いつか繋がる青い空の向こう(1)


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1: 破魔矢 (2004/02/16 16:06:00)

目蓋を閉じる。
この身に受けた傷は全て癒えることなき呪い。唯一この身を支えていた聖剣の加護も先ほど絶えた。
もはや己の最後を受け入れつつあるその少女は、けれどそれに抗うかのように穏やかに微笑んだ。
長い責務もまもなく終わる。
ならば最後に少女として生きるのも許されよう。
そう思った自分がおかしくてこぼれた笑みだった。
「先程の夢のせいかもしれぬな。」
遠い昔に捨て去った自らの少女としての心を拾おうとし、代わりにその空虚に入り込んだ我が鞘にして無二の主。
自覚しよう。自らの心の深遠、長きに亘り空洞と化していたその領域が今は夢か現かもわからぬその少年で満ちていた。
再び笑みがこぼれる。
あの忠実な騎士が戻るまでまだ間があろう。
ならば最後くらい全てを忘れよう。王としての責務も流れた血も全てを受け入れた上でなお願おう。
夢の中での自分は彼を支えるのではなく、お互いの理想を走りぬけた上でお互いを誇りながら笑い合うことを夢見たのだから。
ならばこそ最後に伝えよう。自分が走り抜いたことを。全てを終え、なお後悔なく自らを誇れること。そしてなにより
「シロウ」
今もこの胸の空虚を満たし支え続けてくれている彼への思いを。
この意識なくなるまで呼び続けよう。
アルトリアという少女が確かにいたのだと証明するかのように。
最後にみる夢で再び会えるよう思いをこめて


























いつか繋がる青い空の向こう
FATE / STAY NIGHT AFTER STORY
(1)





















「先輩、もうすぐ夕食の支度をしますけど、どうしますか?」
そんな桜の声で気がつく。どうやらずいぶん長い間呆けていたらしい。
「あぁ、ごめん桜。俺も手伝うから先に始めてくれ。」
桜が部屋に入ってくる前に、慌てて返事をする。魔術師の家系は一子相伝。部屋の中には遠坂家で考えても間桐家で考えても魔術師とは考えられない桜には見せられないものが多すぎる。
「はい。わかりました。でも長旅でお疲れなら先輩は休んでてかまいません。最近はイリヤちゃんも手伝ってくれますし。」
意外な新事実。イリヤはなにやら体に持病を持つとかでちょくちょく遠坂の治療を受けにロンドンに来ていたのだが、そんな場面にはお目にかかったことがない。
「ばか言え。自分の家なんだから俺が働くのは当たり前だろ。むしろ昼食は桜にご馳走になったんだから、桜こそ休んでるべきだ。」
とりあえず部屋から出ながら言った俺の一言への返答は寂しそうな笑みだった。
「先輩は変わりませんね。やっぱり先輩は先輩のままでした。」
「当たり前だろ。俺は俺。そんな簡単に変わるもんじゃないだろ?」
そう、衛宮士郎は今だって養父である切嗣の目指した正義の味方を目指してたあの頃のままだ。人間そう変わるものじゃない。
「ええ、だから安心しました。先輩が変わっていたらどうしようって不安だったのかもしれません。」
「変な桜だな。大丈夫、他の人はわからないけど俺はそう簡単には変わらないよ。でもどうしてそんなこと思ったりしたんだ?」
質問した途端、桜はいたずらに成功した子供のような笑みを浮かべて
「だって、セイバーさんが忘れていったぬいぐるみがなくなってましたから。先輩がそういう人になってたらどうしようかって」
「さ、桜。ち、違う。いや、違わないけど、ってそうじゃなくてどうしてそれを」
「大丈夫ですよ、先輩。このことは姉さんや藤村先生には言ってません。ちゃんとわたしの胸の奥にしまってあります。」
しまった。この5年間、この家のことは桜に任せっきりだったんだから気が付いて当然だ。しかも絶対に話すわけにはいかないが既にそういう人になってたりする。具体的には一緒の布団で眠ったり、1人のときに話しかけたり
「って、違う。それは誤解だ。あれはそういうんじゃなくて」
「はい、わかってます。だから夕食はわたしに作らせてください。」
まいった、完敗だ。ここまで弱みを握られると反論なんて不可能だ。せめて知られたのがあの赤いあくまじゃなかっただけ幸運だと思おう。
「先輩ならきっとわたしがわたしでなくなったら止めてくれますよね。」
そんなことを考えていたせいか、こう呟いた桜の声は俺に届かなかった。
















「もう、桜ったら余計なこと言うんだから。」
俺を驚かすために秘密にしていたことをあっさりばらされたイリヤは桜が帰るまでずっと拗ねていた。
「シロウもいつまでにやけているのよ!」
「むっ、別ににやけてるわけじゃないぞ。ただイリヤが俺を喜ばせようと努力してくれてたことがわかって嬉しかっただけだ。」
そう言った途端、俺の感謝の言葉が嬉しかったのか、えへへーと笑いながら抱きついてくる、小さな悪魔。いくら妹といえど、この6年でそれなりに成長した体で密着されたら健全な男子としてはとにかくまずい。
「シロウはわたしのお兄ちゃんなんだから当たり前でしょ。わたしはシロウが喜んでくれることならいっぱい努力するよ。」
「イ、イリヤ。わかったから離れてくれ。この状況はまずい。なにがまずいかわからないがとにかくまずい。」
「ええ。わたしが藤村先生の説得に苦労しているのに自分はイリヤといちゃついてるなんて思われるのはまずいものね。」
「そうだ。こんなの遠坂にも悪い。」
「そうね。でもにやけた顔で言われても説得力がないわよ、衛宮くん。」
えっ。と、とととと遠坂。いつに間にそこに
「リン。嫉妬はレディとしてどうかと思うわ。そもそもシロウはわたしのものなんだからリンが嫉妬するのは筋違いよ。」
「むっ。わたしがいつこんなやつに嫉妬したっていうのよ。わたしは仕事を押し付けて自分達はお楽しみ中だってことが問題だって言ってるの!」
「ああ、やだ。素直じゃない上、嫉妬深いなんてますますレディ失格ね。そんなんだから6年もいっしょにいて欠片も進展しなかったのよ。」
なにやらバチバチと視線で火花を散らし始めた2人を止めようと急いで口を開く。
「2人とも、それくらいにしておいてくれ。こんなことをするために残ってくれたわけじゃないだろ?それで遠坂、藤ねぇは帰ったのか?」
「ええ。先程“士郎を取られちゃったよー”って叫びながらバイクに乗ってものすごいスピードで走っていったわ。」
さすがはロケットタイガーもといロケットダイバー。その異名は今だ健在か。
「ところでいつまで抱き合ってるつもりなのかしら?」
その言葉で俺はまだイリヤに抱きつかれたままだったことを思い出す。
「イリヤ、離れてくれ。今からするのは大事な話合いだし、このままだと話しづらい。」
「わたしは別にかまわないけど、シロウがそう言うなら離れてあげる。わたしはリンと違ってレディだからシロウが嫌がることはしないわ。」
第2次頂上決戦のゴングが鳴り響く。突然立ち上がる遠坂に
「イリヤ、あまり遠坂を挑発しないでくれ。遠坂もいちいち挑発に乗らないでくれ。あまり遅くなるわけにはいかないだろ?」
と慌てて声をかける。
「ふぅ。そうね。今回はわたしが引いておくわ。真面目な話をしましょう。」
そう言いつつも“貸し1つ追加ね”と視線で訴えてくる赤いあくま。
新作ガントの試し打ちは勘弁してください。
というか、今回は俺が悪いのか?
「それで今回の聖杯戦争は後何人空いてるんだ?」
本来聖杯戦争には派閥の代表が参加するらしい。当然、教会の管理者が決めた外部枠があり聖杯戦争の地に契約できる魔術師がいなかった場合その中から選ばれることになる。この土地の管理者である遠坂やアインツベルンに力ずくで復権させたイリヤはともかく俺が正規の方法で参加するのは難しい。
「今のところセイバー、アーチャー、キャスター、バーサーカーのクラスが空いているわ。シロウがどのクラスを選ぶかわからないけど早くした方が良いわよ。」
そう、俺が聖杯戦争に参加するためには問答無用でマスターになるしかないのだ。既存のマスターから令呪を奪うことも可能だが、いくら聖杯を壊すためにはサーヴァントの助けが要るからといって、衛宮士郎が目指す正義の味方になるためにはそんな方法を取るわけにはいかない。
「そっか。でも前回セイバーを呼んだ時は意識してやったわけじゃないからな。あのセイバーを呼ぶならともかく普通のサーヴァントの召喚っていったってどうすれば良いかわかんないぞ、俺。」
もはや英霊ではないだろう彼女との長かった2週間あまりの日々を思い出し、そんなことを冗談交じりで口にする。
「聞いてないわよ、そんなこと。なに、あんた召喚の儀式なしでセイバーを呼び出したの?使い魔に魔力がいかないなんて変だとは思ってたけどほんとに無茶苦茶だったんじゃない!」
むっ、無茶苦茶とはなんだ。あの時はとにかく必死だったんだから仕方ないじゃないか。イリヤまで目を丸くしてるし。そもそもあの時に説明したぞ、俺。多分だけど。
遠坂にがくがくと揺さぶられながらの反論は、しかし決して口から出ることはなかった。
遠坂は人を揺する時は首を持ってはいけないということを誰にも教わらなかったのだろうか?いつかお前は過失で人を殺すぞ。














深夜。
とりあえず今後の方針だけを決めて解散した後、なにやら自分が居なかった間の管理者としての仕事の引継ぎがどうとかで帰った遠坂と遅くなっても良いから帰るよう藤村の爺さんに言われてたイリヤの2人を送ってから、時計塔に行っても欠かすことのなかった鍛錬を土蔵で行う。
「―――――投影、開始」
前回の聖杯戦争で作られたスイッチを押し、この5年間でようやくものに出来た魔術を開始する。
「ふぅ、こんなものかな?」
およそ10秒。手にした干将・莫耶をオリジナルと比べながら、己の魔術の出来を見る。
もともと大した才能もない上、ほとんど自己流でやってきた俺は向こうでも当然落ちこぼれ、まともな魔術などほとんど身に付かなかった。
その上、本来俺が使える魔術は投影魔術じゃないらしく、基礎の投影すら満足にできない俺にイリヤがくれたのが、この2振りの夫婦剣だった。
もともとアインツベルンの魔術は探索向きらしく、トップクラスのサーヴァントを呼べるであろう聖遺物や宝具を多数所有しているとか。過去、アーサーやヘラクレスを筆頭に最優秀のサーヴァントを常に召喚しておきながら聖杯を手に入れられなかったのは、まともなマスターがいなかったせいらしい。
まぁ、これを世話係だったメイドさんに持ち出させたせいで死んだと思っていたイリヤの居場所がばれ、大変なことになったんだけど。
「体に異常もなし。複製に粗もなさそうだし、なんとかなりそうだな。」
両手を開閉し、体の調子を確かめる。調子に乗って強化の魔術より投影魔術を優先させたツケはまだ完全には消えていない。
「まっ、考えてても仕方がないさ。安静になんてしてる暇はないんだから。」
誰にともしれぬ言い訳を口にしながら、鍛錬を再開しようとした途端、
“カーン、カーン、カーン、カーン”
この敷地に引かれた結界が作動した音が響き渡った。
瞬間、渦巻く気配により歪んだ空気が入り込んできた。
静寂だけが支配していた空間が異質な空気に触れて軋み始める。
胸に嫌なモノが広がっていく。
やばい。
突然変わった空気に反応して衛宮士郎の本能が狂ったように警報を鳴らし始める。
何かはわからないが突然の侵入者との戦いを避けるよう頭の奥で理性が悲鳴をあげる。
まだ未熟といえど、この6年で鍛え上げた戦闘倫理、全てを支配する戦術眼“心眼(真)”が今の俺では勝てないと冷静に判断を下す。
この空気の主は腐っている。指先から汚泥に変わり、魂まで犯されたかのような気配に己の心が恐怖していく。
今の自分では勝てない逃げろここで死ぬわけにはいかない逃げろ負けるわけにはいかない逃げろ無理だ逃げろ怖い逃げろ逃げろ逃げろにげろにげろ・・・・・。
だんだん大きくなる足音で確信する。この気配の持ち主はこちらに近づいてくる。こんな計ったような時期に来るヤツなんて聖杯戦争の関係者に決まっている。ならば狙いは俺だ。こんなものを遠坂やイリヤと戦わせるわけにはいかない。
全力で逃げようとする己自身を最後に残ったその思いで必死に繋ぎ止めると外へと足を運ぶ。
「誰かは知らないがなんの用だ?この家には盗む価値のあるものなんてなにもないぞ。」
平静を装いながら、いつでも抜けるよう干将・莫耶を隠し持つ。
「なに、今回は孫のことも含めて挨拶しに来ただけよ。そんなに殺気立たんでもワシは何かするつもりはない。」
返ってきた返事を以外に思いながらも緊張を解くような真似はしない。
「孫?心当たりがないな。誰かと勘違いしてるんじゃないか?」
「いやいや。この家で合っているはずじゃ。お主は知らぬか?ワシの名は間桐臓硯。この家で世話になっておる間桐桜の祖父よ。」
一瞬、驚きで思考が停止する。
戦場では致命的な隙以外の何ものでもないこの空白の間に、
カキーーーン
金属と金属が弾きあった甲高い音が響き渡った。
「なにもしないんじゃなかったのか?」
「ふぇっふぇっふぇ。ワシ自体は何もしておらぬよ。今のは全てアサシンの仕業よ。ワシの言うことなぞ聞かぬじゃじゃ馬でな。おとなしく見ておれと言うたにも関わらず手を出してきおったわ。」
くそ爺。最初からそのつもりだったくせに白々しい。
「にしても、お主よく気配を殺したアサシンの投擲を防いだな。よもや始めから気づいておったか?」
「ただの偶然だ。」
そう、サーヴァント、しかもアサシンのクラスが本気で気配を消したら俺に気づけるわけがない。仕掛けてくるならあのタイミングだと体が勝手に反応しただけ。弾き返せたのはただ運が良かっただけだ。
やばいヤツだと思ってたけど、既にサーヴァントを召喚したマスターだったなんて!
流れ落ちる冷や汗を気づかれないように干将・莫耶をかまえ直す。
「しかし、今の一投でお主を本気にさせてしまったようじゃ。これはワシも参加せねば無事には帰れそうもないのう。」
もはや返事をする余裕すらない。こちらはまだサーヴァントを召喚すらしていないのに相手は格上の魔術師にアサシンのサーヴァントだ。
どちらか1人でもきついのに、そんなことをすればその瞬間に命を失いかねない。
強化は必要ない。元から完成された宝具にそんなことすればバランスが崩れるどころか下手をすればせっかくの武器が壊れてしまう。
今必要なのは投影魔術。
己が持つ最大の戦力で先手を打つしかない。
「―――――――――投影、開始」
己にのみ通じる詠唱を口にし、最速で回路に魔力を流す。
狙うは姿なきアサシン。
いかなアサシンといえど己のマスターに危険が迫れば姿を現さずにはいられないだろう。
「最後に聞いておく。令呪を捨ててこの戦いから降りる気はないか?」
「たわけめが。失望したぞ。此度の聖杯戦争はマキリ500年の悲願。その大事もわからぬ輩が魔術師を名乗るでない!なにより全ての準備が整い、アレも前回ほどではないが理想的に仕上がっておる。この気を逃すは阿呆のすることよ。」
「そうか、ならお前らはここで終わりだ。」
言葉を発した瞬間、両手に持つ干将・莫耶を臓硯に向けて投げつける。
どこだ?
迎撃のために姿を現したアサシンにありったけの宝具をぶつけようと身構える。
しかし、
ざしゅっ
予想に反して聞こえたのは
2つの肉を切り潰す音。
すなわち、臓硯の目の前に突如現れた虫が3つになった音と
自分の太ももに投剣が刺さった音だった。
「なっ。」
思わず膝を突く。
投擲は後ろから。つまりアサシンは真後ろにいたことになる。
いくら殺す気がなかったとはいえ今のは令呪があるであろう両腕を落とすつもりで放った一撃。運が悪ければ命を落とす。
下手をすれば自分のマスターを失ったかもしれない攻撃を防ぐつもりがなかったのか!?
「ふぇふぇふぇ。小僧、よもやこれで終わりではあるまい。今のはいささか驚いたが仮にも前回の聖杯戦争の覇者。その実力、この程度ではなかろう?」
背筋が凍る。
その言葉に確信する。
こいつは俺たちのことを知っている。教会に報告された表向きの結末ではなくあの時、起きた真実を。
それを知りつつ、ここにいるということは
つまり
この老人は自分達を生かしておくつもりなんてない。
この老人は衛宮士郎を恐れている。
己が悲願を達するに最大の障害として衛宮士郎を認めている。
故にこちら準備が整う前の今、殺すつもりなのだ。



覚悟を決める。
こいつを遠坂達の前に立たせるわけにはいかない。
こいつをマスターのままにしておいてはいけない。
そして
こいつにだけはあのろくでもない聖杯を渡してはならない。



目を閉じる。
5年前のある日、遠坂に見つかり使うことを禁じられたモノ。
衛宮士郎に今も残る変調の原因。

それを
16年前の地獄で見た養父の顔を
10年前の黄金の別れの時の彼女の笑顔を
今もまだ心に刻まれた始まりの出会いを拠り所にして
「投影―――――――――、開始」
開放した。






















目の前に広がるのは光る地平に輝く草原。
ここには衛宮士郎の理想とするものが全てある。
憧れ、願い、欲した理想の自分。
その姿に最も近い彼女が居る場所
限りなく無限に続く剣の墓標の頂上で今も眠る彼女に届くように
いつか自分もこの場所へたどりつけるように
求めるべき宝具の真名を紡いだ。






















「“完全なる約束された勝利の剣”」
かのアーサー王が湖の主から譲り受けたそのままの姿で、かの最強たる宝具がこの手に創造される。
この世に切れぬものなどない最強の剣と持ち主に絶対の加護を与える至上の神秘である鞘。
今は遠い世界へと失われた人の手に余る究極の神秘がじょじょに形を成していく。
ギィ  ギィ  ギィ
「ぐっ」
体の全てが剣に変わる音がする。
やっぱりまだ無理か
ギィ    ギィ    ギィ    ギィ
視界が紅く染まっていく。
まだだ。まだ終わるには早すぎる
ギィ     ギィ     ギィ      ギィ     ギィ
中から食い破ろうとする痛みに耐える
こんなところで衛宮士郎が終わるのをあいつに見せられるかあぁぁーー
許容量を超えた魔力を流された魔術回路が悲鳴をあげるのを無視し
暴れだした右手を握り潰すかのように押さえつける。
ギィ      ギィ      ギィ       ギィ       ギィ       ギィ
あと少し、届け。届け。と ど け え ぇ ぇ ー ー
どこが痛むのかももはやわからぬ体を鞭打ち最後の気合を込める。
そして…
紅い視界を覆いつくす黄金の光の中、
頭上で握り締めた手のひらに確かな重みを感じ、
歓喜と祈りの咆哮をあげる。
「セイバーーーーーーーーーー」
その手には








信じられないくらい白い指が握られていた。
















「あー」
これしか声が出ない。
いや、自分がとてつもない恥ずかしい失敗をしたのは理解しているがそれに思考が追いついてこない。
「あーー」
だからいつまでもこんなことを繰り返すしか出来ない。
今が夢なのか現実なのか区別ができない。
もしかしたら俺は先程の投影で死んでしまったのではなかろうか?
「―――――――問おう。」
だってそうでなければ
「貴方が」
こんななんでもないことのように
「私の」
期待と不安の入り交じった目で
「マスターか、」
こいつが
「シロウ」
俺の名前を呼ぶはずがないんだから






















―――――――――――――――――――――――――
だれも期待してる人なんていないだろうに続きを書いてしまった。
すみません。自己満足でも書きたかったんです。
さて、今回の話を書いている最中、ふと思ったのですが、この設定だと凛trueエンド後の方が遥かに書きやすかったような。
ほとんどの話の流れを決めてから気づく自分。
本当に何やってるんだろう。
今回は藤ねぇの出番が少なかったり妖怪爺さん性格変わってたりと無茶苦茶な展開ですが、こんなものでもおもしろいと思ってくれる人が居たら幸いです。
例によって(2)を書くかどうかは未定です。
だから“続く”が入ってないんですよ。
P.S.すみません。少し直したので代えときます。前と大差ないですけど。


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