◇―月下錬金―◇episode02(前編)


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1: キクロウ (2003/11/22 22:39:00)[sadaharu at enjoy.ne.jp]

◇―月下錬金―◇
episode02 /分岐の夜


夜の学校裏
平穏な日常を突如、襲ってきた化け物
その化け物を倒した目の前の謎の少女
肩より少し上で切りそろえられている黒髪に鼻に一文字の傷痕、セーラーの見慣れない制服を着た女の子
そして、俺の新しい命と力


近くの木の下に気を失ってる弓塚を寝かし、近くに落とした七ッ夜を拾い
俺は謎の少女に問い掛ける

「――――――で、一つ聞いていい?」

「なんだ?」

「"錬金術"ってナニ?」

「・・・・辞書にだって載っているぞ、知らないのか?」

「さっぱり!」

「いいか、錬金術というのはな・・・・・・いや、その前に場所を移動しよう」

「え?どうして?」

「君は友達に風邪をひかせるつもりか?」

そう指を木の下で寝ている弓塚に向かって差しながら言った
確かに、何時までも夜空の下に寝かせるのも気が引けるな
とりあえず、校内に運ぶか

「なら、保健室に運ぶから中に入ろう」

「ああ。」

俺は弓塚をオンブして運良く開いていた玄関から中に入る
もう先生達も帰って誰も居ない校舎に二つの足音だけが廊下に響く
よく考えれば夜の校舎っていうのは、結構不気味なものだ
ガラガラ
保健室のドアを器用に足で開けて、適当なベットに弓塚を寝かす

「ふぅー、これで風邪をひく心配はないな。――――それで、さっきの続きだけど」

「わかっている、この部屋に辞書はあるか?」

「え、辞書?」

キョロキョロと一応捜してみるが保健室に辞書なんて・・・・・・あ、あった
保健室の先生の机に国語辞典を始め色々な辞書が陳列されている
ドイツ語辞典まである、なにをしているのだろうか保健の先生は?
まぁそれは置いといて

「あったけど・・・・」

「その辞書で「錬金術」を調べてみなさい、あるはずよ」

「うん」

言われて辞書を開いて『錬金術』を探す
え〜っと、ラ行の・・・・・

「れ・・・・・・・・れん『錬金術』あった!本当に辞書に載ってる」

「だから言っただろ、読むぞ」

女の子は僕の隣に来て机の上に広げている辞書を指でなぞりながら読み始めた

「【錬金術】近代より前、全ヨーロッパを風靡した原始的な総合科学技術」

女の子の肩が俺の腕に当たる
ちょっと・・・・・・・・・・・・・・照れるというか恥ずい

「鉛などから金への変換や不老不死の薬の製出などを試みた。
これらは成功はしなかったが種々の技術の発達を促し近代から現代科学の基礎となった」

「?あれ?ちょっと待った。今確か『成功しなかった』って」

「この辞書に載っているの『常識』のことまで、錬金術は二つだけ常識では測れない超常の成功を収めた。それが――――」

『人造生物―――フムンクルス と 武装錬金』


俺と弓塚を襲った化け物と、その化け物を倒した力のコトか
あれらはつまり、錬金術の業
常識を逸脱した力、ってことか

「ホムンクルスは人造生命の研究の産物、武装錬金は戦術兵器の開発の成果。しかし、共にあまりに危険だった」

先の出来事を思い出すと
あと少しで殺されそうになった。本当に死ぬかと思った
そんな化け物をあっさりと殺した兵器

「うん、確かに危険だ」

「・・・結局、この二つは徹底的に隠匿され、錬金術を識る者達の手によって管理される運びとなった。――――だが」

女の子は話をしながら窓へ近付きカーテンをバンッと開ける

「その手を逃れたモノは今日、世界中に散らばり闇に紛れて人間を喰らい続けている」

すると、窓の向こうに見えるのは、学校の裏にある・・・・・・・・・・・・
俺が昨日、殺された場所

「オバケ工場?」

「ホムンクルスのアジトだ。これから残党を斃しに行く―――――――武装錬金 バルキリースカート!!」

女の子は武装錬金を発動させ、さっき蛇の化け物を殺した四つの直刀の鎌を装備した
太ももに装備されたロボットアームに処刑鎌の兵器
これが錬金術の力の一つ

「・・・・俺も行くよ。なにか手伝えるコトがあったら・・・・・・」

「君は来るな!!」

「な、何で・・・・」

「キミに核鉄を与えたのは戦わせるためでなく、助けるに値する命だと感じたから、武装錬金やホムンンクルスについて教えたのは、
 ちゃんと事態を把握して冷静に対処して欲しいから、先刻は緊急避難として致し方なかったが、“戦闘”は本来、私の任務だ!」

女の子の説得はどこか、殺気を帯びていてゾクリと寒気を覚えた
でも、そんなコトを言われても

「アジトは大体4〜5体の単位、一晩もあればカタがつく」

「でも、やっぱり・・・」

「だから来るな!!・・・・・よく考えてみろ!友達はどうする?」

「え?・・・・・あ」

友達と言われ俺はベットでぐっすりと寝てる弓塚の顔を見る
確かに弓塚を置いていくの酷
ましてや、恐い思いをして、目を覚ましたら誰も居ない夜の保健室に独りおいてけぼり
そんな酷いコトは確かにできない

「自覚が無い様だから言っておくが、キミは今、将来を決めようとしている」

『帰れば元通りの世界』 『来れば戦いの世界』

「自分が住む世界がどちらか言わずともわかるだろう?」

「・・・・・・・・・・・・」

「これ以上、キミを巻き込む気は無い」

ガララ・・・・女の子は保健室の窓を開けると外から冷たい風と共に桜の花びらが中に入ってくる
頬を夜風が撫でる

「キミは来るな、来てはいけない。――――――――――友達と一緒に帰りなさい」

やさしく、最後に笑顔で言い、女の子は窓から外に出て夜闇に消えていった
『帰れば元通りの世界。来れば戦いの世界』女の子の言葉が頭で繰り返し再生される
俺はここまま、元の世界に帰っていいのか?女の子がもし・・・・・・
そうなったら俺はきっとまた、後悔する
『特別な力は特別な力を呼ぶのもなの』昔、先生が俺に言った言葉を思い出す
ホムンクルスと戦う、そんな非日常な世界に巻き込まれるコトは、先生からこの眼鏡を貰った時に覚悟してた
『君は君が正しいと思う大人になればいい』
僕は正しいと思ったことをする。だから・・・・・・・・・・


「ん・・・・・・・あれ?ここどこ?」

「あ!?・・・・・・・目が覚めた?」


考え事をしているとベットで寝ていた弓塚が起きた
やっぱり、少し混乱してる様に見れる

「あれ七夜くん・・・・?私どうして・・・・・?」

「え〜っと・・・!。弓塚さんが急に貧血で倒れたから、風邪を引かないように保健室に運んだんだよ」

とりあえず、本当のコトを言うわけにもいかず
貧血という、いつも僕が倒れている理由を使うコトにした
まぁ、多少強引ではあるけど、本当のことをいうよりかはマシだろ

「え?そうだったの?ありがとう七夜くん」

「どういたしまして」

「ねぇ、なんか寒くない?」

「え?ああ、上着をきてないからだろ?」

俺は弓塚が着てきた上着を取りソレを後ろからかけてあげる
その時、弓塚の肩って小さいんだな、と感じた・・・・・

「ありがとう――――」

「・・・・弓塚さんって今、身長いくつ?」

「何いきなり?159だけど」

「そうか・・・・・・・」

辞書を読んで説明してくれた女の子
その時、腕に当たった少女の肩は・・・・・・小さかった
やっぱり俺は後悔したくない

「あ!窓開けっ放し、道理で寒いワケだね」

弓塚が窓を閉めると冷たい風は止んだ
女の子がこの窓から出て5分も経っていない、今からなら間に合うかも知れない

「これでよし。さ、早く帰ろう七夜くん」

「わかった早く帰ろう!!弓塚さん走れる?」

「え、う、うん」

「良し、なら急いで帰ろう」

「え、えええ」

弓塚の手を取り急いで寄宿舎に帰る
急いで帰れば10分も掛からないはず
それからオバケ工場に向かえば間に合うはず、いや間に合わせてみせる

タッ タッ タッ タッ
静寂が包んだ廊下を走り玄関を向け外にでる

「ちょ、ちょっと七夜くん、もう少しゆっくり・・・・」

「ごめん弓塚さん、どうして急いでるから」

タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ
誰も居ない、街灯が少なく暗闇が侵食してる道を走る
よく考えれば、今日は何かと走ってばっかりだな。
来る時も全速力で走ってたっけ、その時は今みたいに弓塚と一緒に

ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
息が上がる、胸が苦しい、でも、前ならもう貧血で倒れていた運動量だけど
今は眩暈もしない、たぶん胸にある核鉄ってヤツのお陰だろう
だって、死にかけていた俺の体に核鉄を心臓代わりに与えたって女の子が言っていた
けど、俺は死んだ訳でも心臓をなくした訳でもない。
あの時、俺は自分の死を―――――――――――――――だから核鉄が体を強化してくれてる筈
そうじゃないと、俺は全力疾走なんかしたら1秒で倒れてるはずだから

ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
やっと寄宿舎の門が見えてきた。ここまで来ればもういいだろう

「弓塚さん!」

「え、ハァハァハァ・・・・・なに?」

「俺、ちょっと用事があるから、ごめんけど一人で帰ってくれる?もう門が見えるところだから」

「う、うん、いいけど何処に行くの七夜くん」

「学校に忘れ物したから、取りに行くだけだから、じゃあ」

俺は門まで弓塚を送り向きを変え、また全力疾走でオバケ工場に向かう
走りながらポケットに手を入れて冷たい感触を確かめる
ナイフはある、武装錬金という力もある、そして何よりこの眼がある
少し震える手を打ち覚悟を決める・・・・・いや、覚悟を確かめる
もう痛い思いをするのは嫌だ!!
















ウォォォォオオオオオオ!!!!!!!!
夜の廃工場から大きな雄叫びが聞こえる
数多の機械の猿が一人の少女を囲む、機械の猿の胴には人の顔が埋まっている
そして、咆哮をあげ一人の少女に襲い掛かる
“女だ!!!”“獲物だァァァァァ!!!!!”“食わせろォォォォ!!!!!”
ソレらを少女も咆哮をあげ殺していく

「ハラワタをブチ撒けろ!!!」

4本の鋼の処刑鎌で鋼鉄の猿を刺し切り裂く、鋼鉄の猿は体をバラバラにされ破壊される
しかし、鋼鉄の猿達はそれでも怯むことなく少女に襲い掛かる

数が多すぎる、これはアジトなんてレベルじゃない!!
少女は内心、自分の読みの甘さに苛立つ。女の子を取り囲む機械の猿の数は裕に20はいる
彼女は精々、4〜7体くたいと読んでいたが、大誤算だった
しかし、引き下がる訳にもいかず全力を持ってホムンクルスを排除する気だ

“女だ!!!”“獲物だァァァァァ!!!!!”“食わせろォォォォ!!!!!”
変わらず咆哮をあげ群れ襲い掛かる猿のホムンクルス

「獲物は貴様等の方だ!!!」

少女も咆哮をあげ四つの鎌で鋼鉄の猿を破壊し処理していく
それを冷やかな目でみる男が居る
筋肉質のがたいのいい角刈りの男、いや男の姿をしたホムンクルス
それが少し離れたところで少女と手下の猿との殺し合いを眺めている

「昨夜、巳田が話していた女・・・・・そうかオマエが『錬金の戦士』だな」

男はゆっくりと少女に近付き問い掛ける、男が手を上げると手下の猿は攻撃を一時止める

「錬金術を識る者の中から選り抜かれた、武装錬金の熟練者!だが、たった一人で乗り込んで来て勝てると思うな!!」

「私は常に一人だ」

男は挙げていた手を下ろすと同時に手下の鋼の猿達は再び一人の少女に襲い掛かる

「一人は辛いね!錬金の戦士!!!」

「ッち」

多方向からの同時襲撃に少女はどう対処するか一瞬なやむ
それが致命的な時間となる
跳び出そうとした少女の足をガシィッと死骸の中から一体の猿が掴む

「死骸に隠れて!(マズイ間に合わない)」

周りから襲い掛かる群から逃れず迎撃も満足に出来ない状況に少女は危機感と死を覚える
その刹那



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