――――――――――――ここは・・・・どこだ
気がつくと俺は、遠野志貴は草原の中にいた。けどあの草原とは、先生と会うことのできる唯一の場所とは違った。だからここは・・・
(夢の中か?)
いや違う。夢の中だというのに、このぽっかりと胸に穴のあいた感覚は―――――――
「レン?どこなんだレン!?」
夢魔であり、俺の使い魔であり、その前に家族でもある彼女の名を呼ぶ。だが返事が返ってこない。レンと契約してから、俺は夢の中にいるということがわかっているならレンの気配がわかるようになった。しかし、それがわからないということは・・・・
「やあ、はじめまして、かな?」
何の気配も感じなかったのにすぐ後ろで呼びかけられた。
――――――――――――!!?
体を捻って身構える。
そこには少年の姿があった。
何者?いや、微妙に雰囲気は違うがこいつは・・・・
「俺、か?」
『ソレ』はかつての、幼き日の俺そのものの姿をしていた。
しかし――――――――――
「う〜ん、ちょっと違うかな?
僕は遠野志貴ではあるけど、それ以前に―――――なんだけどな」
何だ?こいつ今何て言ったんだ?
「あ、やっぱりそこだけ聞きとれないということは、まだ『僕』を完全に認識できる領域に達してないんだね?
まあ無理もないか。
――――の『資格』を有していながら――――としての『私』を『君である僕』として認識したのは多分君が初めてだろうからね」
「お前、誰だ」
そう言って、俺は眼鏡を外そうとして――――――――――――――
――――――――――――――眼鏡をかけていないことに気がついた。
「!!!?」
途端にはっきりとこの世界の『線』、さらに『点』まで見えてきた。途端に頭に激痛が走る。
「あ―――無茶しちゃ駄目だよ。
ただでさえその『眼』は君の肉体にも魂にも、そして存在にも負担をかけるから」
そして、この幼い俺の姿をした『何か』が視界に入った瞬間、俺は驚愕した。
(―――――――奴の死が見えない!?)
同時に体から力が抜ける。
足に力が入らない。
徐々に視界がぼやけてきた。
「なん・・・で?」
「ここではその『眼』は使わないほうがいいよ。
・・・ふむ、精神の自己防衛機能が働きだしたな?
まあ単に現実世界で目が覚めようとしているだけだから大丈夫だろう。
『私』とゆっくり話せるのはまた今度だな」
いつのまにか俺の目の前の『それ』はかつての俺の姿ではなく、
黒い甲冑を纏った黒髪の男に変化していた。
「まて・・・おまえは・・・・」
「最後に。・・・・志貴、君はその『眼』に関係なく、
いやだからこそ幸せになるべきだ。
君が大事に想う人たちと。
そして心の底から愛する彼女と共に。
・・・・君は私が犯した『罪』を繰り返してはならないのだよ」
―――――――それから俺の視界が一瞬だけはっきりして、
その男の『隻眼』が優しく俺を見つめている気がした。
――――――それを最後に俺の意識は『そこ』から離れていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(あとがき)
はじめまして。牙鉄と申します。
はじめてのSSでなおかつ続き物という、
無謀で駄文ちっくな代物ですが、
どうぞよろしくお願い致します。