雪桜(上)


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1: into (2004/02/08 16:42:00)[terag at pop06.odn.ne.jp]

※このSSは間桐桜のNormalEndの補完SSです。
 従って、FATEをコンプリートクリアした後に御覧に成られることが望ましいかと思
われます。


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 剣を構える。
 ぎぎぎぎぎと間接から響く金属音。刃と刃が擦れて削れる鈍い音がもはや空っぽに
なってしまった身体に反響する。
 否。
 空などではない。この身体は億の剣の鞘に成りつつある。体内の骨という骨、筋肉
という筋肉、臓器という臓器、それらの全てが錬鉄の為の工房となり、同時に新たな
刀身でもあった。
 事此処に至り、エミヤシロウは人ですらなくなっていたのだろう。思考する脳です
ら鋼と化した身体を異分子と見なし、容赦ない拒絶反応は精神を纏めて切断していく。
 痛みはない。痛覚などとうの昔に捨て去っていた。そもそも触覚ですら曖昧で、両
手の平に握っている柄の厚みのみが感じうる世界の全てである。立っているという自
覚すらない。視覚は既にモノクローム。聴覚に至っては身体の裡に響く音のみを捉え
ていた。
 もう、俺は人間では有り得ない。
 だけどそれで充分。眼前には強大な光を放つ大聖杯なる魔法陣と────

「────!!」

 無言の敵意を向けてくる『この世の全ての悪』なる胎児のみ。
 己が成すべき事は既に唯一。この振り上げた『約束された勝利の剣』を、今まさに
誕生せんと胎動している悪に振り下ろすのみ。剣とは殺害の意志である。故に、剣と
化した己なれば、この悪こそは逃がさない────!
 最早指は剣だった。否、指のみに非ず、エミヤシロウそのものが断ち切るという意
志の元、重く鋭利な刃そのもの。

 ────I am the bone of my sword.

 その輝きはかの宝剣でさえ霞むほど。其処に、断ぜぬ物がある道理はない。
 心までもが鋼色。
 言葉一言発する間もなく、
 それこそ息をすることさえも億劫だから、
 すまない、なんて自分でも意味が分からない謝罪とともに、

 まるで夢のような鮮やかさで、


 宝具『エミヤシロウ』は生まれる前の悪、世界の破滅を願う呪いを一刀の下、断罪
した。





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容量の問題で分割投稿。
連続更新できればいいなぁ、と思いつつ。


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