。