※このSSは間桐桜のNormalEndの補完SSです。
従って、FATEをコンプリートクリアした後に御覧に成られることが望ましいかと思
われます。
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剣を構える。
ぎぎぎぎぎと間接から響く金属音。刃と刃が擦れて削れる鈍い音がもはや空っぽに
なってしまった身体に反響する。
否。
空などではない。この身体は億の剣の鞘に成りつつある。体内の骨という骨、筋肉
という筋肉、臓器という臓器、それらの全てが錬鉄の為の工房となり、同時に新たな
刀身でもあった。
事此処に至り、エミヤシロウは人ですらなくなっていたのだろう。思考する脳です
ら鋼と化した身体を異分子と見なし、容赦ない拒絶反応は精神を纏めて切断していく。
痛みはない。痛覚などとうの昔に捨て去っていた。そもそも触覚ですら曖昧で、両
手の平に握っている柄の厚みのみが感じうる世界の全てである。立っているという自
覚すらない。視覚は既にモノクローム。聴覚に至っては身体の裡に響く音のみを捉え
ていた。
もう、俺は人間では有り得ない。
だけどそれで充分。眼前には強大な光を放つ大聖杯なる魔法陣と────
「────!!」
無言の敵意を向けてくる『この世の全ての悪』なる胎児のみ。
己が成すべき事は既に唯一。この振り上げた『約束された勝利の剣』を、今まさに
誕生せんと胎動している悪に振り下ろすのみ。剣とは殺害の意志である。故に、剣と
化した己なれば、この悪こそは逃がさない────!
最早指は剣だった。否、指のみに非ず、エミヤシロウそのものが断ち切るという意
志の元、重く鋭利な刃そのもの。
────I am the bone of my sword.
その輝きはかの宝剣でさえ霞むほど。其処に、断ぜぬ物がある道理はない。
心までもが鋼色。
言葉一言発する間もなく、
それこそ息をすることさえも億劫だから、
すまない、なんて自分でも意味が分からない謝罪とともに、
まるで夢のような鮮やかさで、
宝具『エミヤシロウ』は生まれる前の悪、世界の破滅を願う呪いを一刀の下、断罪
した。
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容量の問題で分割投稿。
連続更新できればいいなぁ、と思いつつ。